狐仮面
「やぁ!先に言っておくけど手違いで死んだわけじゃないよ」
なんだコイツは、急に俺の部屋に入ってきたぞ
「いやーとあるアプリでイラスト見てたら急に作ってみたくなっちゃってさ。そこで、生産性のない奴なら問題ないって思って…って言い訳みたいだなー。会話出来るわけないのに何やってんだろ、俺」
ん?、会話出来ないってどういう…うおっ
俺の足が蛇みたいになってる!
「さてさて、器はだいたい固まってるから後はどんな技術を埋め込むかだよね〜。狐のお面でシュッとした佇まいに袴の似合う感じだからなー」
おいおいおい!なんなんだ一体!
若干透けた体からポンポンと何かが抜け出して正体不明の人物の言った仮面や服となり、最後には不摂生からぶくぶくと太った体が伸ばされていく
「陰妖術なんて無いしなー。魔法で代用するか…あ、剣を作り忘れてた。まあいっか!これも魔法でやってね〜」
ちょっおいクソ野郎!!
「いってらっしゃーい」
うわあああぁぁぁぁぁ!!!!!
ヒラヒラと手を振る不審者に見送られながら空の彼方へ吹き飛んでいった
実体の体を残して
「っつう」
地面にめり込んだ体に同様しつつ起き上がる
「なんだこれ…」
顔の形に凹んだ地面を見ると若干狐のようだと思ったのはあの不審者が言っていたからだろうか
それに、これほどの衝撃を受けても痛み1つないこの体にも驚いた
「はぁ…」
なんにも持たされずにこんなとこに放り出されてどうしろってんだ
落下により発生した段差に腰を掛け、最悪なこの状況に肩を落とす
食料もない、水は…川が向こうに流れているのが見えるな
でもなー川の水って飲むのは慣れてない人間は腹下すってネットに書いてあったし
人間とはなぜこのように脆弱なのだ
せめてあの金があれば…
「はぁ、諦めるか」
人生を。では無い
ここで怠惰的にいることを、だ
よし、諦めた。とりあえず川にそって歩けば村でも見つかるだろうと独りごちて気合いを入れた
穴から足を完全に抜く
ああ、めんどくさい
あの怠惰な生活に戻りたい
でももう無理だろうなー
ムスッと顔を歪ませながら川沿いを散歩するように歩いていくと、ふと周りの景色を楽しむという言葉が浮かんできた
そういえばここ数年、景色なんて言葉すら出なかった
ゲームの中ですら経験値だのスキル効率だので頭がいっぱいだったからだらう
「…魚、綺麗だな」
チラリと川を見ると3匹の小魚がすい〜っと川の流れに逆らって泳いで行ったのが見えた
澄んだ川に澄んだ空気
ここまで排ガスの気配がないのは逆に違和感が出てくるが
「うん、綺麗だ」
気がつくとてっぺんにあったはずの日が沈む頃まで歩き続けていた
たまに風景を楽しもうと思うと、その時その時で若干違うだけの時もあれば、全く違う時もあった
そんなの楽しいかって?
まあ、何もないよりは楽しめた
それに
「ラッキー。街があった」
村があれば上々と思ってはいたが、小さな森をぬけた先に街が隠れているとは思わなかった
急いで街へ向けて走ると、入口に着く頃にはあたりは暗くなっており門は完全に閉じられていた
「ちっ、遅かったか…」
辺りには誰もおらず、明かりも点っていない
「──腹、減ったなぁ」
壁によりかかり、ズルズルと崩れ落ちるように座り込む
歩き通しで疲れたし、喉もかわいた
もうこれは三重苦だな
こんな言葉が似合う状況なんてほとんどないんじゃないか?
「はぁ…寝るか」
無いと分かれば少しは我慢出来る、1日食わないくらいで死にはしないだろう
狐仮面となった男が諦めて数時間後、この街の兵士見習いが巡回し始めると、どこからかお化けの声が聞こえると言われ連れ回される
声が1番大きな場所に来たが、机の下や本棚の裏を見てもお化けの気配はない
そこで怖がる少女に無理を言って耳を澄まして聞いてもらうとどうやら外から聞こえるようだった
道理で見つからないはずだ
2人の少女が外を覗き込むと
スー、スーと綺麗な寝息を立てて眠り込んでいた
「お、良かったぁ、お化けじゃなかった!」
「シズリン な、なんかいた?」
「スラッとした変な服きた人が仮面男が寝てたよ!モエピーの耳良すぎじゃない?」
「そうかな?えへへ…それにしても随分属性過多な人だね」
私たちの声に意識が覚醒したのか仮面男が呻き声を上げた
「ん"ぅ」
「あらやだイケメンボイス」
「イケメンボイス?なにそれ」
「誰か…いるのか?」
「見回りでーす。あなたは不審者ですか?」
「し、シズリン!何言ってんの!」
モエピーがシズリンの肩を叩き咎める
「──まぁ、どこから見ても不審者だな」
「入ってよし」
「シズリン!?」
「何言ってんだお前」
仮面男が立ち上がり覗き窓に近づくとどんな仮面なのがよく見えた。フォックス系の魔物の仮面だ
ていうかでかっ
「そんな不用心でいいのか?」
「不審者が不審者って言う?」
「聞いたことないけど」
「でしょ!それに私は昨日、見回りに関する全権を任されたわ!入りそびれた人をどうこうするのは私の権利よ!」
どうやらこの少女はとてつもなくやり手らしい
見回りって街の治安に1番重要な役職じゃないのかな
「それはありがたい…」(ぐ〜)
「ん?」
「お腹すいたんですか」
「あー…昨日から何も食べてなくてね」
お腹を擦りながら言い訳を考えるが、無くしたとしか出てこなかった。とんだドジ野郎にしかならないが仕方なくそれで済ませることにした
「道中、カバンを動物に取られてしまったんだ」
「そんなことある?」
「とんでもない不運ならあるかもしれませんね」
訝しげに目を覗き込んでくるがモエピーという人の鶴の一声で何とかなったか
「それにしてもご飯か…お金もないとなると廃棄するパンの耳でも貰いに行くとか?」
「夜食の時に余ったご飯ならいいんじゃないですか?」
「あーそれも廃棄になるからちょうどいいか」
ほら入りなと言ってガチャりと音が鳴ると、門の近くにどこからともなく扉が現れガチャりと開かれた
「ほう、凄いな。でもこっちの扉は飾りなのか?」
「そんなわけないでしょ、これは内側からしか開けられない緊急時用の非常扉を壁に作る鍵なんだよ」
「なるほど?」
その割には小さい扉だな。屈まないと入れないぐらいだ
「ようこそ、マルノ街へ」
ストーリー全くの未定