冒険者になります!!
「うわー、街だ~。ナギ先生見てください! 街に辿り着きましたよ。なんていう街なんでしたっけ?」
「この街の名前はね~、アバンって言うんだよ~。まぁ何十年も来てなかったから街の名前も変わってるかもしれないけどね~」
僕と先生は森を出て、アバンの街へとやってきました。
僕の修行の為にも世界を見て回ったほうが良い。だから旅に出ようとナギ先生に提案されたのです。まさかナギ先生が僕の事をそこまで考えていてくれたなんて……もちろん僕に異論はありませんでした。
そうそう、それとやっぱりナギ先生は凄いんです!! 森からアバンに来るまで一週間ほどかかったんだけど、その間に僕は身体強化魔法と探知魔法を習得することができました! こんなに早く上達するなんて……やっぱりナギ先生は偉大です。
まぁ、ナギ先生はなぜか僕が魔法を成功させるたびに頭を抱えているんだけど……威力が低かったりで幻滅されているのかなぁ。もっと頑張らなくちゃ!!
「それじゃあシロ君。疲れたでしょうし今日は――」
「冒険者登録ですね!!」
街に辿り着いたのならやることは一つ。冒険者登録だろう。実は密かに憧れてたんだよね~。昔の僕では実力不足だっただろうけど今の僕なら……ナギ先生の教えを受けていくつか魔法を習得した僕なら簡単な仕事くらいは出来るだろう。まぁ僕が失敗してもナギ先生が居てくれるし何の問題もないよね!!
「え!? 今から!? もう日も暮れてるし明日でいいんじゃないかなぁ~?」
確かにもう辺りは暗い。今から冒険者登録をしたとしても、後は宿屋に行って寝るだけだろう。
それにナギ先生が言う事には従うべきだ。本当は今すぐ行きたいけどっ!! 一刻も早く冒険者登録をしたいし冒険者ギルドを見てみたいけど!! 他の冒険者のみんなを一目見てみたいけど!! ナギ先生には従うべきだ。諦めよう。
「そう……………………ですよね………………。分かり…………ました。明日……ですよね。うぅ、明日、明日かぁ」
「うっ!?」
はぁ、今日は眠れるかなぁ。はぁ、早く明日にならないかなぁ。はぁ~。
「そ、そんなに残念そうな顔しないでよシロ君~。しょうがないな~。今から冒険者ギルドへ行こっか~」
「!? いいんですか!?」
「登録だけならそんなに手間はかからないだろうしね~。まぁ六十年くらい前と同じならだけどね~。でも、お仕事を受けるのは早くても明日からだよ? 今日はしっかり体を休める事。休むのも修行のうちだよ~」
「もちろんです!!」
「ふぅ。あんな顔されたら折れるしかないじゃない……。はぁ~。早く休みたいよ~。ふかふかのベッドに倒れこみたいのに~~」
なんだかまたナギ先生がぶつぶつと言っているがよく聞き取れない。きっと僕の為にスケジュールを変更したから予定を組みなおしているんだろう。すぐにそういう事が出来るなんて……やっぱりナギ先生は凄いなぁ。出来る女っていうやつだね。
ナギ先生には無理させて申し訳ないけど……やった~~~! 僕も今日から冒険者になれるんだ! 楽しみだな~。冒険者の人たちって一体どんな人たちが居るんだろう? ナギ先生みたいに優しい冒険者と知り合えたらいいな~。怖い冒険者の人もいるのかな? 新人は舐められるってどこかで聞いたこともあるし舐められないようにしなくちゃ!!
「それじゃあ行こっか~」
「はい!」
そうして僕とナギ先生は冒険者ギルドへと向かった。
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「ここが……冒険者ギルド」
僕はナギ先生と冒険者ギルドにやってきました。
冒険者ギルドってすごいんですね! おっきな建物だと話には聞いていましたが僕の予想よりも大きかったです。
それにただ仕事の受付や魔物の素材の買い取りが出来るところっていう認識しかなかったんだけど、それだけじゃありませんでした。
なんと、食堂まで冒険者ギルドの中にはあったのです!!
筋肉質な男の人から華奢な女の人までいろんな人が居ます。中には僕とあんまり年齢が離れていなさそうな人たちも居ます。まぁ、外見こそ僕の年齢は十五歳前後だけど、実際は六十歳なんだよね……。ちなみにこのことはみんなに秘密です。なぜなら、ナギ先生に秘密にしたほうが良いと言われたからです。
ナギ先生が言うには「若返っただなんて世間にばれたら面倒ごとに巻き込まれるでしょ~? シロ君の修行の時間も減っちゃうし若返った事とか自分の本当の年齢は秘密にすること! いいかな~?」という事だった。修行の時間が減るのは嫌だし、ナギ先生のいう事だ。従わない理由はない。
「それじゃあちゃっちゃと受付に行こっか~」
「はい!」
まだ色々とみていたかったけど、冒険者登録も大切だ。どうやって登録するんだろう?
受付に行くと赤い髪のお姉さんが居た。お姉さんと言っても二十歳くらいだから僕より年下なんだけどね。
「へいらっしゃい。おやぁ? 見ない顔だねぇ? 一体何の用だい?」
……ここは八百屋さんか何かかな? まぁ元気なのは良い事だと思うけど。冒険者ギルドっぽさが一気に抜け落ちちゃったよ。
「あは~。今日この街に着いたばっかりなんですよ~。ここには冒険者登録をしに来たんです~」
ナギ先生は全く動じずに話を進めている。やっぱりこういうの慣れてるんだなぁ。凄いや。
「あぁん? 冒険者登録? 他に連れは?」
「? 居ませんよ~? 私とこの子の二人です~」
あれ? ナギ先生はもう冒険者だよね? わざわざもう一回登録する意味あるのかな?
などと考えていたら受付の女の人はため息は吐き、
「あんたらどんだけ常識知らずなんだい?」
失礼な!! 僕はともかくナギ先生になんて事を言ってるんだこの人は!?
「というと?」
さすがナギ先生。なんて心が広いんだ。あんな暴言を吐かれたのに涼しい顔で話を進めている。
「冒険者登録するなら五人以上必要でしょうが。どんな依頼を受けるにしても五人以上は必要なんだからね」
「え? 何ですかそのルール?」
ナギ先生が目をぱちくりさせている。冒険者だったナギ先生もそんなルールは知らないみたいだ。
「そんなルールありましたっけ~? 昔はそんなルールなかった気がするんですけど~?」
「姉さん年いくつだよ!? この規約が出来たのは五十年前って話だよ!?」
ナギ先生が冒険者をやっていたのは六十年以上前だから……ああ、そりゃ知らないわけだね。
それにしても受付の人、なかなかノリのいい人だなぁ。言葉遣いは少し荒っぽいけど多分いい人だ。
「なにぶん田舎から来たものでして~。右も左も分からないんです~」
まぁ誰も来ない秘境の森に六十年近く暮らしていたんだから田舎なのは間違いないよね。
受付の人は自分の頭を片手でガシガシかいていた。かと思ったら突然立ち上がって受付のテーブルに自分の手を叩きつけ、
「仕方ないねえ!! このあたし――おせっかい焼きのリンさんが一肌脱ごうじゃないかい!!」
すごいやこの人!? 自分で自分の事をおせっかい焼きって言っちゃってるよ!?
「あ、そういうのいいです~」
まったく動じない先生も凄い!! こういうのにも慣れてるんだろうか? 僕もまだまだだなぁ。
「いいからいいから。遠慮すんない! ってわけでほら、さっさと行くよ!」
そう言ってリンさんは僕とナギ先生の腕を掴んで引きずっていく。なんてアグレッシブな人なんだろう。でも、これくらいの人でないと冒険者ギルドの受付は勤まらないのかもしれない。
「ちょっとぉ!? リンさんまたですかぁ!? あーーーー、また仕事が増えるーーーーー!!」
受付の後ろから男の人の叫びが聞こえてきた――うん。このリンさんが特別なだけっぽいね。少しだけ安心したよ。




