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魔力適正0の僕でも四十年修行した結果、魔法が使えるようになりました!!(魔法じゃないよ? 物理だよ?)  作者: small wolf


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仲間は大事です!!



「なんだこれ?」


 それは自分の口から出たとは思えないくらい低い声だった。書いてある文字を何度も読む。二人を預かった? イリちゃんを殺す? はは、冗談にしてもタチが悪い。






「………………ふざけるなぁっ!!」





 僕は机に向かって蹴りを放つ。無意識に魔力を使用していたのか、破壊される机。その音を聞きつけたのか、宿屋の店主とスノーちゃん、ミコトが部屋へと乗り込んできた。


「おいおい兄ちゃん。いくら客っつってもこりゃねぇだろう? 追加料金払う気はあるんだろうなぁ?」


「うるさいっ! お金ならいくらだってあるんだから今は消えてろ!!」

「言ったな? まぁ金を払うならお客様だ。丁重にもてなしてやるよ」


 そう言って宿屋の店主は部屋を後にした。こんな時だっていうのにお金の事しか頭にない店主に腹がたった。





「これは――」

「……脅迫状?……」




 その間、スノーちゃんとイリちゃんは部屋の中へと入って部屋に置いてあった脅迫状を読んでいた。二人は口を手で覆い、ショックを受けているみたいだ。


 僕はそんな二人を部屋に残し、外へと向かう――



「どこに行くつもりなの!? シロ!?」



 ――つもりだったのだけど、スノーちゃんに腕を掴まれて止められてしまう。



「決まってるじゃないか。ナギ先生とイリちゃんを助けに行く。そしてこんな事をした奴をぶっ飛ばす!!」


 まったく……なんで僕を呼び出す為だけに関係のない二人を巻き込むんだ!? 僕を呼び出すんなら最初っから直接言えばいいじゃないか! それなのにわざわざ二人を利用するなんて……許せない!!


 それに来なければ殺すだって!? グリルの時にも思ったけど、どうしてそんな簡単に人を殺すなんて出来るんだ? 少なくとも僕の村にはそんな人間は居なかったぞ!! 外に出てから魔物なんかより人間の方が醜いんじゃないかって思えてしまうじゃないか。



「そんな疲労した状態で行っても返り討ちにあうかもしれないじゃない! 相手が誰なのかもわかってないんだよ! ここはナギ先生がいつも言ってたように冷静になるの!! 幸い明日の夕刻までは時間がある。今日は情報を集めて休んでから明日向かえば――」



「そんな悠長な事言ってる場合じゃないよ!! 一刻も早く二人を助けてこんな事をした奴をぶっ倒してやるんだ! 邪魔だからどいて!!」



「きゃっ」

「!? スノーちゃん!?」



 僕はスノーちゃんの手を振り払う。その際にスノーちゃんを突き飛ばしてしまう形となってしまって、『しまった』と思った。しかし、


「こうしている間にも二人はひどい目にあってるかもしれない。時間が経てば経つほどその危険性が増しているんだよ!! スノーちゃんは二人の事が心配じゃないの!?」


 口から出た言葉は謝罪なんかじゃなく、罵倒に近いものだった。スノーちゃんが二人の事を……特にイリちゃんの事を心配していないわけがない。付き合いは僕よりも長いんだから。それが分かっているはずなのに……なんで僕は――


「私は――」


「……シロ君! ……歯を食いしばるっ!!」


「ぐへっ」



 ミコトが拳を握りしめ、僕の頭を殴る。

 避けようと思えば避けれたかもしれない。だけど、何故か体が動かなかった。



 いや、違う。動いちゃいけないと思ったんだ。



「いっつつ」


 殴られた頭をさする。痛い。


 だけど、それだけで終わらなかった。



「……はぁっ!!」 


「づぅっ!!」


 今度はお腹に鋭い衝撃が走る。

 見ればミコトが両手を僕の腹部へと押し込んでいた。何かの技だろうか? さっきの殴られた頭よりもかなり痛い。


「ぐっつぅ」



 さすがの僕もその場にうずくまる。

 その僕の前で仁王立ちするミコト。完全に怒ってる。



「……シロ君、焦っちゃメッ……私もスノーちゃんも……シロ君と気持ちは一緒……焦ってもいいことない……違う?」


「……ごめん。さっきは言いすぎた。でも、早く行かなきゃ二人がどうなるか――」


「……焦っちゃダメ……私たちはその事を……ナギ先生から教わったはず……ナギ先生がここに居たら……今のシロ君をどう思う?」


 ここにナギ先生が居たら……。

 きっと落ち着いて対処してくれただろう。そして、ナギ先生がならきっと最後にはみんなが笑顔で終われる結末にしてくれるだろう。



 ――昔、そうしてくれたように――



「そっか……そうだね。僕はそんなナギ先生の弟子なんだ」



 弟子は師匠の背中を見て育つ。

 教えてもらう事だけを学ぶんじゃない。師匠の生きざまを見て、弟子は師匠からいろんなものを引き継いでいくんだ。

 みっともなくうろうろした所で事態は悪化するだけだ。スノーちゃんの言う通り、まだ指定された時間まで余裕はある。もっと落ち着いて行動するべきだろう――ナギ先生みたいに。



「ごめんね。スノーちゃん。そしてミコト。ありがとう」



「ううん。シロの気持ちは分かるから。だから、私は許すよ。イリちゃんをそんなに心配してくれてるっていうのは少し嬉しかったし」


「……お姉ちゃんとして……当然……ぶい……」



 二人が居てくれて良かったと心の底から思う。僕一人だったら何も考えず特攻していただろう。その結果、どうなるのかは分からないけれど、ナギ先生の弟子としては完全にアウトだ。それでうまくいかなかったりしたら、僕は自分の事を生涯許せずにいただろう。



「僕もまだまだだなぁ」



 魔法に関してはナギ先生の下で修行してそこそこの力を手に入れたけど、精神面では自分がまだまだ子供だったんだという事を今更ながら自覚する。そういえば人と接触した時間なんてあまりないからね。親しく話す相手なんて、覚えてる限りじゃスノーちゃん達が初めてだ。



「二人は……居なくならないでね。ずっとそばに居て欲しい」



 ぼそっと口から洩れる本音の言葉。心の底からの僕の願いだ。ここまで僕が心を動かされる相手はスノーちゃん達、そしてナギ先生だけだ。ずっとそばにいて欲しい。それだけを望む。それさえ叶うのならば命を賭けてもいいと思える。



「へっ!? う、うん。わかった……」


 スノーちゃんが顔を真っ赤にして後ずさりながら答える。どうしたんだろう? 顔が真っ赤だけど体調でも悪いんだろうか?


「スノーちゃん? 大丈夫? なんだか顔が赤いけど……」


 さっき乱暴にしてしまったという負い目もあって気になってしまう。そのおでこへと触れて体温を測ろうとするが……なぜか近づこうとするとスノーちゃんは僕から離れて一定の距離を保とうとする。


「スノーちゃん?」

「だ、大丈夫! 大丈夫だからシロはそれ以上近づかないで!! なんだか私、おかしいから!!」


 おかしいなら大丈夫じゃないのでは?


 余計に心配になってスノーちゃんの事が余計に気になる。


「本当に大丈夫? スノーちゃんが大切なんだ。僕にも心配させてほしい」


 僕が大切だと思える相手はナギ先生とスノーちゃん、ミコト、イリちゃんだけだ。ナギ先生は尊敬する先生で、スノーちゃん達は僕に初めてできた仲間。僕が道を誤ったら正してくれる大切な仲間だ。みんなの力になりたい。みんなの事が大切だ。これだけは断言できる。

 

「あ、う、あ、う」


 スノーちゃんは顔をさらに真っ赤にさせて口をぱくぱくさせている。

 

 もしかして……息ができていないのか!? だからあんな陸にあげられた魚みたいに口をパクパクしているのか!?


「スノーちゃん!? やっぱりどこか悪いんじゃ――」


「ぴゃあああああああああああああああ」



 一体どうしたというのか。スノーちゃんは変な悲鳴を上げながら部屋の外へと走り去ってしまった。



「スノーちゃん!?」


 慌てて、スノーちゃんを追おうとするが、


「……シロ君……待つ……」

「ぐえっ」



 ミコトに首根っこを掴まれて、追うのを止められる。

 何をするんだとミコトに怒鳴ってやろうと僕は振り向いて――



「……ふふ……シロ君……本当に……ふふ……」

「ひっ」



 ミコトは笑っていた。今まで見た事ないくらいのいい笑顔だ。とってもニコニコしている。とてもかわいいと思えるだろう。

 目がまったく笑っていなくて、こめかみに血管が浮き出ている点を除けばだけど。



「……シロ君……そこに座る……」

「……はい」


 ミコトが部屋の床を指さして告げる。

 僕はなんだか逆らっちゃいけない気がしたので言う通りにする。

 床にあぐらをかいて座る。



「……シロ君……座り方違う……正座……」

「……はい」


 座りなおして、僕は正座で部屋の床に座る。


「……よし……」



 そう言ってミコトも腰を下ろす――――――僕の膝の上へと。



「へ? ミコト? 一体どういう」

「……シロ君……黙る……黙って私を抱きしめる……一時間……それで……許す……」

「この状態で一時間!?」


 正座している膝の上に人一人分の体重を乗せて一時間って結構きつくない!?


「そもそも許すって僕が何をしたっていうのさ!?」

「……はぁ……言っても分からない……とりあえず反省して……」

「そんな無茶苦茶な!?」

「……くぅ……」

「しかも寝た!?」



 心地よさそうな寝息を響かせるミコト。このままそっと膝から降ろすことも出来るけど……。


「はぁ」



 僕はミコトの言う通り、彼女を後ろから抱きしめた。落ちないように。だけど優しく抱きしめた。


「うわ、柔らかっ」


 ふにゅっとした感覚につい声を上げてしまう。男と女ってこんなに違うのか……。


「まぁ……今日は迷惑かけちゃったしね」


 誰に聞かれることもない言い訳を口にして、僕はミコトを抱きしめる手に少しだけ力を籠める。しっかりと――落ちないように――離れないように――



「……ふふ……」


 僕の膝の上でミコトは小さく笑みを浮かべていた――




 その後、十数分が経ったあたりだろうか。スノーちゃんが帰ってきて更にひと悶着があったりもした――



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