侵入者ですか?
そうしてイリちゃんが消えてから七日目。朝食をいつものみんなで食べて捜索へと繰り出す。
毎日変化するのは捜索場所と聞き込みの対象くらいのもの。それ以外の結果や、行動なんかはこの七日間ずっと一緒だ。
今日の結果も同じだ。担当の場所を探し回って街を歩いている人たちにイリちゃんの容姿を伝えて見かけていないか訪ねて回ったが、何の成果も得られなかった。
そうして時間は過ぎていって夜になる。僕は歩き回って重くなった足で宿へと戻る。もしかしたら他の誰かがイリちゃんの情報を掴んだかもしれない。もしかしたらイリちゃんがひょっこり帰ってきているかもしれない。そんな淡い期待を抱きながら、宿へと帰る。
だけど、そこからがいつもと違った。
「ただいま戻りました」
そう言って僕はいつものようにナギ先生の部屋へと入ろうとするのだが――
「あれ? 開かない。……鍵がかかってるってことはまだナギ先生は帰ってきていないのかな?」
これは今までにはなかったことだ。ナギ先生の捜索範囲はみんなに比べて少し狭いので、いつもは一番に宿へは帰ってきていた。集まった情報をまとめたり、ギルドに出したクエストの進捗情報など、ナギ先生にはただ捜索する以外にもすることがたくさんある。この時間にナギ先生が自分の部屋に居ないっていうのには少し違和感を覚える。
「あ、シロ。お帰り」
「……シロ君……お帰り……今日も遅かったね? ……」
ナギ先生の前で考え込んでいるのをスノーちゃんとミコトに発見される。二人も今日の捜索を終えて宿へと戻ってきていたらしい。
「ただいま。スノーちゃんとミコトも帰ってたんだね」
「うん。でも今日も何の手掛かりもつかめなかった」
「……成果なし……ごめんね……」
「いや、ミコトが謝る事なんてないよ。僕の方も何の手掛かりもつかめなかった。本当に……イリちゃんはどこにいったんだ……」
重苦しい空気が三人の間に漂う。いつもこういうときはナギ先生かスノーちゃんが話題を変えてくれるのだけど、イリちゃんが居なくなってからのスノーちゃんは少し元気がない。まぁ僕も人の事を言えないかもしれないけど。
僕は頭を振って浮かび続ける悪い想像を打ち払う。そして気になっていたことを二人に尋ねることにした。
「そう言えば二人はナギ先生がどこに居るのか知らない? やっぱりまだナギ先生は帰ってきてないのかな?」
「うん。私たちも帰ってきてないのか少し調べたけど、やっぱりまだ帰ってないみたい」
「……時間あったからお風呂入ってきた……シロ君も……入ってくる? ……」
言われてみれば二人とも風呂上りなのか。少しだけ艶っぽい気がする。
「うーん、そうだなぁ。ナギ先生は色んな所に捜索を依頼してたからその関係で遅くなってるのかもしれないからね。僕も結構汗かいちゃったし……少しお風呂に入ってくることにするよ」
「分かった」
「……ぬくぬく……ぽわぽわ……気持ちいよ? ……」
そうして僕は二人と別れて自分の部屋へと向かった。それにしても本当にナギ先生はどうしたんだろう? 無理しないように言ったのは先生だって言うのにこんなに遅くまで帰ってこないなんて。先生の方が無理してるじゃないか。僕の捜索範囲ももっと広げてもらおうかな。
そうして僕は自分の部屋のノブに手をかけ、鍵を開けようと――
「? あれ? 鍵開けっ放しで部屋を出たんだっけ?」
手ごたえで鍵がかかっていないのが分かる。僕はおそるおそる自室のドアを開ける。
部屋の中を見渡してみるが、特に変わった点はない。荒らされた様子も無いし、見知らぬ第三者が待ち構えているといった事もなさそうだ。
「うーん。焦ってて鍵を閉め忘れたのかなぁ。これじゃ休め休めって言われるのも仕方ないかな」
自嘲しながら僕は部屋の中へと入っていく。注意深く辺りを探ってみるけれど、やっぱり変わった所はない。
「ん? なにこれ?」
いや、変わったところは一点だけあった。机の上に、真っ白な紙が張り付けられていた。こんなものは朝の時点ではなかった気がする。
紙には何か書かれていた。部屋の持ち主――つまりは僕に対するメッセージだと思われる。もしかしたらナギ先生の置手紙かもしれない。そう思って僕はその紙に書かれた内容を読んで――
『冒険者イリと魔導士ナギは預かった。二人を助けたければ明日の夕刻までに【まほろばの園】へと来い。魔導士ナギの弟子であるシロが来なかった場合、冒険者イリを殺す』




