捜索です!!
「ただいま戻りました」
僕はいつも泊まっている宿のナギ先生の部屋に入る。部屋にはスノーちゃんとミコト。それとナギ先生が既に居た。今日も僕が一番最後だったらしい。
「お疲れ様ですシロ君。それで……その……どうでした?」
「今日も成果なしです。『小さな女の子が一人で出かけるのを見かけた』っていう情報以来、まともな情報がまったくないですね。ナギ先生たちの方はどうですか?」
「私の方も今日は成果なしですね~」
「……時間が夜だったから……情報も少ない……」
「いっぱい色んな所を探したけど全然見つからないよ」
僕だけじゃなくみんなも大した成果は得られなかったらしい。それでも一応探したところの情報を共有するために話を続ける。明日の探索場所の打ち合わせの為にもまだ話し合わないといけない。
「一体どこに行ったんだ……イリちゃん……」
あの日、イリちゃんが想いを告げてくれたあの夜。その翌日からイリちゃんは行方不明になっていた。
イリちゃんはスノーちゃん達の所で寝てすらも居ないらしい。スノーちゃん達はイリちゃんが僕の部屋で寝たんだろうと思っていたようで、姿を消したのに気づいたのは朝方、イリちゃんを除くみんなで集まった時だった。
その日はみんなでがむしゃらで探し回った。それこそ辺りが暗くなるまで探し回ったけど、見つける事は出来なかった。とはいえ、一つだけ情報は得た。
『その子かどうかは分かんねぇけど、深夜に小さな女の子が一人で出かけるのを見かけたぜ?』とたまたま僕たちの住む宿からイリちゃんらしき人が出るのを見た人が居たのだ。少なくとも宿を出るまではイリちゃん自身の意思で行動していたと思われる。
その後のイリちゃんの消息を色んな人に尋ねて回っているのだけど、成果は芳しくない。深夜、外に出ている人は少ない。もしかしたらこれ以上の情報は手に入らないかもしれない。だからと言ってがむしゃらに探し回っているだけで見つかるのだろうか? 誰も言わないけれどおそらくみんなも同じ不安に包まれているはずだった。
一応、イリちゃんを探しているのは僕たちだけではない。ナギ先生が機転を利かせて冒険者ギルドに冒険者としてではなく、依頼者としてイリちゃん捜索の依頼を出したのだ。なので、いくつかのパーティーがイリちゃん探しに貢献してくれているはず。
依頼を出したのはイリちゃんが居なくなっているという事に気づいた日の夕方だ。僕を含めるナギ先生以外のみんなはそんな事を考えもせず、ただがむしゃらに探し回っていた。
そうしてそれから六日が経つ。今では誰がどこを探すか前日の夜に打ち合わせをして、次に集まった時に情報交換するというのが常になっていた。こういう細かいところを調整してくれているのは全部ナギ先生だ。ナギ先生はその行動でがむしゃらに探し回るよりも冷静に対処した方がずっと効率が良いという事を僕たちに教えてくれる。やっぱりナギ先生はすばらしい先生だ。
「焦って成果が出るのならいくらでも焦るよ~。でもそうはならないの。焦りはどんな時もマイナスな物しかもたらさない。だからこそ、どんな時でも私は冷静さを見失わないようにしてる。それが私が生きてきて学んだことの一つなんだよ~」
言葉のはずみなのかな。ナギ先生に「なんでそんなに気楽で居られるんですか!?」とスノーちゃんが怒鳴った事があった。それに対しての返答がこれだ。
スノーちゃんはその言葉で少し冷静になったのか。素直にナギ先生へと謝っていた。本当にナギ先生が居てくれて良かった。ナギ先生が居なければ今頃みんなでがむしゃらに探し回るだけで探す場所が被ったりなんかもしていつまでも捜索範囲を広げられなかっただろう。
「それじゃあ明日はシロ君はこの辺りとここと、この場所をお願い。シロ君? 聞いてる?」
「あ、すいません。少し考え事をしていました」
考え事をしていたらいつの間にか今日の情報交換は終わり、明日の探索場所の話へと移っていた。
「シロ君大丈夫? なんだったら明日は休んでくれても――」
「いえ、大丈夫です」
ゆっくり休んでなんて居られない。正直寝る時間すら惜しいと思ってる。冷静にならないといけないと分かっているから寝る間も惜しんで探すなんてことはしないけれど、それでも焦らずにはいられない。
「そう? それなら明日はこの辺りとここと、この場所をお願いね~。ただ、いつも言ってるように無理はしちゃだめだよ~。シロ君は私たちより働いてるんだからたまには休んでいいんだからね~」
「そうだよ。このままじゃシロの負担がでかすぎるよ。イリちゃんの事は私たちも心配だけどたまには休んでいいんだからね?」
「……私たちも……イリちゃんが心配……一緒……一人だけ無理するの……めっ……」
「無理なんてしてないよ。これでも僕は男の子なんだから。体力的に考えてこれくらい余裕だよ」
腕をぐるんぐるん回してまだまだ余裕だっていう事をアピールしておく。
毎日みんなで探索場所を決めているのだけど、僕の探索範囲だけ他の人に比べて明らかに広いのだ。
これは僕が自分から望んだ結果だ。ナギ先生にまだまだ体力的に余裕なのでもっと広い範囲を探させてくださいと頭を下げて納得してもらった。それを聞いたスノーちゃんとミコトちゃんも同じように探索範囲を広げて探したいと言っていたが、それは却下された。「二次遭難でもしたらどうするんですか? 無理して探すなんて愚かな行為です」というナギ先生の言葉にスノーちゃんとミコトは納得こそしていないように見えたが、その場でそれ以上ナギ先生に突っかかる事はなかった。
「シロがそう言うならいいけど――」
「……むぅ……シロ君……意外と頑固……男の子……だね? ……」
そうしてその日の話し合いは終了した。ふぅ、なんかみんなに凄く心配されちゃったけどそんなに無理しているように見えるのかな? 焦っている自覚はあるけど、無理はしていないっていうのに……。
「いや、みんなは僕の為を思って心配してくれてるんだ。鬱陶しいだなんて思っちゃいけない。ありがたいと思わなくちゃ」
焦っているせいなのか、ついつい思考が悪い方へといってしまう。ああ、駄目だ駄目だ。はやく寝てしまってこんなもやもやした気持ちは取っ払うに限るね――




