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私の苦悩~verナギ~


★ ★ ★ ★ ★ ★ ナギ視点 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★



 なんで……なんで私がイリちゃんの治療をしたことになってるのぉぉぉぉぉぉ!?



 私は確かに治療の為に魔法を使った。だけど、イリちゃんには良くも悪くも魔法が効かないらしい。イリちゃんを治したいけど何の手立てもない。私は膝をついて自分の無力を嘆くことしかできなかった。


 そんな時にグリルとの戦いを終えたらしいシロ君が現れた。シロ君は私の名前を呼び、何をやっているのかと怒っている。それに対して私は何も言えなかった。イリちゃんを救えないのは事実だから……。そしてこんな状況になったのも私のせいだから……。どんな批難でも受け入れるつもりだった。


 シロ君がどれだけイリちゃんを助けてと叫んでも私にはその力はない。魔法が効かないのであれば取れる手段はかなり限られている。そしてそれはスノーちゃんがイリちゃんに施したような止血などの原始的な方法しかない。しかし、イリちゃんの傷は深く、その程度の処置では助からない事は誰の目にも明らかだった。


 そんな中、シロ君はイリちゃんがこんなことになったのは自分のせいだと言う。違うのに……私が……シロ君の教育と……自分の興味なんかを優先して手を出さなかったのがそもそもの原因だっていうのに……。


 本当にごめんなさい。


 シロ君……イリちゃん……みんな……ごめんなさい。

 罪の意識で押しつぶされそうになったその時だった。



「んん……あれ? わたし……」

「「「イリちゃん!?」」」


 イリちゃんが目を開けた。そして、それだけじゃない。

 イリちゃんの背中の傷が……どんどんと閉じていくのだ。それはまるで魔法のようだった。



「へ? え? え?」


 当のイリちゃんはシロ君に揺さぶられてただ困惑しているだけだ。その顔色は健康そのもので、先ほどまで死にかけていたとは誰も思えない程の回復ぶりだった。


「うそ……」

「……治ってる……」

「これは……」 



 これは……シロ君の魔法? 

 いや、それは考えられない。イリちゃんの体は他者の魔法を受け付けないと聞いた。だからこそ私のアンチガーズも弾かれて途方に暮れていたのだ。そもそも魔力適正0のシロ君に魔法が使えるわけがない。


 

 ならイリちゃん自身が自分に治癒魔法を使った? イリちゃんの体はイリちゃん自身の魔法は受け付けるらしい。ならば自分で自分の傷を治した?

 いや、あんな酷い傷を負った状態では満足に魔法が使えるとは思えない。それに本人で治したのならあんなに困惑していないだろう。



 ならこの現象は何?

 私がさっきまで抱いていた罪悪感なんてもうどこかに吹き飛んでいた。私の頭は目の前の奇妙な現象に対する興味で一杯だった。

 だから……だろうか――



「すみませんでした先生。僕が何かを言うまでもなくイリちゃんの治療をしてくれていたんですね。そうとは知らず声を荒げちゃってすみませんでした!」



 シロ君のトンチンカンな謝罪に対して私は「え?」としか返せなかったのは。


 そこから話があれよあれよと転がり、何故か私がイリちゃんの傷の治癒を成功させたという事になっていた。





 なんでぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!? なんでシロ君は私をそんなに持ち上げるのぉぉぉぉぉぉ!? 私、魔法の腕はそこそこだと自負しているけどそれだけだよ!? それなのにシロ君はもぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!? 


 シロ君の中での私はいったいどんな存在なんだろうか……。ああ、ダメ。なんだか考えただけで頭が痛くなってきた。


 ちなみにそのシロ君はミコトさんの口車に乗って私たちの視界には収まらないくらい遠くに行ってしまった。


 ミコトさんはシロ君が遠くへ行った事を確認すると、手をパチパチと鳴らし、


「……女子会~~……わ~~……ぱちぱち……」


 と、突然訳の分からない事を言い出した!?


「パチパチパチ~~」

「ん」


 それに便乗するかのようにスノーさんとイリさんも拍手しだす。えっと……これは何なのかしら?


「ぱ……ぱちぱち~」


 とりあえず乗っかっておこう。私も三人に合わせるように拍手をする。



「……ナギ先生……色々聞きたいことある……いい? ……」

「え? ミコト? どうしたの急に?」

「スノー姉は少し黙ってて。話が進まない」

「そんな事言うなんて酷いよイリちゃん! まるで私が空気が読めない馬鹿な子みたいじゃない!」

「え? ………………スノー姉、自覚なかったの?」

「イリちゃんさっきから私に対して冷たくない!?」

「……二人とも……少し黙る……」

「「ごめんなさい」」



 あらら? なんだかちょっと真剣な話をする雰囲気? まぁ今回は私のせいで三人を危険な目に遭わせちゃったわけだし……私に出来ることならしてあげたいかな~。


「何かしら~?」


 しかし、何を聞かれるんだろう~?


「……シロ君のあれ……何? ……」

「シロ君? シロ君がどうかしたの? あれって何のことかな~?」


 思い当たることはいくらでもあるけど私はとぼけて見せる。


「……低級魔法でAランクの魔物を瞬殺したり……銃弾を喰らっても無事だったり……魔法が効かないイリちゃんの傷を治したり……人間? ……」



 あ~、やっぱりね~。

 そりゃああれだけ常識外れの出来事を見せられ続けたら気になるわよね~。少なくともただの凄い魔法使いっていう説明で納得できないわよね~。



「うんうん。あれ凄かったよね!! 私ももっと真剣に魔法の勉強をしようかなってシロ君を見ていたら思えてきちゃった!」

「スノー姉、そういう問題じゃないと思う……」


 スノーさんはシロ君の事を凄い魔法使いっていう説明で納得できていたらしい。うーん、この二人が居なかったら誰かに騙されて酷い目に遭っていたでしょうね~。良いパーティーですね~。


「……あれは魔法じゃないと思う……別の力……あれは何? ……ナギ先生? ……」

「???」

「ん」



 うーん。もうこれは下手なごまかしはききませんね~。スノーさんは騙せてもミコトさんとイリさんは騙せそうにないです。

 まぁこの三人なら全部話しても問題なさそう……かな。危険な目にも遭わせちゃったし。


「ふぅ~。分かったわ~。私の知ってる限りの事を話すわね~」


 そうして私はシロ君と出会ってから今までの事を三人に聞かせた――






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