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弟子入りします!!


「せんせー! せんせーはいますかー?」



 僕の名前はシロ。十五歳です。僕は魔法というものを学ぶため、ナギ先生に弟子入りしに来ました。

 ナギ先生は昔、凄腕の冒険者として名をはせたすごい女魔導士です。そんなナギせんせーの下で修行すれば僕も魔法を使えるようになるんじゃないかと思ってここまでやってきました!


 ナギ先生は人里から離れた森の中で一人暮らしだそうです。なんでも魔法の研究の為にわざわざ何もない森のど真ん中に家を建てたみたいです。やっぱりナギ先生は凄いや!



 ……それにしても返事がないな。

 よし、もう一回呼んでみよう。



「せんせー! ナギせんせーいますか~?」



 ドアをどんどん叩いてみます。留守かな? 留守だったらどうしよう。家の前で待ってたら失礼かな?

 そう思った時でした。



「はいは~い。こんな所までどなたですか~」 

 


 ナギ先生が出てきてくれました! 紫色の長い髪をたなびかせるそのぽわ~っとした女の人は間違いなくナギ先生でした! 確か四十歳過ぎとかだった気がするけど……そうは見えないくらい若々しいです。よくて三十歳前半にしか見えません。これも魔法の力でしょうか?

 うわー。本物のナギ先生だ。えっと……えっと……そうだ! まずは挨拶をしなくちゃ!



「は、初めまして! 僕の名前はシロです! 高名なナギ先生の教えを請いたいと思ってここまで来ました。どうか……お願いします!!」



 そう言って僕は頭を下げた。僕は……僕はどうしても魔法を使いたいんだ!!



「は、はぁ……。そ、そうなんですか~。わざわざこんな人里離れたところまでご苦労です~。とりあえず頭を上げてください~」


 ナギ先生のお許しが出たので僕は頭を上げる。



「……研究のための助手くらいには使えるかしら?」



「え? 何ですか?」



 ナギ先生が何か呟きましたが、声が小さくて聞き取れませんでした。



「いえいえ~。なんでもありませんよ~。えっと。教えを請いたいって事でしたけど具体的には何を学びたいんですか~?」



「もちろん魔法を学びたいです!!」



 僕は即答した。それ以外に教えて欲しい事は特にないしね。



「いや、あの、ですから……こほん。どんな魔法を学びたいんですか~? それとシロ君……だったっけ? シロ君はどれくらい魔法が使えるのかな? 中級魔法は使えるかなぁ?」



 魔法は大きく分けて初級魔法・中級魔法・上級魔法の三つに分かれている。一般人でも初級魔法を習得している人が大多数だし、中には中級魔法を使える人だっている。もちろん一般人だと生活に役立つ魔法しか使えないっていう場合が多いけど。

 その中で僕が使える魔法。それは……



「……使えません」



「……へ?」




 ナギ先生が目を真ん丸にして僕の事を見ています。まぁ、そうなるよね……僕の村でも僕以外のみんなが魔法を使えていたからね。魔法が使えない人っていうのはやっぱり珍しいみたいだ。



「僕は魔法を一切使えないんです。でも……どんな辛い修行にだって耐えてみせます。僕はどんな魔法でもいいからとにかく魔法を使ってみたいんです!! 初級でもなんでもいいので教えてください! お願いします」



 僕はそう言ってもう一度頭を下げる。




「え? うそぉ? 魔法を使えない人なんてこの世に居たの? 誰もが使える物だと思ってたけど……魔力適正――ゼロォ!?」




 ナギ先生はまた何かぶつぶつと呟いています。僕は最後の「ゼロォ!?」しか聞き取れませんでした。ナギ先生はビックリした様子で僕を見つめています。一体僕の何がゼロなんだろう?



「何がゼロなんですか?」


「な、なんでもないのよ~」


 とてもなんでもないようには見えなかったけど……まぁナギ先生が言わないなら僕も詮索はやめておこう。きっと僕が知らなくていい事なんだ。



「そ、それじゃあシロ君。家の外で体でも鍛えておいてくれるかな~? 魔法を扱うにはまず強い肉体が必要なの~。体を鍛えて魔力を感じ取れるようになったら私に声をかけてくれるかなぁ? その時は正式に私の弟子にしてあげちゃう。あ、あとここら辺は危険な魔物がたまに出るから何かあったらお姉さんに頼りなさいね~。あと、もう無理だと思ったらいつでも帰っていいよ~」



「――ッ! はい! 分かりました先生!」




 良かった! 門前払いをくらって僕のような未熟者は弟子に取らないとか言われたらどうしようかと思ったよ。

 正式にナギ先生の弟子になれた訳じゃないみたいだけれど、魔力を感じたら弟子にしてくれるみたいだ。よぅし! 頑張るぞー!



「本当に無理だと思ったらいつでも帰ってくれていいからね~」



 ナギ先生はそう言うと家のドアを閉めて引っ込んでしまった。

 先生……次に会う時までに僕は魔力を感じるようになってみせます!!!







★ ★ ★ ★ ★ ★ ナギ視点 ★ ★ ★ ★ ★ ★ ★







「ふぅ~」


 私は家のドアを閉めて、今来た黒髪の平凡な顔立ちの少年――シロ君には見せられないため息を吐く。



「魔力適正ゼロって……そんな人この世に居たのね~」



 私は先ほど、シロ君に対して一つの魔法を使った。

 それは、魔力適正値を算出する魔法。生き物の魔力適正値は基本的に生まれた時から変動しない。ただ適正値を算出するだけの魔法だから、実際にその人が魔法に秀でているか分かる訳じゃない。凄く高い魔力適正を持っているただの村人だって居るのだ。それに、この適正値は秀でた魔導士なら相手に悟らせないようにも出来るので、相手がそういう秀でた魔導士だと使う意味も薄い。

 だけど今回のように相手が素人の場合は役に立つ。後は新人発掘の際なんかにも有効だ。魔力適正が高い子だけを集めて魔法の教育を施すといった事も出来る。



「はぁ~~~~~~~」



 私はその場でうつぶせになって倒れる。床に寝るなんてはしたないかもしれないけれど、ここにはそんな注意をする人もいない。


「あんなキラッキラした目をしたシロ君に『君は魔法を使う素質がないよ』なんて言えないよ~。やっぱりあれかなぁ。自分が使えない物に対する憧れっていうやつなのかなぁ。……まぁいつか諦めて帰ってくれるでしょ~」



 それに私は忙しい。

 私がこの場所でしている魔法の研究。それは不老魔法の研究だ。未だ誰も成し得たことのない魔法で、誰もが夢見る魔法。

 私はいつまでも魔法の研究がしていたい。新しい魔法を自分の手で創り出す。それが楽しくて楽しくて仕方がない。新しい魔法の創造には時間がかかるけれど、完成した時の達成感を思えば全く苦にならない。

 昔、冒険者をやっていたこともあるけれど、それは研究費と魔法の研究の為に必要な素材を集めたかったから。


 その時に稼いだ研究費と研究に必要となる素材はまだまだたくさんある。しかし、多くの魔法を研究するために一つだけ、どうしても足りないものがあった。


 それは、私の時間。

 人間の寿命は短い。私ももう四十をこえた。長くても後六十年ほどしか生きていられないだろう。いや、老いるとボケてくるだろうから正常な状態で私が魔法の研究を出来る時間は長く見積もって三十年ほどかな?



 足りない。全然全く足りない。

 そこで私は思いついた。そうだ、次に製作する魔法は不老の魔法にしようと。

 この魔法を完成させれば私は未来永劫魔法の研究にこの身を捧げることができる。我ながらグッドアイデアだ。



「ナギお姉さんはいつまでも魔法の研究をしていたいのです!」



 それに、私だって女だ。出来ることならばいつまでも若く美しい姿でいたい。それはいけない事だろうか? いいや! そんなことはない! だって女の子なんだから。いつまでも綺麗な姿を保てるように努力したいのは当たり前だ!!



「そういう訳で頑張れ、私!」



 そうして私は引き続き不老魔法の研究に入った。



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