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禍津解錠 12

 「おい、ここで何している?」


 暁良はようやく先程男を見た20階建てくらいのビルを登りきり、屋上に辿り着くと、そこにまだ居た男に声をかける。

  

 その男は金髪に碧眼で相当な美男子であり、年齢は暁良よりも数歳年上と言った感じで、どこか、この世のものとは思えないない様な異質感を放っていた。


 「···」


 「な、なんだよ?」


 暁良の言葉を受けてゆっくりと振り返った男は吟味するように数秒間、暁良の姿を観察する。


 男のそんな行動に少しの間、困惑してしまった暁良だったが、すぐに男に言葉が通じなかったのだと思い至り、咳払いを1度してから再び話し始める。


 「あー、ベリー、デンジャラス、ヒアー。ストロングモンスター、エブリー。え〜、だから〜、シャルウィー、カム、アンダースタンド?」

 

 と暁良は絶望的なまでの英語力で男に問いかけ、同時に数歩近づく。


 「はあ···言葉なら通じている」


 「えっ?」


 「そんな事よりも、お前は戦闘を続けたらどうだ。御子?とはそういうものなのだろ?」


 「なっ、お前その言い方はねーだろ」


 お前達の為に戦ってやってるのに、と口をついてでそうだったがそこは何とか抑えながら言い返す暁良。


 「てか、お前ここに居ることがバレたらヤバいんだぞ。下手すりゃ懲役もんだぜ」


 「俺の事はいいと言っているだろ」


 「は?何言ってんだ?···ちょっと待ってろ」


 何だか男と話が噛み合わず、仕方無しに暁良は説得を手伝ってもらおうと無線で騎士へと通信を試みる。


 しかし。


 「あれ?変だな」


 一向に騎士と連絡が取れない。

 

 「ちっ、こんな時に壊れちまったのかよ。···あー、まあいいやほら取り敢えずこっちへ···」


 「はあ···」


 男はイライラした様子でため息をもらし暁良の言葉を遮る、そしてそのままのテンションで続きを話し始める。


 「全く、俺達の存在が秘匿されていると言うのは本当だったのだな」

  

 「秘匿?なんの事だ?」


 「···お前はこの空間、お前らの言う禍津解錠がどういう物か知らないだろ?」


 「は?どういう物か?マガツモノが大量発生するっていう自然現象みたいなもんじゃねーのか?」


 訳もわかからず、男の醸し出す雰囲気に押されながら答える暁良。


 そして暁良の回答を聞いた男は再びため息をもらす。


 「はあ···やはりいい、面倒だ。どうせ記憶を弄られて忘れるのだろうから教えたところで意味は無い」


 「それは、どういう···」

 

 と暁良が呆気に取られながら呟いた。次の瞬間。



 「魔銃三段撃ち(ケルベロス·ブラスト)!!!」



 どこからともなく遼の声が聞こえて来て、その後、無数の銃弾がその男を襲う。


 恐らく遼は暁良が居なくなる理由を皆に話した後、自身も暁良を追ったのだと思われた。


 「って、おい遼!お前何やってんだ!」


 「まあ見てみろ。普通の人間があの技くらってこんなにピンピンしてられるか?」


 遼の攻撃によって巻き上がった煙が晴れるとそこには無傷の状態の男が立っていて、その様子に暁良は唖然とし、遼は興奮した様子で笑う。

 

 「随分と乱暴だな」


 「そりゃ乱暴にもなるだろ。ようやく尻尾を掴んだんだからな」

 

 お互いに睨み合う遼と男。


 それに完全に置いてけぼりを食らってしまった暁良は困惑しながら男と遼を交互に見る。


 「つ、つまり、こいつは人間っぽい見た目だが、マガツモノって事でいいんだよな?」


 状況を整理しつつ、暁良は神具を展開して刀を構える。


 「マガツモノと一括りにされるのは大変に心外だな」


 そう言うと男は軽く首を傾げながら笑う。

 

 「俺はリカルド。"禍津ノ王"とそう呼ばれる存在だ」


 「なっ···」


 "禍津ノ王"などと全くの初耳な情報を語るリカルドと名乗った未知の敵に対して、暁良は混乱しながらも遼と共に臨戦態勢を取る。


 しかし、それを見てもリカルドは一向に焦る様子なく、淡々と言葉を続けていく。


 「そして、この禍津解錠と言う舞台は王の伴侶となる者を品定めするだけのものであり、言わばこれは王の前で行われる御前試合に過ぎないんだ」   


 「!?」


 「まあ、だが今日はただの下見だ。誰にも手を出す気は無いから安心して戦いに戻るがいい······それとも」


 リカルドはそう言うと不敵に笑い、力を貯めていく。


 そして。


 「魔装解放、ライト·アンド·ダーク」


 と次の瞬間には漆黒の剣を持ち、頭から足まで全て覆った純白の鎧を纏った状態となって暁良達の前に立ち塞がり、漆黒の剣を暁良達に向ける。


 「!?」


 「ふっ···それとも、今ここで力の差を思い知るか?」


 そしてリカルドはヘルムによって篭った声で挑発するようにそう言い放った。

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