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禍津解錠 10

 そして、10分以上が経ち。


 「灼獣降誕(しゃくじゅうこうたん)!!」

 「双頭雷竜!」

 

 と二条院リリネと姉小路絵梨花の技が決まり、背中の卵が全て無くなった恐竜はそのまま地面に崩れ落ちる。


 さらに。


 「おら!帝牙破刃脚(ていがはじんきゃく)!!」

 「ゲート·オブ·テラー···」


 続いて、本庄頼子と黒木未来も子供の恐竜へと攻撃を加え、景気よく残党を狩っていく。


 「いやー、後輩が頼もしくていいね」


 同じく、恐竜のマガツモノの残党を倒していた、生徒会長、三廻部桜がそれらの様子を眺めながら、副会長である来島咲枝に笑いかける。


 「ええ、禍津解錠に向けての訓練で驚く程に成長してくれました。···ただ皆だいぶ体力を消耗してしまっています。禍津解錠が終わるのも時間的にそろそろですし、以降は強敵との戦いは避けつつ、出来うる範囲で戦いを続けてもらいましょう」


 「そだね。私も流石に疲れちゃったよ、っと!!」


 そんな感じに話しながら桜が最後の一体を倒す。


 そして。


 「···やった······やったぞー!!」


 誰か1人のそんな言葉から九條学園の生徒達はようやく敵の本体と子供をすべて狩り尽くした事を理解し、皆息絶えだえになりながらも、抱き合い手を叩き喜びを分かちあう。




 だがしかし。そんな時間は長くは続かなかった。




 敵の殲滅を確認してから10秒ほどの時間が経つと、突然にグシャグシャ、グチャグチャという気色の悪い音が響き始め、九條学園の生徒達は嫌な予感を感じながらも、恐竜の本体の方を恐る恐る見る。


 そして多くの人がそのグシャ、グチャという音は恐竜の体内から聞こえて来ていることに気が付く。


 すると次の瞬間。



 「ピグゥギャアアアァアァ!!!!!!!」



 という耳を劈くような金切り声が響き、恐竜の身体を食い破り現れたのは、全身茶色の4、5mはあろうかという羽の生えた二足歩行の昆虫であった。


 「う、嘘でしょ···」

 

 まだ次のフェーズがあった事に絶望的な心境を吐露してしまうリリネ。


 するとリリネの発した言葉を音として聞いた昆虫のマガツモノはリリネの方を見ると素早い動きでリリネとの距離を一気に詰めて、蹴りを加えてくる。


 「っ!!?」


 「危ない!!」


 カキンッ!!


 と敵の攻撃はリリネと敵の間に割って入った桜により防がれる。


 そして、続け様に桜は自身の持つ神具、転ばぬ先の聖杖(ゴッドノウズ)で敵の攻撃を弾き返すと同時に杖の先端を敵の腹部にあてがい0距離でレーザーを発射する。


 するとその攻撃による衝撃で敵は後方へと10mほど吹っ飛ばされ地面をバウンドし、そのまま更に数m地面を滑る。


 「···」


 「グギガガギッ?」

 

 「なっ!?」


 しかし敵は身体に着いた砂を払いながら、首をゴキゴキと鳴らし余裕の様子で立ち上がってくる。


 「み、皆行くわよ!」


 「「え、ええ」」


 リリネの呼び掛けにより、その昆虫へと一斉に攻撃を仕掛ける生徒達。


 それにより数十秒間に渡る波状攻撃が昆虫へと加えられる。


 がしかし、その全てが昆虫にダメージというダメージを与えるには至らず、そいつは飽きたと言わんばかりに1番近くにいる生徒のところまで一瞬で移動して殴り掛かる。 


 「ジシュウウウゥゥ!!」


 「きゃっ!!」 


 敵の素早い拳に対し、その生徒は辛うじて防御する事に成功し、殴り飛ばされたもの大事に到ることは無かった。


 そんな状況にそこに居る皆がマズいと感じた。


 先程の一斉攻撃に参加した生徒の中には本体の恐竜には1度も攻撃していない生徒も混じっていた、その事から恐らくこの敵は親子含めて攻撃した者の攻撃に耐性を持つといった能力であろう事が予想出来てしまったからである。


 「くっ···これは一旦退避しますか?」


 「致し方ない···かな」


 咲枝からの問に対し、周りの生徒の疲れきった様子を一通り確認した桜が決断を下す。


 そして咲枝が全員に逃げる様に支持を出そうとした、その瞬間。


 「十束ノ刃!···おら!!」


 と声が響き、突如、昆虫の正面から真っ直ぐに日本刀が飛来する。


 「グギッ?」


 能力なのか不明だが、瞬時にその攻撃に耐性がない事を察した様子の敵は今までとは違いその攻撃を受けることはせず、ギリギリで躱す。


 そして、日本刀は虚しく敵の後方へと飛んでいってしまう。


 「ふっ、斬像!」


 としかし、敵の後方でその日本刀を持っている半透明な人間が突如として出現し、再び敵の後頭部に向けて刀を投げる。


 「クギァァァァ!」


 グサッ!!と昆虫に日本刀が浅く突き刺さる。


 「生キ写シ···」


 更に苦しそうに叫び声を上げた昆虫を後目に、後頭部に刺さった刀の元に移動した暁良はその刀を更に鍔の所まで敵の身体に突き刺した。


 「ゴギャッァ!!」


 「ふう···ん?ってあれ?もしかして今俺かっこいい?」


 騎士に言われ無我夢中でここまでやって来た為、あまり意識していなかった暁良は何気なく顔を上げ、周りの様子に驚く。


 そして、自分に向けられる崇敬の眼差しを目撃し、不意に顔を綻ばしてしまった。

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