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禍津解錠 6

 「くそ!」


 ギリギリ合わせられたかと思ったがダメだった。

 

 俺は分かっていながらもお姉さんの方を見る、がしかし、やはりと言うべきか鬼のマガツモノも再生を始めているのが確認出来てしまう。


 「申し訳ありません。タイミングを外されてしまいましたわ」


 「いえ、私も完璧なタイミングでは···くっ···」


 俺に気を使いお姉さんは俺を責めるような事は言わなかったが、言葉を言い切る前に力の使いすぎにより膝を着いてしまう。

  

 どうやら彼女は本当に限界間近の様でこれ以上戦闘を続行出来るかは怪しく、出来たとしてもさっきの様に倒すタイミングを合わせるのは無理なように見受けられた。


 その為、俺はある決断を下す。


 「ここは私が食い止めますのでお姉さん達は一旦役所に戻って治療を受けてください」


 そう、役所では回復能力を持った御子とそれらを防衛する戦闘要員の御子が数名待機している。


 お姉さんには残りの力を振り絞って、怪我をしてる2人を無事にそこまで送り届けて貰わなくてはならない。


 「そんな、でも貴女は?」


 「私はこいつらを食い止めます。大丈夫です。お姉さん達が逃げ切れたと思ったら私も退避しますわ」


 「···」


 「ほら早くして下さい!」


 「は、はい!」


 俺は俺に遠慮してどうすればいいか分からず、たじろぐお姉さんに対して少し大きめの声で叫ぶ。


 「ぐぅおああああぁぁ!!」


 「ちっ」


 そんなやり取りの中、いい感じに再生が完了してしまった狛犬が俺に向かって再び飛び掛って来て、奴の鋭い歯と俺の刀で鍔迫り合いとなる。


 がしかし、先程からも何となく察していた事だが、改めてこうして力比べの様になって俺は完全に把握した。


 こいつらはパワー的には大したことは無い。あの再生さえ何とか出来れば俺1人でも2体を相手する事は可能だ。


 ···と、そんなことを考えていると。


 「きゃあーーーっ!!」


 と再びお姉さん達の声が響く。


 咄嗟にそちらを見るとお姉さん達が3人で逃げようとしていた所、鬼のマガツモノに距離を詰められてしまっていた。


 そして先程、俺と共に戦っていたお姉さんがそれを迎え撃ったが、力で押し負けてしまい吹き飛ばされてしまう。


 「くっ···忘レ刀!」


 やばい、思ったよりもお姉さんの消耗が激しかったのか。


 俺は瞬時に忘レ刀を使い、今、俺がいるのと同じ座標に斬像を召喚し、自分の持っている刀を渡すと、狛犬との戦闘をそいつに任せ、自分はお姉さん達の方向へと走る。


 そして、その最中で両手に一本づつ刀を召喚しながら鬼とお姉さん達の間に割って入り、彼女達に向かって放たれた鬼の拳を刀2本で受け止める。


 「ぐぅわぁぁあ!!」


 「今のうちに!」

  

 「「は、はい!」」


 鬼が刀を殴ってしまったことにより拳を傷付け、もがき苦しんでいる間に俺は振り返りお姉さん達に声を掛ける。


 そしてそのままの位置関係のまま、数十秒戦闘を続けてお姉さん達が逃げ切った事を確認すると一旦敵との距離を取る。


 「ふう···」


 一旦、お姉さん達を逃がすことが出来たことに対して安堵のため息をもらす。


 そして、俺は目の前の鬼と少し離れた位置にいる狛犬のマガツモノを見ながら考える。


 因みに狛犬の方は、俺が鬼の方に攻撃対象を変更した途端、斬像との戦闘を極力避けて守りに入ってしまっていた。


 これは先程の状況に似ていて、やはり同じタイミングで殺されないように両方同時に狙われた時は片方は守りに徹してしまうのだろうと考えられた。


 続いてこいつらの容姿だ。


 狛犬と鬼。


 鬼の方はその筋肉美から金剛力士像の様な印象を受ける。そして、それを踏まえて考えると共通項として"阿吽"という言葉がまず頭に浮かぶ。


 そして、コイツらの"阿吽"という言葉に恥じない以心伝心な動きは、チームワークという言葉では説明できないレベルに達しているという印象すら受けた。


 つまりコイツらはそれぞれが独立したマガツモノでは無く、2体で1体のマガツモノであると仮説が立てられる。


 「ふう···よし」


 とそこまで考えた所で俺は改めて刀を構え、そして微かに笑う。


 勝ちを確信したと言う訳では無いが、この敵が俺の推理通り、全く同じタイミングで倒さなければ完全に息の根を止める事が出来ないという能力のマガツモノだとすれば、1人で複数人になれる俺はコイツらと非常に相性がいい。


 「来い!」


 そうして、俺は更に自身の周りに6本ほど刀を出現させ、同時にそれを持っている斬像を召喚する。


 「さあ、攻略開始だ!」


 と俺は6体の斬像を二分割してそれぞれのマガツモノに向かって攻撃を開始した。

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