禍津解錠 5
「大丈夫ですの!!?」
声が聞こえた場所まで辿り着いた俺は金剛力士像を思わせる筋骨隆々な鬼のような姿のマガツモノと5mほどで厳つい顔立ちをした巨大な狛犬っぽいマガツモノを目撃する。
そしてそれと同時に、大学生ほどの3人組の御子がそれに対峙しているのが見え、その中の1人軽傷を負い、もう1人は腹から血を流した重症の様で、最後の剣型の神具を持った1人がその2人を庇うようにマガツモノと戦っている状態であった。
「ちっ···」
どうやらあまり大丈夫そうではない。
1人で戦っている御子は防戦一方であり、たった今挟み撃ちをされる様な形で別方向から同時に攻撃を仕掛けられようとしていた。
「おら!」
と、そこで俺は手に持っている刀をお姉さんの死角から攻撃を仕掛けていた狛犬のマガツモノに向けて投げる。
「ぐうぉぉぉぉあ!!」
「よし···」
刀は見事に狛犬の首に命中し、敵は唸り声を苦しそうにもがく。
「斬像!」
そんな中、俺は直ぐにその刀を持っている状態の斬像を召喚して続けて生キ写シでその斬像の位置まで瞬間移動する。
「おら!!」
そして、そのまま敵の首を掻き切ると、敵は更に少しの間もがいた末、地面に倒れる。
「大丈夫ですの?」
「え、ええ」
俺が御子のお姉さんに声を掛けると、彼女は驚いた様な安堵した様な表情で返事を返してくる。
それから俺は彼女と協力してもう一体のマガツモノも倒してしまおうと考え、筋骨隆々な鬼のマガツモノに目を向ける。
だがしかし、そいつは一旦攻撃を中止し、狛犬の方へと手を伸ばす様なポーズを取っていて、同時に何か能力でも使っているのか身体には緑色っぽいオーラを纏っていた。
「危ない!」
俺に向けて放たれるおねえさんの声。
「!!?」
「ぐぅおああああぁぁ!!!」
俺はお姉さんの声によりハッとして、ギリギリで先程倒したと思ってしまっていた狛犬の攻撃を避ける事に成功する。
そして、攻撃を避けている時に目入った狛犬もまた鬼と同じ緑色っぽいオーラを纏っていて、あろう事か先程俺が付けた首の傷は跡形もなくなってしまっていた。
それから俺は敵から少し距離を取り体勢を立て直す。
「なんなんですのこいつらは?」
「分かりません。先程本部にこのマガツモノについての情報を聞いたのですが、どうやら新種のマガツモノだった様で情報が無いと言われてしまったんです」
「新種ですって!?···くっ、参りましたわね」
「あっ、ただ先程、鬼の方のマガツモノを倒した時も、今のように再生されてしまいましたので、恐らくそれがこいつらの能力なのでは無いかと思われます」
新種のマガツモノと聞き少し焦る俺に対して、お姉さんから情報がもたらされる。
なるほど、つまりこいつらにはお互いを復活させる能力があるという事か。
となると倒す方法は極めてシンプルだろう。
そう答えは、"2体を同時に倒す"だ。
「2体を同時に攻撃します。お姉さん協力して貰えますか?」
「は、はい。まだやれます」
この2体と同時に戦っていたせいで大学生のお姉さんの体力はギリギリの状態である様だが、本人も言うようにまだ何とかやれる様であった。
「私は犬の方をやりますので鬼の方は任せます。タイミングは10秒後で大丈夫ですか?」
「ええ!」
そう声を掛けると俺は敵を打ちもらさないように念には念を入れて、百騎一閃を10本束ねた姿である"十束ノ刃"を発動させ、刀を構える。
一方、お姉さんの方も最後の力を振り絞り大技を放つ準備をしていた。
「4、5、6···」
そしてカウントが進められて俺は狛犬と刀と爪で壮絶な打ち合いをしながら、その時を待つ。
「7、8···」
「ぐぅおっ!?」
「なっ!?」
カウントが9になろうとして、倒すタイミングを調節しようとした所で狛犬は突然に俺との打ち合いを止めて、そのままバックステップで後方へと下がってしまう。
まずい、このままじゃ10までに間に合わない。
こいつらも知能が無いわけじゃない。同時に殺されないように何らかの方法で意思疎通がなされているんだ。
チラッと大学生のお姉さんの方を確認すると、彼女と鬼のマガツモノは普通に戦っていたため、きっとカウントは守られるだろうと予想出来た。
くそ!絶対にこっちが合わせないと、恐らくお姉さんはこの1回が限界だろう。
「うおらぁ!!!」
俺は手に持っていた十束ノ刃状態の百騎一閃を不格好な体勢で狛犬に向けて投げる。
しかし、避ける事のみに専念している狛犬は投げられた刀の軌道から逃れるために飛び上がり、さらに後方へと下がってしまう。
「ぐっ、斬像!!」
「ぐぅお!?」
敵のその行動に対して、俺は何とか対応し、投げられた刀の所に斬像を生み出すと、刀を持った状態で一回転させ、後方へとジャンプしている狛犬の方向へと刀を投げて軌道を修正する。
そして見事に空中に居る狛犬の身体をぶち抜き、風穴を開けて、何とか倒しきることに成功する。
「はあはあ···」
地面に落ちてきた狛犬の死骸を見ながら息を切らし、どうか復活しないでくれと願う。
タイミング的には悪くはなかった。しかし、完璧かと聞かれれば自信を持ってハイとは言えない。
そうして恐ろしく長い1秒が過ぎた後、直ぐに結果が出た、出てしまった。
狛犬の身体は再び緑色っぽいオーラに包まれて、再生を始めてしまったのである。




