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人身御供とテロリスト 8

 「さ、ここからは隠し事は無しでお願いしますわよ」

 

 「はい」


 椅子に腰掛け落ち着いたジイヤはゆっくりと今回の全ての真相について話し始める。


 「お察しの通りアキリア様は男性です。アキリア様がお生まれになった時には既に神具使いがメリヴァ王国の国主になる事が決定していましたので、その条件を満たす為に男性でありながら女性として育てられ、今まで神具も使えると偽っていました」


 「なるほど」


 「はい、しかしその反動かは分かりませんが、普段は国民思いで聡明な方なのですが、どうにも性欲が強くあらせられまして···。ただ秘密を守るという面から女性と行為に及ぶ事も出来ず、今回の様な事に···」


 へー、まじか、顔がそっくりで同じ男だったのに加えて、そんな所も似てるのかよ。親近感が凄いな。


 「なるほど。そこまでは納得しましたわ。で、私にあの傭兵たちをけしかけた事についてはどうなんですの?今更怒ったりしないので正直に言ってください」


 「はい、それに至った経緯としては、まず私共の中に敵のスパイが紛れ込んでいるという情報を得た事から全てが始まりました。ああ、因みに敵と言うのは女性が国主になる事に反対している勢力の事ですね。メリヴァ王国は日本に比べてマガツモノの出現率が低いという事情もあり、数十年前までは例え神具使いであっても女性は立場的に弱いという傾向にありました」


 「ふむふむ、男尊女卑という奴ですわね。日本も神具やマガツモノが出現する前はそうだったと言われてますわね」


 「ええ、こほん、それではその事情を踏まえ話を戻しますが、スパイの情報を得た我々はある作戦を実行する事にしました。それと言うのは、まずアキリア様にお隠れ頂き、"アキリア様が返納日であるにもかかわらず1人で何処かに行ってしまった"と嘘の情報を流し、その後に暁良様の事をアキリア様だと偽って、発見した事とその場所を仲間全員に伝えるというものでした」


 「ほほう、それであのゲームセンターにアキリアさんがいると知ったスパイが仲間の傭兵にその場所を知らせ乗り込ませたって事ですわね」


 「はい私共としても外で待機していて、もしもの事があったらいつでも乗り込める準備は出来ていました。がしかし、1つ誤算がありました」


 「"王女は返納日である"という情報を流したのに奴らが小型の返納機を準備して来てしまったんですわね」


 「その通りです。しかし、それにもかかわらず貴女は見事に敵を倒し危機を脱した。それを知り、私はあの方の言った事は正しいのだと確信した」


 「ん、あの方とは?」


 「私に貴方の存在を教えてくださった日本人の神具使いの方が居たのです。その方が困った時は貴女を頼る様にと言っておられました。きっと役に立つだろうと」


 ···全く誰だよ。そんな無責任な事を言ったのは。


 ······はあ、まあいい。


 「それで咄嗟に私と淀川先生の写真を撮り、脅しに使おうと思い立ったということですね」   


 「はいそれに関しても暁良様の事を教えてくださった人がアドバイスを下さりました。"タダで言うことを聞きはしないだろう"と」


 「誰かは分からないですが、掌の上ですわね」


 正直言ってその人物は癪に障るがジイヤに手を貸してやりたい気持ちは強い。


 それにジイヤの作戦の効果で恐らく仲間内にスパイが潜んでいることは確定だろう。それを放置するのはかなり危険だ。


 くそ、ここまで謎の神具使いのシナリオ通りって事かよ···。


 「はあ···」


 俺は深くため息を付き、それから数秒程沈黙する。


 「分かりましたわ。(わたくし)が全面的に協力させてもらいますわ。報酬は···まあ後でという事で、心配せずとも法外な額は請求しませんから安心してください」


 「あ、ありがとうございます。感謝致します」


 俺の出した最終的な答えに対し、感涙して俺の手を強く握るジイヤ。


 そして、それから明日の段取りつにいて少しだけ話をして、解散となり、俺は明日に備えて早めに就寝した。







 そして時間は過ぎて翌日の16時頃、シンポジウムが始まって1時間程経っていた今、俺はちょっとしたコンサートホールくらいある大きさの講堂の最後列(さいこうれつ)の近くのドア付近から中の様子を眺めて焦っていた。


 「アキリア王女は何処だ、探せ!!」


 と講堂の中からは男の怒鳴り声が響く。


 俺がちょっとトイレに行っている間にエライ事になってしまった。


 中は十数名ほどの機関銃を持った傭兵達に占領されていて、他の観客達は怯えきった表情を浮かべていた。


 この状況、予想出来なかった訳では無いが、まさか本当に現実になってしまうとは···くそ、もっと上手く立ち回るべきだった。


 勿論、この会場にも屈強な男の警備員や御子の警備員は配置されていた、がしかし、返納機と機関銃を持った奴らにはかなり分が悪いだろう。


 「はあ···」


 俺はこの踏んだり蹴ったりな状況に対して、疲れから来るため息をもらす。

  

 そして、どうすべきか検証するため少しばかり記憶を遡っていった。

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