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人身御供とテロリスト 6

 そんなやり取りをしながらも何とかパーティーでの人付き合いを1、2時間位こなした俺は疲れて会場の端にある椅子に腰かける。


 「はあ、王女も楽じゃありませんわね」


 「お疲れ様です。最初はヒヤヒヤしましたが後半はきちんと王女の様な立ち居振る舞いが出来ていて良かったですよ」


 「まあ、流石にボケ倒すのもね」


 俺はジイヤと会話をしつつ会場を一通り見渡す。


 「今日は何の事件も起こりそうにありませんわね」


 会場の何処にも不審な動きをしている人が見られず、更にこのパーティーもそろそろお開きになりそうな事を察して、俺は安堵のため息をもらす。


 「じゃあ私はもう少し食事を堪能して来ますかね」


 「···ええ、どうぞ」


 「あれ?いいんですの?」


 「はい、ただし先程みたいにがっつくのは無しですよ」


 「ええ、わかってますわ」


 俺はその様に調子よく返事をして勢いよく立ち上がると、食事が置かれているテーブルへと向かった。


 



 「ねー、お姉ちゃんって王女様なの?」


 「ん?」


 残飯処理の如く冷めてしまった料理の数々を食していた俺に話しかけてきたのはドレスを着た小学生ほどの金髪少女であった。


 「そ、そうですわよ。お嬢さんは?」


 「私はミーシャ。ミーシャ·バロウズ」


 「こんばんわミーシャちゃん。私はアキリア···っ、アキリアですわ」


 ちょっと王女の苗字が分からなかったので変な自己紹介になってしまった。


 恐らくはここに参加している誰かの子供なのであろうが、親の都合でこんな暇な空間に駆り出されている事を考えると可哀想でならないな。


 そんなことを考えながら、一通り自己紹介を終えた所で再び食べ物を選ぼうとした俺であったが、ミーシャは尚も興味津々に俺の方を凝視しているのに気が付く。


 く、食べずらい。


 「ミーシャちゃんも食べますか?この何かを何かで包焼いた何かが全品ですわよ」


 「え?いいの?」


 「もちろんですわ。残っても捨てられるだけでしょうからね」


 そしてミーシャにも同じ物を取ってやり、一緒に1口。


 「うん、美味しい」


 「それは良かったですわ」


 そうして少しの間、ミーシャと共に美味しそうな物を食べ漁っていく。


 そして十数分が経ち。


 「お姉ちゃんって神具使いなんだよね?」


 「···え、ええそうですわよ」


 ミーシャとの会話で出た彼女の不意な問に俺は一瞬だけ言葉を詰まらせる。


 それと言うのも俺は、アキリアが実は神具を使う事が出来ないのではないかと疑っていたからである。


 勘と言ってしまってはそれまでだが、少なくともジイヤ達が俺に傭兵を(けしか)けた時、向こうには俺が返納機の発動下でも神具が使えるという情報は無かっただろう。


 そしてこれも勘だが、パーティー前半の俺のふざけた態度に対する反応からして、少なくともジイヤは返納機を持った傭兵を異国の神具使いの女の子にぶつける様な悪人では無い様に思える。


 と考えると小型の返納機を持っている事を知らずに俺に傭兵をぶつけたのではないかという線が1番妥当だ。

 

 更にそこまで全てあっているとして、何故そんな事をしたのか考えるとやはり影武者をお願いすら前に俺の力を見てみたかったと言うのがありそうである。


 だがしかし、それは逆に考えれば王女では小型の返納機が無かったとしてもあの状況に対応出来なかったと捉えることも出来る。


 ···と、これらは今の段階では全て仮説に過ぎないが、この線から辿って行き形勢逆転する糸口にしようと俺は考えていた。


 「お姉ちゃん···お姉ちゃん!」


 「は、はいはい何でしょうか?」


 「急に考え事してどうしたの?」


 「い、いえいえなんでもありませんわ」


 「ふーん、まあいいや」


 「もういいんですの?」


 振り返り歩き出したミーシャに俺は声を掛ける。


 「うん、もう満足したよ。······あ、そうそう、お姉ちゃんの事は"嘘つきだけど優しかった"って伝えとくね」


 「え?どういう?」


 と、引き留めようとするがミーシャはそれを聞くことなく、どんどんと歩いていってしまい、進行方向にいた40代ほどの美人な女性の元へと合流して行き、そのままこのパーティー会場を退出する。


 「な、なんなんだ一体」


 突然の事に驚き俺は硬直しながら、しばしミーシャ達が退出したドアを眺めていた。

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