人身御供とテロリスト 3
全く、えらく時間を取られてしまったものだ。
警察が来てから俺は事情聴取などで1時間ほども拘束されてしまっていた。
しかし、その間知る事が出来た情報もあり、傭兵達はこのゲームセンターに乗り込む前に監視カメラの機能を停止させていたらしく、騎士がゲームセンターから出ていった事などのこちらにとっても不利な証拠となる映像は残っていなかった。
またこの傭兵達はメリヴァ王国の者であったようで、自国に居る時よりも警備が手薄になっているであろうこのタイミングで王女を狙う魂胆だったらしい。
しかし、そこに退屈な業務を抜け出してお忍びでゲームセンターに訪れた王女様感がある服装の俺が見つかった事で今回の事件が起こったという事であった。
「ああ、すみませんが、この事件に九條学園の生徒が関わっていたという事は伏せて貰えますか?」
ほぼ全ての事情聴取が終わったっぽいタイミングで話を切りだす俺。
「え、どうしてです?きっと感謝状が贈られると思いますよ?」
「いや、そんなんいらねーし···」
「はい?」
「い、いえいえ、なんでもありませんわ。しかしですね。私がこの方達に狙われた理由を考えると、この事は伏せた方が良いと思われますわ。だって、今、来日中の王女にそっくりな学生が王女と間違われて命を狙われたなんてあまりいいニュースではないでしょう?」
恐らく今ここに来ている警察の中では一番偉い人間であろう3、40代くらいの男を唆す。
しかし。
「た、確かに···で、では一応上司にその旨も伝えて意見を聞いてから···」
と警官の男はそんな真っ当な事を言い出してしまう。
ちっ、仕方ねーな。
俺は警官が喋り終わる前に彼の手を両手でしっかりと握り、真っ直ぐに相手の目を見る。
「いたずらにこの事実を知る人間を増やしてもただ世間に知られてしまうリスクが増大するだけですわ。それよりも今必要なのは現場の英断です。貴方はただ私の身元は伏せて"通りすがりの神具使いが彼らを拘束した、正体を聞く前にどこかへ行ってしまった"とだけ上司に伝えて下されば全て丸く収まりますわ」
「な、なるほど」
「ここでその判断ができれば貴方はきっと英雄になれますわ。少なくとも私の中では···ね?」
首を傾げ、微笑みながらそう言うと俺は直ぐに振り返り、早く立ち去りたい気持ちを抑えて、出来るだけゆっくりと余裕がある感じを装いながら去っていった。
「おつかれ」
「おお、騎士か」
ゲームセンターを出てしばらく歩いた所で先程別れた騎士と再び合流し、少しの間人通りの多い道を歩く。
それから監視カメラが作動していなかったことや、一応、警察官には俺が居なかったことにしてくれと頼んだ事を話した。
「まあメリヴァ王国との関係を考えても、この事は世間的には伏せた方がいいだろうからな。ましてや狙われた張本人が名前を出さないでくれって言っているんだ、例えその警察官が上司に報告したとしても公になる事は恐らく無いだろうさ」
「正直俺としてはその"上司に報告"ってのもやめてほしいんだがな。···ただ普通に考えたら王女様にはそういう事があったと伝えて注意喚起すべきだし···あとは俺の女としての魅力が勝つか、アイツの自己保身力が勝つかだな」
「そうだな······。っていや、女としての魅力っていったい何したんだよ」
「は?フェ○チオだよ。フェ○チオ。それしかねーだろ」
「っ!?ちょ、お前···」
「いや冗談だわ。当たり前だろ」
「···いやでもお前ならやりかねないしな」
「普通に失礼な奴だな」
冗談を間に受けてしまっている騎士に軽く怒りながらも普段の行いを軽く反省する俺。
そして話を切替える為、騎士の肩を軽く叩き、ちょうど向かっている方向にあったカラオケの看板を指さす。
「······ってか、ほらまだ時間あるし、カラオケでも行こうぜ」
現在の時刻は3時半過ぎ頃。
王女関連の事は今考えても始まらないと俺はそう割り切って、残り少なくなった休日を楽しむ為に気持ちを切り替えた。
今回の章では外国の人と普通に会話するシーンが出ますが、"なんで言葉が通じてるの?"っていうツッコミは無しでお願いします。
物語の展開重視で行きますのでよろしくですorz




