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吉野宮暁良と隠された扉 12

 そして時が経ち、数日後の週末の夜。


 すっかり元気になった遼、そして騎士と俺で学生寮の1202号室に集まり恒例となりつつある宴が催されていた。


 結局、あの後、遼や大野木さんにもあの扉を事を話し、後日遼と2人で調べに行き、取り敢えず床下収納の床板を外す所まではしてみたが結局何も出る事はなく、その下にはただただ土があっただけであった。


 桐原先生が突然現れた時は何かあると確信したのだが、どうやら俺の早とちりだった様であった。


 だが、それにより大野木さんは噂の件に関する捜索を止める事を決めてくれた様で、これで遼は晴れて禍津解錠の訓練に集中出来るようになった。


 最初は俺から噂の捜査をしようと誘ってしまったが、今はそれが中止になりほっとした気持ちでいる。


 ···。


 しかし、やはり気がかりなことはあった。


 そう、それは調査ノートの存在である。


 「それにしてもこれは何だったんだろうな?もう地中深くに埋まっているのか、それともとっくの昔に解決した問題なのか···」


 俺は徐ろに自分の机の中にあった木戸川鶴子の調査ノートを取り出す。


 「何だそれは?」


 「ああ、そうか騎士は知らないのか。ほら、この前学園の裏掲示板に変な都市伝説みたいなのが書かれてただろ?最初は調べる気は無かったんだが、こんなのを学園の図書館で見つけてしまってさ、放課後や夜に学園中を調べてたんだよ」


 「ほう···」


 騎士に調査ノートを手渡しつつ説明すると、ノートを受け取った騎士はそれを数ページくらいペラペラとめくる。


 「これは···」


 「な?すげえだろ?」


 「確かにすごいな。よく出来きている」


 「??···よく出来てる?」


 「いや詳しく調べてみないと分からないが、これは上手く昔に書かれたように偽装したもだろう。恐らく比較的最近に書かれたんじゃないか?」


 「えっ?ちょ、どういう事」


 何だか今までの努力が水泡に帰そうとしていて焦る俺、そして俺と顔を合わせて苦笑いを浮かべる遼。


 騎士はさらにそれからノートのページをめくっていき、最後の方のページでなにか異変に気付く。


 そして1枚だと思われていたページの間に爪を入れ、剥がすとパリパリと気持ちのいい音が鳴り響き、ページは2枚に分かれ新しく2ページ分文章が現れる。


 そこには"あとがき"とあり、今までとは違う丸文字でこれの正体についてが語られていた。


 


 あとがき。


 一体これを読んだ人の何人目が、この後書きに辿り着いたのでしょうか。


 個人的には5、6人は騙されていて欲しいなと考えつつ、今この後書きを書いているところです。


 我らが文芸部の最後の卒業制作(いたずら)はいかがだったでしょうか?


 ···ああ、もうお分かりだとは思いますが、この作品は全てフィクションです。実在の人物や団体などとは全く関係ありません。


 これは過去の九條学園を舞台に起こった架空の事件を調べる木戸川鶴子という架空の人物視点の調査ノートという体で作られた文学作品です。


 大昔の事件が題材という事で紙をあえて日焼けさせたり、少し水に濡らしたりと色々やっていい感じの劣化具合を出すのがとても大変でした。


 でもそんな苦労して作ったこの作品、実は"九條学園の品位を損なう"みたいな事を言われて計画の段階で先生に止められてたんですよね。


 ···まあ無視してやっちゃいましたけど。


 なので、この作品はどうせ卒業制作としては認められないだろうしって事で、話し合いの結果、図書館にでも放り込んでおこうってことになりました。


 まあ何よりそっちの方が面白そうですし、結果オーライという事で一つ。

 

 最後に総評としては、かなりのクオリティの物が作れたのではないかと個人的には考えています。


 また部員達と試行錯誤して一つの作品を作り上げるという行為は月並みな感想ではありますが"私ら青春してるなー"って感じでシンプルに楽しかったですね。


 なので、これを見つけた人にもそんな青春が訪れる事を願っているー、···みたいに終わればいい感じの後書きなんですかね?


 普段は後書きとかあまり読まないので分からないですが、この辺が良きところではないでしょうか。


 ああ、あと、もしこの作品が何か迷惑をかけてしまっていたら申し訳ありません、と先に謝っておきます。まあ責任は取りませんがね。


 それではどうぞ御機嫌よう。未来の貴女。


 




 「···」


 「「······」」


 「え?何これどういう事?意味分からないんだけど」

  

 「いや、見たままだろ。ここには2012年って書いてあるしな」


 騎士の指さしたあとがきの更に下の方には部員と思わしき人の名前と、制作日が記されていてそれを見ると約7年前の物である事が分かってしまった。


 「つまり?」


 「骨折り損のくたびれ儲けって事だな」


 「マジかーー」


 笑いを堪え煽ってくる騎士とショックでベッドへと倒れ込む俺。


 くそ、本当ならこんなのビリビリに破ってやりたい所だが、クオリティが高いのは認めざるを得ないし、何だか勿体ない気がしてしまう。


 俺は7年程前の文芸部の卒業制作であったそれの表紙を寝転がった状態で眺め、ため息をもらす。


 「はあ···」


 まあいいか、最後は変な感じになってしまったが、全体的にはエキサイティングだったと言うのも事実だしな。


 ···しかたない。


 「よし、飲むぞ!!」


 俺は少々ヤケになって自分のコップに注がれていたコーラを一気飲みする。


 まあたまにはこういうのもいいだろう。


 「今夜は飲み明かすからな!!!寝かせねーぞ」


 1202号室に俺の声が響き渡る。そして、この日の宴は翌日の早朝くらいまで続いたのだった。

微妙な終わり方でごめんなさい。後々の展開的に大事な話なのでどうかお許しを。

あと散々出している禍津解錠ですが、次は全く違う話をやります。まだ回収しません、そっちもごめんなさい。


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