吉野宮暁良と隠された扉 8
数日が経ち、俺と遼にリリネ、また1組の姉小路さん、黒木さん、本庄さんなどを含めた数名の生徒が桐原先生によって呼び出され"禍津解錠"へ参加するか否かを問われていた。
結果として、集められた中のごく少人数は辞退をしたが、それ以外のほぼ全員が進んで参加を表明する形となった。
そんな事があった日の放課後、明日からはほぼ毎日訓練が入ってしまうため、今日以降は捜索が難しくなってしまうという状況で俺はワイヤレスのイヤホンを耳につけ、遼と通話をしながら自分の担当の場所を捜索していた。
「探していないところは後1/3って所か、きびしいな」
「ああ、それに後半は結構雑に探してるから見落としがあるかもしれないしな」
「確かに···それに扉の存在自体が俺の思い違いで元から何も無い可能性もあるぞ。···あと全部探し終えて見つからなくてもそれがただ見落としてるのか、元々存在しないのか区別もつかないからな。あー、こういうのなんて言うんだっけ?」
「悪魔の証明な。···どうしたものか」
「···」
それから数秒間の沈黙が訪れる。
そして俺は遼にある提案をもちかける。
「なあこの捜索なんだが一旦休止しないか?ほら、禍津解錠の訓練もあるしさ。寧ろ警戒が強まっている今より禍津解錠が来た後の1、2ヶ月後の方が探し易くもなっているかもだろ?」
元々俺から遼を誘った立場のためこの提案は少し忍びなかったが、まあ遼もそこまで乗り気という感じでもなかったし少し悪態をつかれるくらいだろう。
俺はそんな考えで数秒間、遼の返事を待つ。
だが。
「そうか仕方ない。じゃあ俺1人で続けるよ」
「へ?」
遼の返答が思っていた反応と違い、少し困惑する俺。
「え、いやお前も一旦やめてさ···」
「いやいい。別に訓練の合間とか終わった後とかでも続けられるだろ」
「まあ、そうだけどそれって結構辛いんじゃね?てか訓練終わった後なんてヘトヘトだろ」
「それでも別にいいだろ···」
「えっ、だってお前別に乗り気じゃなかったじゃん?急にどうしたんだよ」
「···別に、じゃあ俺、捜索に集中したいから」
ガチャ···ツー、ツー。
少し機嫌が悪そうな様子の遼は最後にそう言うと電話を切ってしまう。
えっ、···なにか怒らせるようなこと言ったか俺?それとも優柔不断なのが気に入らなかったのか?
···。
·······。
ぐっ、ダメだ。手伝う方向で考えたてみたが、いくら考えても放課後に訓練をした後や訓練の休憩時間中にも捜索を続けるのは体力的に厳しい。
せいぜい訓練が無い日に手伝うくらいが関の山だ。
それにしても、なぜ遼はここまでこの捜索に必死になりだしたんだ?
謎だ。よく分からん。
···。
と、そんな事を考えながら扉を探していたため、捜索に身が入らない俺だったが何とか今日のノルマを終わらせて寮に戻った。
そして遼との微妙な距離感が続く中、その翌日の放課後から禍津解錠に向けての訓練が始まった。
訓練用のグラウンドにて。
「ほら貴女たち!個人の勝手な感情ではなくチームワークを大切にして、仲間がピンチの時はお互いにしフォローしあって下さい、それが犠牲者を出さない事が最優先の九條学園の方針ですよ」
訓練が始まってから数日が経ち、"今日は実戦訓練として私が相手になる"などと言いだした生徒会副会長、来島咲枝は自身の鞭型の神具、女王と盾あるいは剣を地面に叩きつけながら叫ぶ。
そして、それにより神具の能力で操っていた15m程もある、いわゆるゴーレムといった感じのマガツモノ、ケンロウガジョウは野太い声を上げながら俺を含めた10名ほどの1年生に殴り掛かる。
「ちっ、さっきから倒しても倒しても復活されてしまって、全然ダメージが通ってる感じがしませんわ。なにか対策は無いんですの?」
敵の拳を二刀流でなんとか受け止めつつ、他の人に尋ねるが、中々返事が来ない。
そして待つこと数秒、その理由をリリネが口にする。
「ケンロウガジョウは本当は胸の部分に宝石みたいのが付いてて弱点剥き出しだから、力は強いけど倒すのは苦じゃないのよ。でもこいつにはこれがないわ」
「なんですって」
俺はそれを聞き驚いたような反応をするが、思い当たる節はしっかりとあり、来島先輩の方を睨む。
それは入学式の時の巨大なムカデのマガツモノ、ダイダラカッチュウと戦った時だった。
遼はその時戦ったダイダラカッチュウは普通よりも強くなっていると言っていた。
そしてその理由が今になりようやく明らかとなった。
恐らく入学式に戦ったダイダラカッチュウは来島先輩が操っていたものだったのだ。
またそれと同時に彼女の能力がマガツモノを操りそいつらを強化する事である事も推測できた。つまりこの目の前のマガツモノも強化され、弱点が剥き出しの状態では無くなっているという事になる。
だがそうと分かればやる事は簡単だ。
「あいつは来島先輩の能力で強化され、弱点が隠されてしまっている可能性が高いですわ。なのでチームに分かれ、それぞれ敵の部位を振り分けて宝石を探すという作戦をとりましょう。私は左手と左足を担当しますわ」
「「了解!」」
俺達は瞬時に数個のチームに分かれ、お互いをフォローしつつ声を掛け合い宝石を捜索する部位を決め、マガツモノに攻撃を仕掛けた。




