馬鹿と天才 13
その斬撃により敵の首は跳ね飛び、それから数秒後にはマガツモノの形は崩れ落ちて跡形もなくなった。
はあ、疲れた。
俺はゆっくりとした足取りでガキ共のいる方へと歩き、川から上がる。
うぇ、身体中びしょ濡れじゃねーか。
ここからまた山を下りなくちゃいけねーのによ。
俺はそんな事を考えてため息をもらす。
すると。
「すげえよ。ねーちゃん、本当に優秀な御子だったんだな!」
とガキ共が俺の周りに集まって来る。
「当たり前じゃねーか。お前らもいいガッツだったぞ。······だが一応」
俺は拳を握り軽く5人の頭を小突く。
「痛っ、なにすんだよ」
「一応年上としては危険な事しでかしたガキどもにお灸を据えなくちゃいけないからな」
「···」
俺の言葉に少しだけ落ち込んだ様子のガキ共。
···はあ、仕方ねーな。
「まあ、あれだ。俺個人としてはお前らみたいなやつの方が好きだけどな」
俺はそう言って笑いかけると、ガキ共に背を向けてアスレチックがある方向へと歩いていく。
それからほんの少し遅れて、高橋達はお互いに顔を見合わせて満足そうに笑うと俺の後に着いてくる。
「ああ、あとここでマガツモノに会ったことは誰にも言うなよ」
「え?なんで?これは報告した方がいいんじゃねーの?」
「は?いやだって俺、今日は神具が使えない日だって嘘ついてここに来てんだもん。その嘘が学園にバレたらポイント下がるだろ」
「え〜、まじかよこの人···」
俺の言葉に高橋達は若干引き気味であったが、それから数日間、俺の元に学園からの呼び出しや、当時の状況の確認などが来なかったため、どうやら高橋達は約束を守ってくれた様であった。
そして、それから30分弱は子供らしくアスレチックで鬼ごっこ等の遊びをして過ごし、その後クタクタになりながらも何とか山を下りて、今回のボランティアは終了となった。
それから数日後、俺は騎士から誰もいない教室に呼び出されていた。
「な、なんですの?淀川先生?」
「この前あった付き添いのボランティアの件で向こうの先生から言伝があってな」
「言伝ですか?」
なんだ一体、まさかあいつらチクリやがったんじゃねーだろうな。
くそ、数日間何もなかったから信用していたのに。
「な、なんですの?」
「いや、大した事じゃない。···なんでも、少し素行に問題があった生徒の態度があの遠足以降に改善されたという事でな。で、それがどうやら君の影響らしいと言うことで感謝を伝えたいとの事だった」
素行に問題がある生徒とは多分高橋達の事だろう。
まあとにかく神具の件がバレたとかじゃなくて良かった。
「向こうも余程嬉しかったのか、言伝と一緒にその内の1人が描いた課題の絵もコピーして送って来たよ。ほら」
そう言うと、騎士は俺にA4サイズの紙を手渡す。
ふむ、どれどれ。
そこには俺と思われる人物を含めた数名がアスレチックで遊んでいる様子が中々丁寧に描かれていた。
そして、その絵の氏名を見ると高橋の名前が書かれてある事に気が付く。
へー、アイツあれから描き直したのか。
俺は少しだけほっこりとした気持ちになりながらその絵をしばらく眺める。
「これ貰っても大丈夫ですの?」
「ああ、いいぞ」
俺は騎士に確認を取り、了承を得ると小さく笑い、再びその絵に視線を下ろす。
そしてそれから数秒後。
「なあ、1つ聞いてもいいか?」
と騎士が徐に口を開く。
「なんですの?」
絵を見ながら空返事でそう返す俺。
だがそれから騎士は何も喋らずに更に数秒間が過ぎ、それを疑問に思った俺が顔をゆっくりと上げて騎士の方を見る。
するとそこでようやく騎士は喋り始めた。
「その絵の君は何故、神具を持っているんだ?」
···。
······。
「えっ?」




