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馬鹿と天才 9

 「到着ですわね」


 頂上まで辿り着いた俺は騎士を下ろし、歓喜の声をあげる。


 流石に騎士を背負いながらの登山は疲れたが何とかやりきってやった。


 「何か言うことはありませんの?」


 「···ん、感謝する」


 「くす、まあ、それで勘弁してやりますわ」


 そんな感じに騎士とのやり取りを終えた俺はこの辺りの地図が書かれた看板の前まで行く。


 それを見るとここから少し降りた所にはアスレチックの様な遊び場があったり川が流れていたりなど子供の遠足には最適と言える場所であるような感じがした。


 それから景色のいい所に移動した俺はそこから下を見下ろしながら深呼吸をしてみる。


 あー、本当にいい所だなー。


 とそのまま数十秒何も考えずに、ただぼーっと景色を眺めていると、いつの間にか小学生達が先生の指示を受けて再び、体育座りで整列している事に気がつく。


 そのため一応、俺も小学生達の最後尾まで行って先生の話に耳を傾けた。


 「はいはい静かに、···今から3時間、だいたい14時くらいまでは自由時間です。その間にお弁当とおやつを各自好きなお友達と済ませて、みんなに出したこの遠足で見た風景をスケッチするという課題を下書きまで終わらせてください。それで余った時間はアスレチックとかで遊んだりして大丈夫です。ああ、ただ川の中に入るのは危険なので絶対にやめましょうね。わかりましたか?」


 「「はい」」


 「では14時にまたここに集合してください。解散」


 先生の合図で子供たちは一斉に立ち上がる、だが、まだ昼ご飯を食べるには少しだけ早いと言うこともあり、各々好きな者同士で集まり自分達がスケッチしたいロケーションを探して散らばっていった。


 「さ、じゃあ俺はガキどものスケッチを覗いて回るとでもするか」


 特にそうしてくれと先生から指示を出されて訳では無いが、こういう時は流れでそうする気がして俺もゆっくりと立ち上がる。


 そして、それから約1時間くらい色々な所を回って、子供達の絵にいちゃもんを···では無くアドバイスをして、誘われるがままに子供達と一緒に昼食をとった。




 「ふう」


 現在の時刻は12時30分。昼食を食べ終わり、子供達は絵の続きに取り掛かっている者と絵が描き終わり遊び始めている者で二分されていた。


 さ、腹ごなしにまた歩き回るか···。


 俺はゆっくり立ち上がりあてもなく適当に歩き出す。


 そして、アスレチックがある方から離れ、少し人気(ひとけ)の少ない所までやって来る。すると。


 「ここ遠近感がおかしいぞ、実際にはだいたい同じ大きさの木だがこの場所から見ると左側の木の方が近くにある。すると遠近法で左の方が大きくなる筈だ。あと俺はあまり絵には詳しくないがこう言うのは遠くのものから描いていった方がいいらしいぞ」


 騎士が、先程怪我をした時に心配して待っていた子供と一緒にベンチに座り、絵についてアドバイスをしている姿を見つける。


 さらに騎士の横にはゴミ袋と化したコンビニの袋が置かれていて、その事から一緒に食事を取っていた事が伺えた。


 「なんなんよあいつ、意外といい所もあるんじゃない」


 とふざけて呟いてみるが、正直に言ってマジで感心はした。


 さっき一瞬会っただけだが、あの子は雰囲気的にクラスで孤立していそうな感じがしたからな。


 それに気づいて気を使ったか、あるいは騎士自身も過去に色々とありそうな性格と経歴のため自分と重なったのか。


 まあ、どちらにせよいい事なのは変わりがない。ここは変にちょっかいを掛ける事はしない方がいいだろ。


 俺はそう考え、ゆっくりとその場を立ち去り、さらに人気の無い所へと入っていった。

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