馬鹿と天才 7
翌日。
「で、どうして淀川先生がいるんですの?」
「桐原先生にこっちについて行って欲しいと頼まれていてな」
「へ、へぇー。子供たちの監視をする私達の監視とは本末転倒もいい所ですわね」
「お前もそう思うか。意見があったな」
昨日ついてしまった嘘のせいで俺は近くの小学校の山登りの付き添いを頼まれてしまっていた。
そして、ここは山道に入る前の駐車場で俺の目の前には100人前後の子供たちが先生の話を聴きながら体育座りで座っていて、俺と騎士、それに返納日によって任務に付けない九條学園の生徒5人くらいが話している先生の横で並んで立ち、紹介されるのを待っている状態であった。
「·······というわけで、こちらの方々があなた達の登山をサポートしてくれる九條学園の生徒さん達です。···どなたか1人でいいのこちらに来て少し話してくださいませんか?」
先生の振りを受けて俺達は顔を見合わせる。
こういう時は騎士が行くべきであろうが何故か、そこにいた九條学園の者達は一斉に俺の方を見てくる。
「君が行ったらどうだ?こういうの好きそうだろ?」
この野郎。面倒事を押し付けやがった。俺子供とか好きじゃねーんだよな。
···はあ。
まあ変な空気になっても良くないか、と俺は諦めながら仕方なく、先生の元まで行く。
「皆さんおはようございますわ」
「「おはようございます」」
俺の挨拶に子供達は一斉に返事を返してくる。
なんだ可愛いところあるじゃねーか。見たところ高学年ぽいしクソガキばっかりかと思ってたわ。
「こほん、私は吉野宮暁良と申します。今日は皆さんの遠足に同行出来てとても光栄に思いますわ。えー、今回の登山のように学年の皆で同じ試練に挑み達成するという成功体験は、例え記憶からは消えたとしても必ずや、皆さんの人生における得難い経験として身になることと思いますわ。また昨今はテレビゲームなどの家で遊ぶものが潤沢に存在してしまう影響で自然と触れ合う機会なども極端に減っていることで···」
「あ、あのすみません。もうちょっと砕けた感じで···」
「あ、ああ申し訳ありませんわ」
そうか、まあ子供相手だからな···。
俺は反省して仕切り直そうと咳払いを入れ、再び喋り始めようとする。
がその時。
「暁良って男みてーな名前だな」
「つか、実は男なんじゃね」
ケラケラケラ。
と子供のノリというべきか悪ガキ2人が突然そんな事を言い出し、それに釣られてその周囲の数名の男子が笑う。
普段ならこんな子供の戯言など聞き流すがその内容と騎士に疑われているこのタイミングでそんな事をほざいた事にマジで〇意が湧いてくる。
「こら高橋くん、吉田くん失礼なこと言うんじゃありません!!すみません吉野宮さん」
「いえいえ、元気があって大変に宜しいですわね」
しかし、俺はその〇意を押し殺し、滅茶苦茶不自然な作り笑顔を浮かべ先生に答える。
その後、俺は無難な締めを言って挨拶を早々と終わらせた。
そして、子供達は班ごとに別れて、それぞれ1分位の感覚を開けながら山登りを始めた。




