馬鹿と天才 3
それから皆に声をかけ、数日後の放課後、淀川騎士を含め十数人くらいの数となった俺達はファミレスに集まっていた。
騎士を誘うのは一苦労ではあったが既に10人以上に声を掛けてしまったと言ったら渋々ながら了承を得ることが出来た。
座席は壁際の真ん中の席に騎士を座らせその両隣を俺と遼で囲むという完全なる接待スタイルで俺のもう片方の隣には姉小路さん、向かい側にリリネが座っていて、遼の隣には東雲さんが座っていた。
そして歓迎会が始まって30分程度が経過した現在。
「へぇー騎士先生は飛び級なされて、もう大学を卒業されているんですわね。すごいですわ。···ねぇ遼さん」
「うん、大したもん。ささ、これも食べて」
「そうですわ。今日は来られてないですが、お金は桐原先生から少しいただいて居ますので遠慮なく」
俺達はあまり積極的に喋らない騎士を盛り上げるべく、その他にもなんの研究をしているのか?とか、好みのタイプとかを聞いたりして場の空気を良くする様に心掛けながら歓迎会を進めていく。
だがしかし、俺達の努力も虚しく、騎士本人からはあまり楽しんでいなそうな雰囲気がひしひしと伝わって来ていた。
これはいかんな。
俺はこの状況をどうにかして思考を巡らせる。
そうだ。確かコイツは頭がいいらしいからそこを利用して煽てていこう。
「こほん、ではここで余興に1つ水平思考クイズを···私の出した問題に対して"はい"か"いいえ"で答えられる質問をして答えにたどり着いてくださいね。······AさんはBさんを殺害しようと考えていて、ついに誰にも犯人が分からないと思われる様な犯行の手口を思いつきました。ところがそれに気を良くしたAさんは飲みの席で酔った勢いに任せ、警察官である友人のCさんにその事について話してしまいました。しかしそれを聞いた警察官のCさんはAさんに拍手を贈り"それは素晴らしい"といいました。何故でしょうか?」
「「···」」
俺の問題を聞いてその場にいた者達が考え始める。
よしよし、水平思考クイズなら質問に対する俺の答え、つまりヒントが全員に平等に与えられる。
つまり地頭が他の人よりも数段上であろう騎士がおそらく1番に正解するはずだ。
「はいですにゃ!」
「はい、姉小路さん質問をどうぞですわ!」
「Aさんは推理物の小説家でBさんは小説の登場人物でずにゃ?うぐっ!!?」
姉小路さんの答えを聞いた俺は咄嗟に彼女の両頬を挟むようにして左手の親指とその他の指で摘む。
「正解ですわ。よくできましたわね」
「ぐぅう、らんれ正解したろに、こんらしうりにゃ?」
おっと、俺とした事がつい怒りにまさかて女の子にこんな事を。
···。
まあ、姉小路さんならいいか。
「じゃ、じゃあ次は、えーっと、えっと、ひ、人と被ったら負けゲームですわ。お題に対して人と被らないように一斉に回答を出してもしも被ってしまった人はガムシロ一気飲みですわ!!」
「「···」」
俺の提案に対して皆少し引いた様子でこちらを見てくる。
そして数秒の沈黙の後、助け舟を出すようにリリネが口を開く。
「なんか暁良、ノリが男子高校生みたいね」
「なっ、そ、そんな訳ありませんわ。私の中学校では滅茶苦茶流行ってましたわ。ただその時行ってたファミレスからは出禁をくらっていましたが」
「って、そんなの九條学園の生徒がやったらまずいでしょ。それも歓迎会よこれ」
「た、確かにそうですわね。では罰ゲームは無しで普通にやりましょう。じゃあお題は···平成ライダー···ではなく果物、果物ですわ!」
「それなら楽しそうね。···じゃあみんな決まった?」
リリネの問に皆が頷く。
そして。
「せーの」
「「□□□□!!」」
公共の場ということもあり少しボリュームを抑えつつも俺達は一切に思いついた果物の名前を言って一喜一憂した。
「ちょっと私は御手洗に」
「あっ、私も」
それからさらに30分ほど経ち、皆が楽しんで雑談している中で俺は遼に無言で合図を出して共に退席し、トイレに行くふりをして、一旦店の外へと出た。




