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馬鹿と天才 2

 淀川騎士に怪しまれつつもその日をなのとか乗り越えて、寮へと戻った俺は部屋着に着替えベットに横になりながら腕を組んで奴を陥れる作戦を考えていた。


 すると散らかりっぱなしの部屋の中で探し物している遼が声を掛けてくる。


 「何考えてるんだ?」


 「ん?どうにかして淀川騎士をこの学園から追い出せないかなと思ってな。このままだと正体がバレるのも時間の問題な気がする」


 「まあそれもこれもお前のせいなんだけどな」


 「いや分かってるから、今こうやって必死に考えてるんだろ」


 「へー、あんま必死感は伝わってこないけどな」


 遼はそう言うと探していた漫画雑誌を持って自身のベットに座り、それを読み始める。


 そしてそれからしばしの沈黙へと入り、数分が経った頃、俺は不意に口を開く。


 「やっぱりハニートラップを仕掛けるしかないか」


 ベットからはね起きた俺は遼の方をまじまじと数秒間見つめると、さらに言葉を付け足す。


 「ジャンケンで負けた方が···」


 「いや、やるならお前がやれよ」


 「えー、こういう時はジャンケンでしょ。俺達って一蓮托生なんだろ?」

 

 調子よくそんな事を言ってみると、遼は読んでいる漫画を閉じて俺の方を見つめ返して来る。


 「いやこういう時は適材適所だろ?お前の方が俺の何倍も美人なんだからお前がやるべきだぜ」


 「いやいや遼さん。遼さんの方が数倍可愛いじゃないっすか。ああいう奴は美人系よりも可愛い系の方が好みですって」


 「···」


 「···」


 俺と遼はお互いに引きつった笑顔でぎこちなく褒め合うが、数秒後、この空気の気色悪さに吐き気をもよおしてし黙り込む。


 「よし、わかった。じゃあ一旦歓迎会と評して奴を呼び出し、好みとかを聞き出して適任を決めるってのでどうだ?」


 「なるほどなー、うん、まあいいんだけど、それなら歓迎会って言って呼び出すけど、結局誰も行かないで精神的に追い詰めた方がよくね?」


 「···いやお前、それは流石に可哀想だろ···」


 「なんでだよ効果的な作戦だろ?それに淀川騎士は多分された事を他の人のチクるような奴では無いだろうし、きっと俺達の評価も下がらないぜ?」


 「いやでもそれは人の所業じゃねぇって」


 悪びれる様子なく首を傾げながらそんな事を言う遼に俺は恐怖を抱きながらも、その案に対して苦言を呈す。


 まあ普通に考えたら淀川騎士を学園から追い出そうとしている時点で遼の提案を悪く言う権利など無いが、それとこれとは俺の中で少しだけ違うのだ。


 ああ、五十歩百歩なのは分かっている。


 しかし俺は、"向こうは俺の事を疑って色々と調べ俺が男だと分かったら告発する、俺は俺でどうにかして相手の不祥事をでっち上げて、それをネタに揺すりこの学園から追い出す"というある意味でフェアな戦いを望んでいるんだ。

  

 いじめにも似た陰湿なやり方は俺の中で少しだけ違う気がする。


 もちろん不祥事をでっち上げて揺するってのは陰湿以外の何者でもないのだけれど、そこは"俺の中ではこうだ"と線引きがしっかりとなされているので他人にどう言われようと揺らぐことは無いのだ。


 「とにかくその案は無しだ。文句があるなら俺が1人で何とかするからお前はなにもしなくていい」


 「ああ、分かった分かった。なぜお前がやらかした事の尻拭いで俺が責められてるのかは分からないがな、この案は無しにしてやる。その代わりしっかりとした代案を考えろよ」


 「ああ、分かってるって」


 俺はほくそ笑みたがらそう言うと携帯のメモ画面を開いて作戦を立て始めた。


  


 そうして決まった作戦はこうだ。


 まず歓迎会を開いて、奴を(おだ)てまくる。そしてその中でお互いにアプローチをかけて奴の好みを把握してそれに当てはまる方が仕掛け人となってハニートラップを掛けて、ホテルなどに連れ込みもう片方はそれを撮影、最後にドッキリの種明かしとばかりにもう1人もそこに乗り込んでこれをバラされたく無かったら学園から去れと脅す。


 まあこんなところだ。


 「···」


 「···」


 「なあ聞いていいか暁良?」


 「なんだ?」


 「これ俺がさっき提案したのと陰湿さはさほど変わらんだろ」


 「ばかおめー、全然ちげぇからな。まずお前の提案だとあいつがこの件に関して自分が悪かったかもと思って塞ぎ込んじまったら、その後の人生にも影響を及ぼしちまうかもしれないだろ。その分こっちのパターンだと最終的に奴は俺達を憎みながら学園を出ていくことが出来る。まあ武士の情けってやつだな」

 

 「そ、そうか?···ま、まあいいや、作戦的には別に問題は無さそうだしな」


 「よし、そうと決まれば、クラスの奴とかに声をかけてくるわ」


 俺はそう言い残すと、ベットから跳ね起きて制服を着直すと飛び出すように部屋を後にした。

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