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馬鹿と天才 1

 キーンコーンカーンコーン。


 と授業を終える鐘の音が響き、その後のホームルームをこなした俺はリリネの机の前まで行き、その机に片腕をつく。


 「今日も依頼を受けに行きませんこと?」


 「え?今日もなの?」


 首を傾げながら尋ねる俺に対して、苦笑いで返してくるリリネ。


 今から数週間前に初任務をこなした俺たちには週に最大2回までマガツモノ討伐の依頼を受ける権利が与えられた。


 依頼は学園専用の携帯のアプリからでも受けることが出来るのだが、危険度Dなら1人、Cなら2人、Bの任務なら最低でも4人揃わないと受けられないという過保護なルールが設けられていて、尚且つ、受ける時は必ず先生から承認を受けならないという決まりになっていた。


 「最大2回までとは言え、そんなに任務受けてるのアンタだけよ。半分くらいはは月2の任務日だけしか任務も受けてないし」


 「いやいや、やはり市民の皆様に安心して暮らして頂く為に頑張らなくてはなりませんので」


 俺はそんな表向きの理由を恥ずかしげもなく言いながらリリネに向かって優しく微笑みかける。


 が、そんな仮面の奥の頭の中は任務達成時に得られる報酬の事でいっぱいであった。


 危険度が高い任務は多くの人数で報酬が山分けになってしまうとは言え、得られる報酬は低ランクの任務よりも高いため1人で任務をこなすよりも誰かを誘った方が効率がいいのだ。


 ああ、因みに任務日と言うのは月に2度設けられた学園の授業が休みになり全員が強制的に何かしらの任務につかなくてはならない日の事だ、つまり1ヶ月を4週間と換算すると月に最低2回、最高で10回の任務を受けられる計算になる。


 リリネを誘ったらあとは遼に声をかけて、4人目は東雲さんか姉小路さん辺りに声を掛ければすぐに揃うだろう。


 そんな魂胆を胸の内に忍ばせながら、リリネに向けて携帯の依頼受諾アプリの危険度Bの依頼のページを見せる。


 「これに行きませんこと?」


 「あー、でもごめん今日は却下で」

 

 「なんでですの!?」


 まさか、もう週に2回という制約を果たしてしまったのか、一体どこの女と!!


 「いやほらあれよあれ」


 「あれとは?」


 「いやだからあっちの日なの」


 「あっちの日?···ん?···あ、ああ、ああ!!申し訳ありませんわ。で、では私は違う方を誘ってみますので、お、お大事にですわ!」


 俺はリリネにお辞儀をして、そう言い残すと急いで教室を後にする。


 危なかった···。今のはセクハラ発言だったかもしれない。


 「はあ、今日はこのまま帰ろう」


 急に疲れてしまった俺はそう呟くと真っ直ぐに寮へと帰った。





 そして翌日。


 1限目の授業が始まり、桐原先生と共に俺らよりも2、3歳ほど年上くらいの若い男が教室に入ってきた。


 するとクラスの女子たちが男の整った容姿に対しての私語を始め、クラス全体がザワザワとしだす。


 「あー、お前ら静かにしろ。おい自己紹介しろ」


 「···淀川騎士(ないと)です。祖父の淀川武士の代わりに派遣されてきました。宜しくお願いします」


 そう言うと騎士はクールな表情で浅くお辞儀をする。


 ああ、そう言えば淀川先生は初任務の時に俺と電話していて腰をやっちまったっていってたな。


 と俺がそんな事を考えていると。


 「「きゃーーーー」」


 と黄色い声援がクラスの女子達から上がる。


 な、何だこの空気は?めっちゃ受け入れモードじゃん。俺がどれだけ苦労してここに座ってると思ってんだよ。


 それにこの声援を受けたこの男の態度も気に入らねー、なんだそのキャーキャー言い慣れすぎて飽き飽きしてるみたいなリアクションは。


 「あー、お前ら黙れー。···じゃあ淀川、挨拶代わりにお前の研究を見せてやってくれ」


 「はい」


 桐原先生の振りに答えて自身の荷物から何かを取り出す騎士。


 ···。


 ······。


 俺は決めたぞ。どんな手を使ってでもこいつをこの学園から追い出してやる。


 女子しか居ない学園に若い男が先生として赴任だと?


 エロゲかよ。ふざけやがって。


 と言うかそもそも女子校に先生とはいえ若い男が混ざるとか危険にも程がある。


 ここは俺が女子を代表して手を打たなければなるまい。


 ふふふ、この学園に足を踏み入れたこと死ぬ程後悔させてやるからな。


 そして俺は不敵な笑みを浮かべながら騎士の説明も聞かずにどのようにして陥れてやるか思考を巡らせる。


 やはり不祥事系がいいだろう。


 他の子を巻き込むのは危険だがら、俺か遼が体を張ってこいつに無実の罪を擦り付ける。


 まあイケメンに情けを掛けるのはどうかと思うが、せめてもの恩情としてここは公にするのではなくそれをネタに揺する方法を採用してやろう。


 くく、楽しくなってきたじゃないか。


 「□□□□けでこれは神具使いの女性刑務所などでも使われている。試しに神具を使ってみてくれ」


 俺が色々と考えている間に騎士の話は終わっていた。


 さあ、あとは実行を何時にするかだな。


 俺は周りから分からない程度に尚も笑みをもらしながら、何気なく神具を展開させる。


 「「······」」


 「?」


 何だか周りから視線を感じる?


 そう思った俺が周りを見渡すと、皆が唖然とした様子で俺の方を見ていて、遼だけは慌ててながら刀を鞘に収めている様なジェスチャーをしていた。


 ん?また俺、なんかしちまったか? 


 状況を把握出来なかった俺は取り敢えず遼の指示通りすぐ様、神具をしまう。


 するとそれを見計らって遼が俺の席の近くまで来た。


 「暁良だけ少し効くのが遅かったみたい。でもちゃんと神具は使えなくなったっぽい」


 遼の言葉を聞いて周りの人達はあらかた納得して俺から視線を外した。


 そしてその後、微妙な空気のまま時間が過ぎてその授業が終了すると、少しキレ気味の遼から誰も来なそうな教室に呼び出しをくらう。




 「あ、あの遼さん?何でしょうか?」


 「は?なんでしょうかじゃねーよ。お前なんであの状況で神具発動させてんだ」


 「いや、ちょっとよく説明聞いてなくて···」


 「馬鹿野郎!!あの淀川騎士とか言うやつが使ったのは"あっちの日"と同じ症状を引き起こす機械だよ。神具使いの女性刑務所でも使われてるって言ってただろ」


 「あ、その部分は何とか覚えてる。って言うかそんな機械倫理的に大丈夫なん??というかそれって何か意味あるか?」


 「ん?何言ってんだお前···。ってまさかお前あっちの日ってどんな意味か分かってねーのか?」

 

 「い、いやー、分かってるし、あれだろあんま口に出して言うのは(はばか)られるけど、あの女の子にある、あの、そのち、血が···」

  

 「は?馬鹿違げーよ。"あっちの日"って言ったら"返納日"の事に決まってんだろ!!月に1度、神具が使えなくなる日。それと同じ症状を起こさせる機械を使ってたのにお前は神具を使っちまったんだよ。どういう事か分かるか?」


 遼の言葉を聞き、俺は汗腺から汗が一気に吹き出してくるのを感じた。


 「知らないなら教えてやる。お前自身が返納日を知らなかった事で予想はついてると思うが、男の俺達には何故か返納日が無いんだよ」


 「···」


 「そして俺もあの時、神具を使おうと思えば使えたから、恐らくあの機械も俺達には効かないんだろうな」


 「······」    


 「あの状況、他の生徒達は騙せたかもしれないけど恐らくあの新任の奴は騙せないだろう」


 やべー。


 罪のない奴を陥れようとしたバチが当たったのか?


 俺は力なくフラフラとしながら、近くの椅子に腰掛ける。

 

 「お、おい暁良大丈夫か?」


 「□□□」


 「なんて?」


 「···いいだろう。こうなったらどちらが先に相手をこの学園から追い出す事が出来るかの勝負って事だな」


 俺は決意の表情を浮かべながら顔をあげるとここには居ない淀川騎士に対して敵意を剥き出しにした。

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