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初任務(仮) 13

 追跡から数分後。


 「くそ、見失っちまったか」

  

 追いかけていたフルマイミタマキドリを見失ってしまい、振りかえってもリリネが着いてきていないことに気づくと俺は立ち止まる。


 「まじか、どうしよう···」


 大声を出してリリネを呼ぶのは敵のマガツモノや操られた村人などに自分の位置を教える行為になるので却下だし、参ったな···。


 一旦来た道を引き返すべきか、それとも先に進むべきか、ここに留まるべきか。


 俺は顎に手を当てて少しの時間考える。


 ···。

 

 よし!


 俺は考えた結果、先に進む事に決め、一歩踏み出す。


 すると。


 「ってあれ?暁良か、ビビって損したわ。···で、どうしたんだ?こんな所で立ち止まって」


 と森の奥から小走りで遼が姿を現す。


 「フルマイミタマキドリを見つけたんだが見失っちまってな。で、そっちは?ってか東雲さんはどうした?」


 「村人から逃げてる時にはぐれちまってな。まあその前から別行動のがいいんじゃないかって話してたからきっと大丈夫だろうと思うが···。そっちも二条院さんの姿が見えないけどはぐれた感じか?」


 「ああ、だけどもうリリネの事は心配いらない。1人でも大丈夫だ」


 「そうか、それは何よりだな。さあ、じゃあ早い所マガツモノをやっつけちまおうぜ。さすがにまだこの辺に潜んでるだろ」


 「ん?」


 おかしい···。なにかがおかしい。

  

 この広い森の中で偶然にもばったりと遼に巡り会うものか?


 それにこいつ、俺がリリネをリリネと呼んでいる事はスルーなのか?


 てっきり俺は"お前なに俺に先んじて関係進めてんだよ"みたいな事を言ってくる事を覚悟していたんだが。


 「どうした?」


 「いや俺が二条院さんの事をリリネと呼んだのになんも言わないんだな、と思ってな」


 「ああ、それか。確かにちょっと驚いたが別に口に出すほどの事じゃねーだろ。それに二条院さんはずっとファーストネームで呼んでほしそうだったしな。今回、それが二条院さんを御子として立ち直らせるのに、重要な要因だったんだろ?」


 「ま、まあな」


 随分と察しと物分りがいいな。


 ···。


 こいつ本当に遼だよな?


 姿形(すがたかたち)は間違いなく遼そのものだ。だがしかし何か少しだけ違うような気がしてならない。


 それにマガツモノが出現するよりもずっと前から狐は変化(へんげ)をして人を化かしがちだと伝承にもある。


 ましてやマガツモノである奴が人の姿に化ける事が出来ないはずがない。


 だが、この程度の引っ掛かりでこいつを斬ってしまって、もし本物だった場合は目も当てられない。


 ならば、こういう状況での常套手段に打って出るしかない。


 沢山質問をしてこいつの9本もある尻尾を掴んでやる。


 「なあ遼、俺たちってもう出会って長いけどどれくらいだっけ?」


 「は?そんな長くねーだろ。1ヶ月とちょっとくらいじゃね?」


 「···」


 あっている。くそ、次だ。


 「じゃあちょっと神具を出してもらっていいか?」


 「えっ?まあいいけど。神具展開、参丁参段散弾銃トリニティ・ケルベロス


 俺の申し出に答えすぐ様、神具を召喚してみせる遼。


 しかし、今までハッキリと見た事が無かったので分からないが、偽物の遼の召喚した神具は本人同様になにか違う様な気がしてならなかった。


 一体どうやったら確たる証拠を掴める?


 「じゃあ次の質問···」


 「は?まあいいけどさ。まさか俺が偽物だとか疑ってる?」


 「い、いや、そんな事は。念の為だよ」


 「ふーん、まあいいけどな。なんでも答えてやるから質問して来いよ」


 遼は自信満々の様子で笑う。


 くそ、余程自信があるみたいだな。こうなったら。


 「じゃあ俺の生年月日と身長体重、あとは生まれ育った町を教えてくれ」


 「···まあいいや2003年11月3日生まれの身長164cm、55kgで生まれ育った町は○○○市だったけな〜」


 「ふっ」


 ついに尻尾を出した。どういう原理かは知らないがよく調べたものだな。


 俺は鞘に収まった状態の百騎一閃を召喚し、斬りあげる様にして偽物の遼に攻撃を仕掛ける。


 だが、偽物はそれを何とかかわして数歩後ろに下がる。


 「あぶな、何すんだ!」


 「お前が偽物だと確定したからな。俺はお前に出身地なんて話した事ねーよ」


 「···!?いや、たまたまお前の持ち物に書いてあったのを見ただけだよ。落ち着けって」


 「俺は落ち着いてるぜ?お前がさっきから不可解な事が多過ぎるんだよ」


 俺はそう言うと偽物に刀を向ける。


 「ちっ、それを言うならお前もさっきから変だぞ。お前こそ偽物なんじゃねーのか?」


 偽物はそう言い返して来て、同時に銃を俺に向けてくる。


 


 「ちょっとあんたら止めなさい!!」


 


 硬直状態の中、森の奥からリリネの声が響き、同時に東雲さんを引き連れたリリネが姿を現す。


 「ああリリネさん。丁度良いところにこの遼さんは偽物ですわ」


 「いやこの暁良が偽物」


 俺と偽遼の意見は平行線のままであった。


 こうなったらリリネに全権を委ねるしかない。大丈夫、リリネなら分かってくれる筈だ。


 そう思いながら俺はこちらへと近ずいてくるリリネに笑いかける。


 「この遼さんは私が教えた事が無い出身地も知っていました。どう言う原理かは分かりませんが偽物に違いありません」


 俺の前まで辿り着いたリリネを納得させようと遼を疑う証拠をあげる俺。


 すると、リリネは僅かに笑って首を傾げる。


 「きっとそれは何処かに書いてあったの見たんでしょうね。あと先に言っておくわ、ごめんなさい」


 「えっ?」



 パチンッ!!!



 「痛っ!?」


 リリネのビンタが俺の頬に当たって森の中に物凄い音が鳴り響く。


 「な、何をするんです!?」


 「ごめんなさい。でもスッキリしたんじゃない?」


 リリネの言葉を受け、俺は頬を撫でながら考える。


 すると、何故ここまで目の前の遼の事を(かたく)なに偽物であると思い込んだのか自分でも理解出来ない事に気が付く。


 「これはまさか」


 「ええ、多分洗脳ね。と言っても弱いもので少し疑心暗鬼にさせる程度なんだろうけど見事にやられたわね」


 そう言うとリリネは自身の神具でリリネが来た方角とは違う方向を指す。


 そこには物陰からこちらを観察しているフルマイミタマキドリの姿があり、そいつは自分の位置がバレている事に気が付くと一目散に逃げていく。


 「逃がさないわ。火人招来!」


 炎で出来た大男を自身の背後に出現させる技を使いながら、一気に敵との距離を詰めるリリネ。


 そして。


 「これで終わりよ!!」


 リリネがフルマイミタマキドリに斬り掛かろうとした瞬間。


 「コォー」


 「▲□▲▲▲!!?」


 偶然か必然か、逃げた方向でゆっくりと徘徊していたルロウゴウケツの斬撃によってフルマイミタマキドリは真っ二つに斬られそのまま光となって消え失せてしまう。


 そして。


 「シューーーッ」


 「!?」


 そのままルロウゴウケツはリリネに向かって刀を逆さに持ち、峰打ちの状態で構えた。


 「はーー、ふぅー」


 それを受けて、敵から少し距離を取ったリリネは一旦深呼吸をして呼吸を整える。


 そして。


 「はあああぁああ!!!」


 と気合いを入れる為に声を上げ、同時に神具の火力をさらに上昇させていく。


 「···シュォオオ!!」


 対するルロウゴウケツもリリネの姿と燃え上がる炎を数秒間眺めた後、峰打ちの状態で持っていた刀を通常の状態に持ち替えて正々堂々と真っ向勝負をする姿勢を示した。

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