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初任務(仮) 12

 「うら!!」


 ようやくフルマイミタマキドリが休んでいる場所までたどり着いた俺はいきなり敵に向かって不意打ちを仕掛け、斬り掛かる。


 だが敵もギリギリでそれに気づき、飛び上がる様にして俺の攻撃を避けた。


 「リリネさんお願いします!!」


 「···」

   

 敵の逃げた方向で待ち構えていたリリネは目を瞑り、自分に言い聞かせる様に何かを呟く。


 そして、カッと目を開けた。


 「ええ、任せて、火人(かじん)招来!」


 リリネが剣を構えるとその背後に3m程もある炎で出来た大男が召喚される。


 そして、そいつは自身の腰のあたりから、炎の剣を抜くとリリネと同じポーズで剣を構える。


 「リリネさん周りに気をつけてください」


 「ええ、そんなヘマしないわ。私の炎使(づか)いを舐めないで」


 リリネはそう言うとさらに火力を上げていくが、彼女の言う通り、巻き上がる炎は見事に周りの木々を避けるようにして燃え上がっていた。


 「はああああぁぁぁ!!!」


 そして、彼女が剣を振り下ろすと同時に背後の炎の男も敵に向かって剣を振るった。


 「○□▲○▲!?」


 その攻撃に対して、驚いた様な鳴き声で鳴いたフルマイミタマキドリは急ブレーキを掛けて、その後すぐに後方に向かってジャンプし、ギリギリでリリネの攻撃を交わす。


 「暁良!今よ!」


 「ええ、任せて下さい!」


 「▲□▲!!?」


 リリネの指示を受けて、俺は自分の方へと下がって来た敵に対して斬撃を放つ。


 が、しかし。


 グルルルッ。


 と剣を振るう瞬間、俺の腹が大きな音を立てて鳴り、剣を振るうスピードが遅くなってしまうと同時に、剣の軌道が僅かにズレる。


 そして結局の所、俺の斬撃は敵の身体を僅かに掠っただけで終わってしまった。

 

 「ちょっと暁良、どうしたの?まさか体調悪い?」


 「い、いえ、それはもうだいぶ良くなったのですが···」


 俺はそう呟き、自身の腹を撫でる。


 そう本当に腹痛の方は治りかけているのだ、だがしかし、違う問題が出てきてしまった。


 俺は朝から何も食べておらず、きっと俺の腹の中身は空っぽなのだ。


 そう、俺は腹が···減ったんだ。


 「○□▲○□!」


 「なにか仕掛けてくるわよ」


 敵は鳴き声と共に、なにやら技を発動させる。


 すると急に俺たちに向かって風が吹き、辺りはとてもいい匂いに包まれる。


 だかその匂いというのは花の匂いや香水の匂いなどの類いでは全く無かった。


 「この匂いはカレー?」


 「えっ?マルゲリータピザじゃない?」


 変な所で俺とリリネの意見が食い違う。どうやらこの技は対象の今欲しいているものの匂いを生み出すものらしい。


 「くっ···」


 俺は現状においてとても有効な攻撃を受けた事により、思わず下を向き、膝を付いてしまう。


 だがまずいと思い、直ぐに顔をあげる。

  

 すると。


 「なっ···これはなんですの」


 そこは俺が12歳くらいまで住んでいて、現在は斬像が待機しているだけの俺の実家のダイニングであり、外から差し込む光の具合から、今は日が沈むギリギリの夕暮れ時である事が分かった。


 そしてダイニングのテーブルにはカレーライスが3つ置かれていて、その周りの椅子には俺の母親と幼い頃の俺が座っていて何も言わずに優しく招き入れる様にこちらを見ていた。


 「母さん···」


 俺は不意にそう呟き、テーブルの前まで行って、スプーンとカレーライスを手に取る。


 とてもいい匂いだ。そしてすごく懐かしい。


 ···。


 ······。


 ·········。


 「いや、あぶな!?」


 俺が焦りながら、手に持ったカレーライスとスプーンを投げ捨てると、辺りの景色は元いた夜の森へと戻る。


 さらに正気に戻ってから、投げ捨てたカレーライスとスプーンを見るとカレーライスはそこら辺に生えているただの葉っぱであり、スプーンはただの石であった。


 いや、せめて、ちゃんとしたの用意しろよ。これ食べてアウトは納得いかねーぞ。


 と俺はそう思いながらも、すぐにハッとしてリリネを探すように辺りを見渡す。


 「リリネさん!しっかりしてください!」


 そしてすぐ様、彼女を見つけると声を掛けながら肩を揺すり、敵の幻を見せる技から覚まさせる。


 「あ、ああ、暁良ありがとう。危なかったわ」


 「ええ、エグいくらいの郷愁による強襲でしたわね。母親ががっつり存命じゃなかったら、一撃でしたわ」


 俺は小学校卒業と共に寮のある中学校に俺をぶち込んで海外に行った母親に皮肉じみた感謝を示しつつ笑う。


 そして、フルマイミタマキドリの方を見て刀を構えた。


 すると敵は回れ右で、再び逃亡を図り、俺も逃がすまいとリリネに先んじて追跡を開始する。


 「▽○▲▲□!」


 「もう同じ手は食いませんわ」


 追いかけっこの最中、また敵が匂いによる攻撃を仕掛けてきて、僅かに花のようないい匂いを感じたが、俺はすぐ様、刀で切り裂く様にしてそれを振り払って追跡を続行した。

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