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初任務(仮) 8

 「どうなってるんですの?」


 俺は急いで立ち上がると手で光の膜に軽く触れる。

 

 感触は非常に柔らかく思いっきり押し込むと、そこそこの反発力で返してくる。


 だが強く押しても、神具を召喚して軽く斬ってみても決して破れることはなかった。


 「確かルロウゴウケツにはこんな力なかったですよね」


 「と言うことは、私達が出会ったあの狐の能力?」


 東雲さんが桐原先生から貰った資料を見ながら呟くと遼もそれを覗き込んで阿呆みたいに首を傾げた。


 「本気で行けば破れるかもですが、一応先生に連絡しておきますか」


 俺は支給された携帯を取り出すと緊急の連絡先に電話をかける。


 するとワンコールですぐに電話が繋がった。


 「この番号は吉野宮たちの班か、どうした何かあったのか?」


 「え、ええ。ルロウゴウケツは取り逃がしてしまったのですがどうやら別のマガツモノが居るようで村の周りに結界?みたいのを張られてしまって出られなくなってしまいましたんですの。···本気で破ろうとすればいけると思うのですが、一応連絡して指示を仰ごうかと思った次第てす」


 「なるほどそういう事か。お前ら4人は無事なんだな?」


 「ええ、概ね大丈夫ですわ」


 「こほん、それは何よりだ。マガツモノの事なら私よりも淀川先生の方が詳しい。待っていろ今、電話を代わる」


 と桐原先生が保留ボタンを押してどこかで聞いたことがあるような有名な曲の音楽が流れ始める。


 「で、桐原先生は何て?」


 「取り敢えず淀川先生に代わるからそっちに聞いてくれってよ。あと口調はいつも通りだけどめっちゃ心配してたわ」


 耳打ちで話しかけてきた遼とそんな事を話しているとすぐに保留が解かれる。


 「もしもし?桐原先生から話は聞いたよ。今、君たちに渡したやつよりもっと詳しい資料を調べてるけどルロウゴウケツにはそんな能力は無いから、君たちが出会った奴の力って線が濃厚だね。どんなのだったの?」


 淀川先生は相変わらずの砕けた感じの喋り方で俺達に尋ねる。


 「はい、えーっと確か狐の様な形のマガツモノでしたわよね?」


 その質問に対して俺は遼に確認を取りながら、確かな情報を淀川先生に伝える。


 「結界みたいな物を張る狐のマガツモノか···ちょっと待ってね」


 淀川先生はそう言うと恐らく大きな本をパラパラと捲っている様な音が電話越しに聞こえる。


 「あった。ホウジョウミタマ。これかな?」


 「ホウジョウミタマですの?」


 「うん、ホウジョウミタマは危険度Dのマガツモノで無害みたいだね。ただこいつが結界を張る時は何かからその中の人を守るためらしいから壊さない方がいいのかもね」


 「えっ!?壊さないと出られないんですわよ?···ってあれ西岡さん?」


 俺がそう聞き返すのとほぼ同じくらいのタイミングで俺達が来た道から松明を持った人達が現れ、その先頭の西岡さんが1歩前に出る。


 「ああ、やっぱり出られんくなっておられますったか。この結界はこの地に住み着かれたホウジョウミタマ様がおら達を災いから守ってくださっとるんです。ですんで出来れば壊さんで頂けると助かります」


 西岡さんは優しい笑顔でそう言うと深々と頭を下げ、数秒後、頭をあげると続きを喋り始める。


 「もし宜しければ、村に泊まってってくだせえ。御馳走を用意しておもてなしさせて貰いますんで」

  

 うーん、そう言われてもな〜。


 俺は確認の為、淀川先生に再び尋ねる。


 「壊さないでくれって頼まれましたけど、どうするんですの?村に泊めてもらいますの?」


 「そうだねー。そっちは僕の一存じゃ決められないからねー。もう1回桐原先生に代わるよ。·····あっ、ああゴメン、ちょっと待ってちょっと待って···その狐の色って何色だった?」


 突然、焦った様子で質問してくる淀川先生。

 

 色?何故そんなことを聞く?···ま、まあいいか。


 「遼さん。貴方の会ったマガツモノは何色でしたか?」


 「えっ···?たしか···黒だったような」


 遼は東雲さんに確認を取りながら呟く。


 「黒···だそうですけど」


 「···うーん、まずいね」

  

 「な、何がまずいんですの?」


 俺は嫌な予感を感じつつ、恐る恐る尋ねる。


 「それは多分、ホウジョウミタマじゃなくて、それによく似たマガツモノのでフルマイミタマって奴かも···」


 「フルマイミタマ?···っ!?」


 ついその名前を口にしてしまった俺はハッとして咄嗟に口を塞ぐ。


 そして、村人の方を恐る恐る見る。


 「なにを仰っとるんです?この地に住まっとるのはホウジョウミタマ様ですよ?···ささ、早く電話を切って村に戻りましょう」


 そこにはさっきまでと同じ笑顔の村人達が居たが、目の錯覚か同じものとは決して思えなかった。


 「あっ、待って!」


 「あ、ああ、先生の勘違いでしたのね。寧ろ、そうであってくださいお願いします!!」


 「いや確か結界が張られて出られないって言ってたよね。それは多分フルマイミタマキドリだね」


 「どうでもいい情報ですわ!!」

 

 くそ!少し期待したが、全然状況が良くなってない。


 俺は苦笑いを浮かべながら西岡さん達に会釈し、電話を隠すように持って縮こまる。


 そして。


 「で、薄々気づいていますけど、そのフルマイミタマキドリの能力とはなんなんですの」


 と小声で淀川先生に尋ねる。


 「うーんと、色々あるみたいだけど1番はこれかな。···なんかフルマイミタマキドリのテリトリーでコイツらに出された食物を食べると操られてしまうらしいね。1食食べるとコイツとその眷族に攻撃出来なくなって、2食食べると体の一部が、3食食べると体の全体の自由が奪われて、4食食べると···心までも操られるらしいね」


 「は、ははは」


 あれ?そう言えば遼と東雲さんが昼の時になんか食べてなかったっけ?


 それにマガツモノと遭遇した時に何故か攻撃が当たらなかったとか言ってなかったっけ?


 「さあ、何をやっとるんです。早く村に戻りましょう」


 村人たちは全体的に1歩前に出ながらもはや恐怖でしかない笑みを俺達に向ける。


 「あ、あの〜」


 く、くそ、こうなったら。


 「皆さん逃げますわよ!!」


 俺がそう叫ぶと、俺達4人は一斉に山道を外れて森の奥へと走り出した。

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