エロ本奪還作戦 7
「フレイムボールⅠ」
俺達が巨大化したツヅリコジキの存在に唖然としていると、奴は大きく口を開け、炎を溜めると機械音にも似た声と共に火球を放ってくる。
「まじですの」
あれは正しく東雲さんの神具、1から学ぶ魔法の書のほとんど全ての初期魔法を使う事が出来るという能力による攻撃であった。
俺達はツヅリコジキが東雲さんの神具の能力を引き出し、発動させた事に驚きつつも、敵の火球を避け、観覧席から模擬戦場の中央へと飛び降りる。
「東雲さんは避難したついでに遼さんを呼んできて下さい。多分図書室の辺りを見張っていると思います」
「は、はい、分かりました。申し訳ありません」
俺は模擬戦場のドア付近にいる東雲さんに遼の捜索を依頼すると共に、危険なこの場から退避させる。
そして続けて。
「黒木さんは申し訳ありませんが本の防衛をお願いします。これ以上、奴がパワーアップしてしまったら厄介ですわ」
「わ、分かった。···ブラッククレイドル」
俺は黒木さんに指示を出し、それを受けた彼女は模擬戦場の端に大量に積まれた本の前まで行き、本たちを無数の闇の手で覆い隠して黒い球体を形作り、自身はその前に立ちはだかる様に陣取る。
「これで、だ、大丈夫」
「ありがとうございますわ!!」
よし、これでひとまず本は無事に済むだろう。
後はこの模擬戦場自体への被害を最小限に抑えたい。
俺はそう思いながら周りを見渡すが、先程ツヅリコジキの火球を食らってしまった観客席は既に破壊され煙が立ち込めていて、最早、ごめんなさいで許される範囲を超えてしまっていた。
こうなった原因としてはツヅリコジキに東雲さんの神具が捕食されてしまった事が大きいのだが、まあ元を辿れば、ツヅリコジキを逃がしてしまった研究員の人が悪いし、きっと責任を取らされるのも彼だろう。
すまん研究員の人、アンタの犠牲は忘れない···。
「うおら!帝牙黒爪刃!!」
「行きますにゃ!雷光斬!!」
と俺が色々と考え事をしていると、本庄さんは爪の付いたガントレットに黒いオーラの様なものを纏って敵を斬り裂き、続いて姉小路さんも剣に雷を纏わせ目にも止まらぬスピードで斬りかかった。
「シールドⅠ、フィジカルアップⅠ、アーマードⅠ」
だが、それに対してツヅリコジキは様々な防御系の初期魔法を併用し2人の攻撃を受け止める。
そして続けて。
「ウインドショットⅠ」
とツヅリコジキが口から突風を放つと、本庄さんと姉小路さんは吹き飛ばされ観客席に叩きつけられてしまう。
「痛てぇ」
「く、油断しましたにゃ」
だが神具による肉体強化のお陰で2人はそれほどはダメージが無い様子であった。
それを見て安心した俺はもう一度、ツヅリコジキを見る。
すると奴は次に二条院さんを標的にしていて、両手の指を合わせて、手と手の間に雷を起こしていた。
「サンダーブラストⅠ」
そして両手を大きく挙げて振りかぶると手から雷が放たれ二条院さんに襲いかかる。
「きゃああ!!」
「!?」
しかし、二条院さんは敵の攻撃を避ける事をせずにその場で身構えてしまう。
と俺はそこで入学式の時の二条院さんの様子を思い出す。
あの時、二条院さんはマガツモノに怯えている様子だった···。
まさか今回も···。
そう思った俺は左手に刀を召喚し、二刀流の状態で二条院さんの前に立ち、そのまま敵の攻撃を受け止める。
「大丈夫ですの?」
「え、ええ、ありがとう···」
俺は軽く振り返りながら二条院さんに尋ね、二条院さんも我に返った様に返事をした。
「おりゃ!!」
とやはり初期魔法という事もあり、敵の雷は大した威力ではなく、俺は直ぐにそれを跳ね除けることに成功する。
続いて俺は手に持った2本の刀をツヅリコジキの両手に向けてそれぞれ投げる。
投げられた刀は激しく回転しながら敵の両手を捉えそうになったが、敵も馬鹿ではなく、機転を効かせて手の位置を僅かに変える事でそれを避けてしまう。
だが。
「斬像!!」
かわされた直後に2本の刀にそれぞれ斬像を召喚して、油断していた敵の両腕を背後から切り裂く。
「ギッ!!、ギギギィァアア!!」
よし!いいダメージっぽい!!
ツヅリコジキは叫び声を上げると、その場でもがき苦しみ出す···がしかし。
「ヒールⅠ、リジェネレイトⅠ」
ち、忘れていた。奴は東雲さんの神具を飲み込んでいるんだ。
俺はツヅリコジキの傷が見る見るうちに回復ていくのを見て改めてその事を思い出すと共に、完全に東雲さんの神具を使いこなしている敵を見て思わず感心してしまった。




