エロ本奪還作戦 6
それから数分後。
「はあはあ、あれが本当にツヅリコジキなんですにゃ?」
姉小路さんは息を切らしながら尋ねてくる。
俺たちはあれから学園中を走り回り、ツヅリコジキを追いかけ回したが結局捕まえる事が出来ずにいた。
もちろん俺たちがマジの本気を出せば、ツヅリコジキを倒す事など造作もないだろう。
しかし、世間一般で言えば奴は危険度Cのただの雑魚なのである。
よって、たかだかその雑魚を倒す為に学園の備品を破壊したり、施設に傷を付けたりした場合、もう少し上手く立ち回れなかったとかと桐原先生に言われ、大目玉をくらってしまうのは想像に難くなかった。
「ええ、しかし、あのツヅリコジキは計画的か無計画的かは分からないですけれど、特殊に強化された可能性が高いのですわ、油断はダメですわよ」
♪♪♪
と姉小路さんに忠告した所で俺の携帯電話に着信が入る。
「もしもし」
「暁良今どこにいる?」
「ああ遼さんですか。今は2階の廊下をツヅリコジキを追って行ったり来たりしてましたわ。そちらは?」
「ふふふ、よくぞ聞いた。実はいい作戦を思いついて今その仕込みをしているんだ」
遼は笑いながらそう言い、その後、嬉嬉として作戦について話し始めた。
そして更に数分後。
「なるほど悪くありませんわね。その作戦で行きましょう」
俺は遼の作戦に同意し、作戦実行の為に動き始めた。
遼の作戦は単純明快であった。
それは神具能力テストが行われた模擬戦場に図書室から本をある程度移し、ツヅリコジキが持つ本のある所へと向かって行く習性を利用しておびき寄せるというものだった。
それにより全員が思う存分、神具の能力を使用する事が出来るので奴の討伐も余裕に行えるというわけだ。
だがこの作戦には少しだけ欠点があった。
それは本をある程度移しても結局の所、模擬戦場よりも図書室やその他の職員室などの特定の教室の方が本が多い点だ。
それを解消する為に俺達は二手に別れ、俺や姉小路さんが真後ろからツヅリコジキを追い、遼達が待ぐせを行って、逃げるルート制限する。
そうしてツヅリコジキを模擬戦場へと追い込み、そこで叩く。
まあ無難だが、1番効果的な作戦だろう。
「では作戦開始ですわ」
「ええお姉様」
俺達は息を揃え一斉に飛び出し、ツヅリコジキを追いかけ始める。
「まずい!」
本来は降りさせなくてはならない階段をツヅリコジキが登り始めてしまい焦る俺、だが···。
「止まりなさい!!」
そこに剣に僅かに炎を纏わせた二条院さんが立ち塞がる。
それにより焦ったツヅリコジキは階段を転げ落ちると作戦通り、階段を降りていく。
「ナイスですわ。二条院さん」
「二条院さんにしてはやりますにゃね」
俺と姉小路さんはほぼ同時にそう言う。すると。
「ええ当然よ。って、姉小路!なんであんたがここにいるの?」
二条院さんはツヅリコジキを追う俺達の集団に参加しながら姉小路さんに向かって指をさす。
先程の姉小路さんのセリフと合わせて考えると2人は元からの知り合いであることが推測できた。
「お姉様に手助けをお願いされましたにゃ。きっと二条院さんが頼りないからだと邪推するのですにゃ」
「あんた口調が変わってるのにその態度は変わらないのね」
と走りながら俺の左右で喧嘩する2人を無視しつつ、それからも何回かルートを外れてしまうツヅリコジキを、その都度斬像などを用いて修正をしていった。
そうして、ようやく真っ直ぐな廊下で片方に着いたドアを入ったら模擬戦場の観覧席に出るという所まで敵を追い詰る。
そして開け放たれたドアのほぼ真横あたりに東雲さんが神具を持って待ち構え、もう逃げ道は模擬戦場の中にしかなくなる。
完全に決まったと思った瞬間、一抹の不安が俺を襲う。
まだスピードを緩める様子の無いツヅリコジキに俺達の立ち位置。
そして俺は東雲さんの持つ神具、1から学ぶ魔法の書に目を向ける。
まさか···確かにあれは本の形をしている。だが神具だぞ。
それに模擬戦場の中には大量の本がある。それらを無視して目先の1冊に飛び付くのか?
そんな余計な事を考えてしまい、俺の反応は一瞬遅れてしまった。
そして気付いた時にはツヅリコジキは東雲さんに飛びかかり、神具を両手に持ち、その本の端に噛み付いていた。
「斬像!生キ写シ!!」
俺は咄嗟に自分の持っていた刀を投げ東雲さんの近くで斬像を召喚し直ぐに生キ写シで自分自身と場所を入れ替える。
「おら!!」
そしてツヅリコジキに向かい蹴りを加え、模擬戦場の中へと放り込む。
すると奴は模擬戦場の中央の模擬戦を行うエリアまで吹き飛ばされる。
「東雲さん!神具は?」
「す、すみません」
東雲さんの手には既に神具は無かった。
それを見た俺達は急いでドアから模擬戦場に入り、観覧席の階段を駆け下りて模擬戦を行うエリアに居るツヅリコジキを見下ろす。
メキグチャビチャブチ!!
とツヅリコジキは東雲さんの神具を捕食し終わるとそんな気色の悪い音を鳴らしながら、見る見るうちに肥大化していき、さっきまで1m程だった身長を5~6m程に成長させてしまう。
「□▽▲◎☆▽!!!」
そしてツヅリコジキは俺達を視界に入れると言葉では言い表せない鳴き声を上げ俺達を威嚇した。




