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エロ本奪還作戦 5

 「くそ、見失っちまった」


 "生キ写シ"で斬像と居場所を交換して、暫くは追いかけっこを繰り広げていたのだが、惜しみなく技を連発してしまった疲れもあってか俺はツヅリコジキの姿を見失ってしまった。


 と、その時。

 

 「あ!お姉様ですにゃ!」


 後方からそんな声が聞こえて来て、俺は振り返る。


 そこには姉小路さん、そして神具能力テストで共に三廻部会長と戦った本庄さんと黒木さんの姿があった。


 その3人は共に1年1組であったが、俺はその組み合わせをとても意外に感じた。


 だが俺のせいで変な口調になってしまった姉小路さんがクラスで浮いて、いじめ等の被害に遭わないかと心配していた俺としてはとても喜ばしい事ではあった。


 それにしても電波っぽくなってしまった姉小路さんにヤンキーっぽい見た目と性格の本庄さん、そしてコミュニケーションが苦手そうな印象を受ける黒木さんと、まあ色々な方向の人間が集まったものだ。


 ···っ!?いや待てよ、3人に共通する事が1つあるんじゃないか?


 そうこの3人は皆、未来有望な御子ではないか。


 「ああ、姉小路さんこんにちわ。本庄さんと黒木さんも」


 「どうも」


 「···□□□」


 俺が出来る限りの営業スマイルで3人に笑いかけながら近づいて行くと、本庄さんは軽く頭を下げながら、黒木さんは聞き取れないくらいの声で返事を返してくる。


 「少しお疲れのご様子ですけど、どうしたんですにゃ?」

 

 「ええ、実は···」


 とその言葉が聞きたかったとばかりに俺はツヅリコジキが脱走し、学園中の本を捕食して回っていて、俺の大切な本も食べられてしまった事、そして、そのため自分達はそいつを退治しようと頑張っている事を説明する。


 そして続けて。


 「でもそのツヅリコジキがなかなか手強くて困っているのですわ。ただ捕食されてしまった本は私にとってとても大切な物なので何に変えても取り返さねばならないんですの······ああ、私は急いでいますので、では!」


 「ああ、待ってくださいですにゃ!」


 振り返り、走り出そうとした所で姉小路さんから声を掛けられ俺はその場に静止する。


 今の俺の顔はきっと、悪行に手を染めそうになった時にそれを見れば自分を省みて素に戻れるって位には、人間として劣った表情をしているだろうと予想出来た。


 がしかし、俺は白々しく、だが表情からはそれを全く感じさせずに振り返る。


 「どうかなさいましたか?」


 「私達で良かったらお手伝いしますにゃ!」


 「えっ、本当ですか?それはとても助かりますわ」


 計画通り!


 全て予定通り事が進んだ事で、思わずもれそうになる笑みを抑えつつ、俺はとても謙虚な表情を浮かべる。

  

 だが当然の様に巻き込まれた姉小路さん以外の2人は何か言いたい事があるようであった。


 「え、待てよ。私達ってあたしと黒木もかよ」


 「ええ、もちろんですにゃ。お姉様を手伝うのは妹分として当然の事ですにゃ」  


 「って、あたし別にこいつの妹分じゃねーし」

  

 「ああーもう、うるさいですにゃよ。お姉様が本を取り戻したら何でも言う事を聞いてくれるとまでいってるのですにゃ、手伝うのが道理というものですにゃ」


 ······ん?


 今なんて言ったのこの子?  


 「ちょ、ちょっと姉小路さん?私、何でも言う事を聞くなんて言いました?」

 

 「え?何、おっしゃいますにゃ?さっき何に変えても取り返さねばならないとおっしゃってましたにゃ。という事は逆説的に誰かが取り返したら、それを何と変えてもいいと言う事になりますにゃ」


 わーお、この子天才···。 


 姉小路さんの理論にぐうの音も出ない俺をよそに3人の会話はどんどんと進んでいく。


 「確かに何でも言う事聞いてくれるならいいかもな」


 「それなら···私も···」


 本庄さんと黒木さんは俺を見ながら不敵に笑う。


 え?何をお願いする気なのこの子ら?


 いや待って待って、だって本庄さんは1日サンドバッグになれとか灰皿になれとか言いかねないし、黒木さんは黒木さんでちょっと人の体の部位で家具とか作りたいから材料になれとか言いそうだし。


 どう転んでもやばい。


 「じゃあ、あたしが取り返したら···」


 ごくり。


 「あたしと1対1で本気の決闘をしてもらう!」


 え?そんなんでいいの?


 俺は驚きつつ、続いて黒木さんの方を見る。


 「じゃ、じゃあ、私が取り返したら···その···私と、と、友達に···」


 え、なにこの子めっちゃ可愛い。


 「あ、で、でも、そういう風に友達になるのは、違う、かも···」


 しかもいい子!!


 何でも言う事を聞かなくてはならないとなって焦ったが、まあ、正直そのくらいだったら全然聞いてあげられるな。


 俺はほっとして一息つく。


 だが。


 「皆ズルいですにゃよ。···うーんと、私はそうですにゃね。まず手始めにオランダ辺りに移住して結婚するにゃね。それからそれから···」


 「いや最初の1歩デカッ!」


 薄々感ずいては居たが一番ヤバイ奴は姉小路さんだった。


 ···。


 しかし、まああれだ。


 やっぱりこの3人の手はどうしても借りたい。


 それに、そもそも俺の本を見られたら、その時点で人生終了まである。


 俺は絶対に彼女たちに本を取られない様にと心に誓うと、3人の少女を仲間に引き入れ、ツヅリコジキの捜索を再開した。

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