エロ本奪還作戦 4
「ほらあそこにいますわ」
俺は図書室の床に座り思う存分、本を食らっているツヅリコジキを本棚の影から指さす。
やはりと言うべきかツヅリコジキはその身長を1m程に成長させていて、黒い闇のようなもので構成された手を伸ばして本棚から本を片っ端から取り、口に運んでいた。
しかし、その食事シーンを見るに食った本の分だけ体積が増えている様には見えず、マガツモノが質量保存の法則に囚われていない、謎多き生命体である事が実感できた。
「さっさと、とっつかまえましょ」
「あっ、ちょっと待ってください、二条院さん」
神具を呼び出す体勢を取る二条院さんを静止させつつ、俺は話を続ける。
「そうしたいのは山々なのですが、ここは通路が狭く、周りが本棚なので神具がとても使いにくいですわ。それよりも思う存分神具を使用出来る広い場所に誘導した方が得策ですわ」
「ああ、まあそうね。そう言えば私の神具はここだと普通の剣と変わらなかったわ、本気出したら本を全部焼いちゃいそうだしね」
「ええ、では作戦を立てましょう」
そしてそれから少しの間、話し合いがもたれ、俺と二条院さんがツヅリコジキを追い立てる役になり、残った遼と東雲さん、それと俺が召喚した斬像が待ぐせしつつ、逃げ道を一定にして敵を誘導、もしくは可能ならばそのまま倒してしまうというような流れになった。
「いきますわよ」
「ええ!」
そして、俺と二条院さんは神具を召喚しながら声を掛け合い、同時にツヅリコジに突っ込んでいく。
「ギギ、ギ?」
と俺たちの存在に気づいたツヅリコジキは本を捕食するのを止め立ち上がると、俺たちが来ている方とは逆に四足歩行で逃げ始める。
「ギギギィヒヒー」
「何なのあいつおちょくってるの?」
俺たちから逃げているツヅリコジキはその途中チラチラとこちらを向くと挑発する様な表情を浮かべ、笑い声に似た声を発してくる。
「ギッ、ギギー」
「あいつムカつく!!」
「落ち着いて下さい、もうすぐ合流地点ですわよ」
俺はツヅリコジキの奥を指差しながら、二条院さんに声をかける。
「止まってください」
「行かせない」
と丁度そこに東雲さんと参丁参段散弾銃を構えた遼、そして俺の斬像の姿が見える。
しかし、ツヅリコジキ本体は俺と二条院さんをおちょくるのに忙しく全くそっちの方向を見ていなかった。
そして。
ドォン!
「···ギギギ」
「痛てて」
ツヅリコジキは通路の真正面に立っていた東雲さんとぶつかり共に倒れる。
がその倒れ方が問題であった。
あろう事かツヅリコジキは仰向けに倒れ込んだ東雲さんの豊満な胸に顔を埋め、右手がスカートの中へと入っている様な体勢で倒れていた。
「死ねや、この性犯罪者が!!」
俺は叫び、東雲さんに当たらない様に細心の注意を払いながらツヅリコジキに斬り掛かる。
しかし奴は自身の体を人間では有り得ない程に伸縮させ、斬撃を避けるとそのまま出口の方に向かって走って行ってしまう。
「ちっ!斬像!!」
俺はすかさず斬像に奴を追跡させる。
そして自分は東雲さんに手を差し伸べる。
「大丈夫ですの、東雲さん。ここでは使えないにしても神具は展開しておいた方がいいですわよ」
「すみません。そうですよね」
御子は神具を展開する事で自身の身体能力を上げる事が出来る。
危険度C~Bであるとはいえ、やはり万全を期して望んだ方がいいだろう。
俺は握り返してきた東雲さんの手をがっちり掴んで起き上がらせ、東雲さんに怪我が無いのを確認すると、また"生キ写シ"を使用してツヅリコジキの追跡に戻ろうとする。
しかし。
「今のツヅリコジキの動き···なるほど」
「なんですの遼さん。何かわかりましたの?」
遼が神妙な面持ちで何度も頷いてた為、俺は一旦"生キ写シ"をするのを止めて尋ねる。
「奴は恐らく···」
「ごくり」
「ToLOVEるとかを捕食している可能性が極めて高い!」
「···って、あの方なら股間にダイブからの何故か女の子がパンツ履いてないで舌挿入位の名人芸披露するわ!!」
聞いて損した。
俺はその後の動きや作戦を電話で指示する事に決め、"生キ写シ"を用いて奴を追った斬像と自分の位置を入れ替え追跡を再開した。




