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エロ本奪還作戦 3

 「ふう···」


 いや気持ちを切り替えよう、奴はまだ直接女の子に手を出してはいない。


 まだいくらでも取り戻せる。


 俺はそう自分に言い聞かせ、ツヅリコジキが逃走した割れた窓ガラスの方へ向かう。


 そして窓枠に残ったガラスに気をつけながら、外と校舎の壁を見る。


 すると地面にツヅリコジキの足跡らしきものが発見出来て、その足跡は校舎に沿ってしばらく続いていたが、窓が空いたドアの所でピタリの消えていた。


 その事からツヅリコジキは再び校舎内に侵入した事が予想出来た。


 とそこまで推理できたところで遼と研究員の男、そしてなぜか二条院さんと東雲さんが合流する。


 「うわぁ、こりゃ酷いわね」


 「本当ですね。お片付けが大変そうです」


 二条院さんと東雲さんは学園長室と割れた窓ガラスを見て、悠長に言う。


 まあそれはそうだ。本来ツヅリコジキとは臆病なマガツモノであり、ほとんど人に危害を加えることが無い、取るに足らない存在なのだ。


 だが、今回ばかりは例外だ。


 「二条院さん、東雲さん!もっと気持ちを引き締めないとダメですわよ!危険度Cとはいえマガツモノはマガツモノ、化け物であることには代わりがありません。しっかりと慎重に確実に、一匹残らず駆逐するのが御子たる私たちの役目のはずですわ!!」


 ちょっと強い言い方をしてしまったが、相手は凶暴化している恐れがあるこのぐらい言っておいて間違いはないだろう。


 「そ、そうね。私が悪かったわ。······ちょっと遼?暁良はツヅリコジキに親でも殺されたわけ」


 「うーん惜しい。今、暁良はツヅリコジキによって息子を生殺しにされているんだ」


 ビクッ!

 

 「え、息子?何それどういう意味、ギャグ?」


 遼の発言に、俺は一瞬ヒヤッとしたが二条院さんは本当に訳が分からないといった様子で首を傾げるだけであった。


 「こらこら遼さん。逆の事を言えばギャグみたいな感じになると思ったら大間違いですわよ。意味が繋がっていない文章になっていて、結果的にお滑りになられてますわ」


 と俺は作り笑顔を浮かべながら、ここまで周りに聞こえるように少し大きな声で話し、続いて遼と肩を組む形になる。


 「お前、何言ってくれてんの?二条院さんが無垢だったから助かったけど今のはやべぇだろ。それに今の俺は学園中の女の子が安全に過ごせる事のみを願う解脱(げだつ)の境地に達してるから生殺しになんてされてねーよ。···ああ、あと安全を願ってるのは学園中の"女の子"だからお前は入ってねーぞ、つまり掘られちまえ」


 「まあまあ、そんな邪険にしなくてもいいんじゃない?お前の為に協力してやってる相棒に対してさ」


 「いやお前まだ何もしてねーだろ」


 「おいおい、こっちは嫌々ながら大野木にツヅリコジキの事について聞いてやったんだぞ。知りてーだろ?······それがな」


 と遼が大野木から聞いた情報を俺に伝えようとしたその時。



 「な、何だこれは、あ、有り得ない!!」

 

 

 荒らされた学園長室を見て研究員の男が声を上げ、更に言葉を続ける。


 「ツヅリコジキがこんなに大量に、それに難しい本を捕食するなんて聞いたことが無い」


 学園長室にあった本という事でそれが難しい本であった事を確信し呟く男。


 「有り得ないとは言えない」


 そこに遼がドヤ顔で割ってはいる。


 そして、さっき俺にしようとしていた話を全員に聞こえるように話し始める。


 「ツヅリコジキに危険がないか、その手の事に詳しい人に聞いてみた。そうしたら外国の研究者の論文で、ツヅリコジキに与える本のレベルを緩やかに上げていく事で捕食量と好む捕食範囲が増大していくという話があったらしい。そう、さながら小学生の教科書が1学年ごとに少しづつレベルを上げていくように。そしてコロコロからジャンプになってヤングになって快楽天になるようにね。···貴方たちも偶然とそう言う風に餌を与えてしまったんじゃない?」


 「い、いやそんな事は無かったと思うが···」


 自分の知らない情報に研究員は困惑し言葉を詰まらせる。


 そうか、確かに子供向けのような簡単な本を好むなら俺の例の本を捕食したのもおかしな話だった。そういう事も含めて大野木さんの調べて来た論文が正しいのならば納得ができる。


 俺は当てつけのように漫画を例にとってきた遼の言動を一旦無視して合理的に今必要なことだけを考える。


 と、ここで東雲さんが遠慮がちに小さく手を挙げる。

 

 「もし久瑠美さんの言葉が本当なら、一体どのくらいの危険度になるんですか?」


 「···まあ恐らくはCではないだろうね。Bか、あるいはもっと捕食を続けてしまったらAとかにもなるかも」


 東雲さんの疑問に真面目な表情で答える遼。


 因みにマガツモノの危険度はD、C、B、A、AA、AAAとあり、Dは人に危害を加えない、Cは危害を加える事もあるが死人などはまず出ない、Bは人に危害を加え死者を出す恐れがある、Aは人に危害を加え複数の死者を出す恐れがある、と言った感じでどんどんとその脅威が増していく。


 まあともあれ、大は小を兼ねるだ。危険度Aクラスだと仮定して動いてまず間違いはないだろう。


 「さあ、奴はまだこの校舎の中にいますわ。見つけ出してきちりと倒しますわよ」


 「な、なあ、ちょっと、話したいことが···」


 「後にして下さい!」


 俺は研究員の男の静止を振り切り、再び召喚した斬像と共に走り出した。

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