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エロ本奪還作戦 2

 放心状態から覚めた俺は急いで寮から校舎の方へと戻り、斬像を使ってある人物を探して回る。


 時刻は午後5時頃で日没まではあと1、2時間ほどであり、ツヅリコジキの真っ黒な見た目から見ても、暗くなる前までには何とかして見つけ出さねばならないと考えられた。


 例えば、夜になるまで見つからずに俺のほんのチョットだけアブノーマルな本で良くない事を学んでしまったツヅリコジキによって暗がりで生徒の誰かが襲われてしまったら···。


 考えただけでも······。···って、いや普通に恐ろしいわ。一瞬ちょっと興奮するかもって思ったけど100%恐ろしいわ。


 まだ現実と虚構の区別がつく人間でいれて本当に良かった。


 俺は女装して女子校に入学するという18禁ゲームでしか有り得なそうな設定を実行している自分を棚に上げつつ、ほっと胸を撫で下ろす。


 とそんな事を考えていると。


 「居た」


 斬像の一体の視界に目的の人物が写ったため、俺は惜しみなく"生キ写シ"を使用してその斬像と自分の位置を入れ替える。


 そして大きな荷物を持って車に乗り込もうとしていた30から40代ほどの研究員の男の元まで走り、刀をその男に向ける。


 「待ちなさい。貴方なにか隠し事をしているのではありませんの?」


 「う、うわっ!?な、なんですか急に」


 研究員の男は驚き、後退りして、車に背中が当たる事で追い詰められる。


 「とぼけても無駄ですわ。ではその中のものを確認したいのですがいいですわよね?」


 「い、いやー、それは···い、一体なんなんだい君は」


 俺は研究員の持っている機械でできた普通のクーラーボックス程の大きさの物を刀で指し訪ねるのだが、研究員は少し顔を引きつらせ守る様に箱を両手に持ち直す。


 「しらを切り通せると思うんじゃねーぞ!!」


 「ひぃ」


 焦りからか少し腹が立ってしまった俺は斬像を2体出現させると3方向から刀を向け、更に1歩だけ研究員の男に近付く。


 おっと、しまった口調が乱れてしまった。


 俺はコホンと1度は咳払いをして、口調を元に戻す。


 「そこにツヅリコジキが入っていないのは分っていますわ。···何故なら、そいつはもうすでにこの学園で事件を起こしてしまっていますからね。すでに有耶無耶(うやむや)にできる段階では無くなっていますわ」

 

 「え?」


 えっ?って、こいつまだ認めないつもりか。

 

 「貴方が逃がしてしまったツヅリコジキが私の大切な本を食らってしまったんですわ!」


 「···」

 

 「···ただまあ、私も鬼ではありません。もし本が無事に返って来て、被害が許せる範囲ならあなたの失態を水に流してもいいと思っていますわ。ですので、貴方も交換条件として、私にツヅリコジキがどういう所を好むだとか、そう言う情報を教えなさい」


 刀を下ろさずに言っているため脅しみたいになってしまったかもしれなかったが、研究員の男はわずかな時間考え、そして数度頷く。


 「な、なるほど、わ、分かりました。協力します、させて下さい」


 「いい判断ですわ」


 と交渉が成立した所で、そこに遼が走って現れる。


 「ちょっと暁良、何やってんの?」


 一般人に神具を向けている俺を見て、驚いた様子の遼。

 

 「この方がツヅリコジキを逃がしてしまったことを白状したんですわ」


 「え、本当なの?暁良が神具を向けてるからじゃなくて?」


 「ええ、違いますわよね?」


 俺はそう言いつつ、神具をしまって研究員の男に尋ねる。


 「あ、ああ、本当にすまない」


 研究員の男は頭を下げ、続けてツヅリコジキの特性などの情報について語り始める。


 「俺はツヅリコジキについて専門で調べている訳では無いからそこまで詳しくはないが、基本的にツヅリコジキは難しい本は好き好んで食べないとされている。居るとするならやはり図書室の子供向けの教科書や児童文学、絵本のコーナー、もしくはそう言うのが好きな子の部屋に侵入する可能性が高い」


 「なるほどなるほど」


 と情報を得た俺は早速、斬像を召喚し、それらに該当しそうな人を探す様に指示を出す。


 「まあツヅリコジキは強くないから神具使いがどうこうされることはまず無いと思うからその点は大丈夫だと···」


 「馬鹿!例えばゴブリンとかだって、雑魚だと思って舐めてかかったら一瞬で苗床ですわよ。油断は禁物ですわ」


 「え?なんて?」

 

 状況が全く理解出来ていない研究員の男に俺は喝を入れる。


 「まあ暁良の本食べてるから、あながち冗談でも無いところが恐ろしい」


 「やめなさい。そうならない為にベストを尽くしてるのですわ」


 俺は口ではそう答える。


 がしかし後は斬像達に任せておけば時間の問題だろうとたかを括ってしまっていた。


 そしてツヅリコジキが人へ被害を及ぼす前になんとか見つけ出せそうな事に安堵しそうになった、その時。


 「「きゃああああぁ!!」」


 パリン!!


 と校舎の2階から女の子数名の声が響き、その後ガラスが割られた音が鳴る。


 クソォ!!まじかよ!!!


 俺は直ぐに声が聞こえた場所の近くにいる斬像に"生キ写シ"をして床に尻もちを着いている女の子2人に近づく。


 「大丈夫ですか?何をされましたの?」


 「い、いえ急に黒い影みたいなのが前を通ってびっくりして尻もちを、あそこから出てきました」


 何?女の子に尻もちを付かせるとか、とんでもねぇ鬼畜だな。


 それにそこの割れた窓、もしその下に人がいたら割れたガラスが刺さって怪我をしてしまった可能性が高い。くそ、完全にヤバいやつに成長してやがる。


 俺は恐らくツヅリコジキが逃げたと思われる割れた窓ガラスを見て、その後、反対側のドアが開けられた部屋に入る。


 そこは学園長室であり、その部屋はツヅリコジキによりだいぶ荒らされてしまっていて、この部屋内の本の大部分が恐らく捕食されてしまったのではないかと思えるほどに本棚や資料棚の本や資料が無くなっていた。


 「くそ、やられた!」


 これだけの本を捕食したという事は普通よりも少しだけ強くなってしまっている恐れがある。


 早急に見つけださねばマジで被害が出ちまう。


 俺は地面を蹴り、怒りと悔しさを顕にした。

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