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エロ本奪還作戦 1

 無い、無い、無い無い無い無い無い無い、無い!!!


 神具能力テストから数日がたったある日の放課後。


 薄暗い部屋で俺は自分の持ち込んだ荷物やお菓子のゴミや漫画雑誌、カードゲーム等を片っ端からひっくり返しながら焦っていた。


 この学生寮に持ち込んだはずのご用足しのアレが無い。


 絶対に一度はこの部屋で見た記憶がある為、家に置いてきたという事などもまず有り得ない。


 たしかに机の引き出しに隠しておいた筈なんだ。


 一体どこに行ってしまったというんだ。

 

 とこんな感じで俺が動揺を隠しきれずにいると。


 ガチャ!と勢いよくドアが開けられ遼が帰宅して来て、それに驚いた俺はビクッと身体を震わせる。


 「え?なにこの部屋なんか無くした?」


 「い、いや別に、な、なんでもねーし」


 「ふーん」


 いつもより一層酷い部屋の荒れように気づいた遼が尋ねてくるが、俺はしらを切り通す。


 がしかし、帰って来るなりベットに転がり携帯をいじり出したこの男に対して俺は疑いの念を覚え始める。



 いや待て、こいつが怪しくないか?



 ここに来てから何だかんだ忙しい上に常にこいつが居るから今までプライベートタイムを堪能する事も出来なかった。


 唯一触ったのが俺がここに来た日の荷解きの時だ。


 更にいえば、この部屋に俺たち以外の奴を招き入れた事はまだ無い。


 となれば必然的に犯人はこのエロガキだ。


 「おい遼、お前、俺の秘蔵のアレを勝手に使っただろ、返せよ」


 「は?お前の秘蔵のアレってなんだよ。···ってああ、あれね。と言うか、あんなん使うわけねーだろ。俺は至ってノーマルだからな、あんなりょ、うぐっ···!」


 「それ以上言うな!」


 遼があまり良くないことを口走りそうになったため、俺は手で遼の口を塞ぎ喋れなくさせる。


 「ケホッ、ケホッ。お前右手で口に触れんじゃねーよ!汚ねえだろ」


 「まだ汚くねーわ!···で、何処にやったんだ」


 「いや何処にもやってねーよ。隠したりもしてねーし、ましてや使うとかもありえねー」


 遼は至って普通の様子で言い切ってみせる。


 ······うん、どうやら嘘をついているようには見えない。


 もしこれが嘘なら大したものだと褒めてやりたいくらいだ。


 「まああれだ。万が一侵入者が居たりしたら相当まずいからな。監視カメラ確認するか?」


 「おお!まじか助かる!」


 ···。


 ······ん?監視カメラ?


 俺が疑問に感じていると、遼は手馴れた手つきで携帯のあるアプリを起動させると、部屋の中を違う角度から移した3つ程の映像が映る。


 「あの?遼さんそれは一体?」


 「ん?監視カメラだけど?もし違うやつにこの部屋とか見られたら危険じゃん?」 


 「···」


 「···」


 「あー、よくさドッキリとかで芸人の部屋に監視カメラ設置する事とかあるけどさ。俺、そういう時は絶対本人に知らせてるとと思うんだよな。だってさ···あれだろ?家に帰って来て落ち着いたらまずするのはあれだろ···な?」

  

 「ふーん、で?」


 「で!?でってお前"自分がされて嫌な事を人にしてはいけない"ってお母さんとルルーシュから習わなかったの?」


 「え、なんでここでルルーシュ?」

  

 「いや撃っていいのは撃たれる覚悟ある奴だけ、みたいなこと言ってただろ?あんま詳しくないけど」


 「いやお前その名言をどんな解釈してんだよ。ファンにキレられるぞ、というか寧ろ俺がイラッとしたわ」


 ムカッ!!


 「いやそんな事はどーでもいいんだよ。こういうのは俺にも教えとけよ!!」


 「···」


 「···」


 「ほらムラムラしてるお前が映ってるぞ」


 「どうしよう。すげー殺したい」


 数十分前の俺が映った画面を指差し笑う遼にマジで殺意を覚え、百騎一閃で携帯ごとぶった斬ってやろうかと考えたが、そうしてしまうと今回の事件が自分のうっかりなのか他に犯人がいるのか真相が掴めなくなってしまうため、ぐっと思い止まった。


 いやーこれマジで遼だけだったら斬ってたわこれ。


 「昨日のは確認してるから、今日のだけ確認するぞ」


 そう言って今日の朝からの部屋の映像を早回しで見ていく。


 それから昼過ぎ程までは何も起こらずゆっくりと影の位置が移動していくだけであった。


 しかし、俺達が部屋へ戻る夕方近くになった時、一瞬だけ画面に黒い影が映りこんだ事を俺たちは見逃さなかった。


 「今なんか映ったぞ!」


 「まじでかよ。巻き戻せ!」


 俺たちは叫び、監視カメラの時間を僅かに巻き戻す。


 俺は犯人が分かると思い、少しだけテンションが上がっていたのだが、そこに映ったものを見た瞬間、頭が真っ白になり、身体中の汗腺から汗が吹き出し、気が動転して、吐き気に襲われる。


 「これは···ツヅリコジキ?」


 遼は監視カメラに映った70cm程の真っ黒な闇で構成された二足歩行のトカゲと人を混ぜたような見た目のマガツモノを見て呟く。


 それは今日の昼頃にマガツモノという存在を知るという名目で行われた授業にて、観察目的で研究員の人が連れて来た危険度Cのマガツモノであった。


 そして何故かそいつは真っ直ぐに俺の机の引き出しの方へ向かって行き、器用に引き出しを開ける。


 「あれ確かこいつの特性って···」


 ハッとして、なにか気付いてしまったように口に手を当てる遼。


 そうこのマガツモノの特性、それは···。



 食した書物から物事を学び成長して行くことだ。



 そして、そうこうしている間にツヅリコジキは俺の机の中に存在するアレを手に取る。


 「やめろ、止めてくれ」


 ガブッ!


 「ぐはっ」


 俺の悲痛の叫びは虚しく、ツヅリコジキは俺の大切なアレを一口で飲み込んでしまう。


 「ギ、ギギギギッ」


 とツヅリコジキは目を赤く光らせながら、唸り声を上げる。


 そして少しだけ体を成長させると元来た入口の方へと消えていった。


 「まじか···って暁良!お前すげえ汗だぞ」


 遼が心配して俺の肩を揺らすが、俺は放心状態で全く反応出来ず、ただ真っ直ぐに監視カメラの画面を見つめることしか出来なかった。

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