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神具能力テスト+α 11

 「すごいすごい!!」


 三廻部会長は一回転しながらステッキを振り回し、四方八方から攻撃を仕掛ける斬像を薙ぎ払い、こちらに向かってくる。


 「ところで生キ写シは使わないの?」


 「って、まだ見せてない技を言うのはやめてほしいですわ!!」


 カキン!


 俺は向かってきた三廻部会長の攻撃を受け止める。


 しかし、もう力が余り入らず一瞬で押し切られそうになったため、癪ではあったが、生キ写シを使うための準備として少し遠くの刀に斬像を召喚する。


 さらに。


 「村雨(むらさめ)


 続いて俺は上空に存在する数十本の刀を俺と会長に向かって降り注がせる。


 そしてそのうちの半分に斬像を召喚し、残りをそのまま降り注がせる事で時間差を生じさせた。


 またそれらを行う際、俺は常に未来を読まれている事を意識し、斬像を召喚する刀を選択する事も忘れなかった。


 「生キ写シ」


 そして先程、三廻部会長がネタバレした技を使用し、予め遠くに召喚しておいた斬像と自分の位置を入れ替える。


 「ぐっ···」


 この技以外と消耗が激しいんだよな。


 俺はそろそろ体力的にも限界を迎えてきて、倒れそうになりながらもしっかりと足を踏ん張り耐える。


 「ルインズメテオランス」


 だが、そうしている内に三廻部会長はステッキを先程黒木さんを倒した光の槍の状態に固定して、上空に向かい突き上げると、閃光が天に昇って行くように伸び、襲いかかって来ていた刀と斬像を一掃してしまう。


 そして、尚も光の槍の状態を保ったまま矛先をこちらに向けてくる。


 「はあ」


 これ以上小賢しい事をしてもこの人には効かない。大技で決めるしかない。


 と俺は確信し、自身の周りに9本の刀を召喚する。


 そして自分の持っている刀を前に突き出すと、周りの刀たちは光になって俺の持つ1本に集まっていく。


 また段々と吸収されていく度に、刀の大きさ等には全く変化が無かったが、俺の体には斬像と同じ青い白く半透明なオーラが纏われていく。


 「百騎一閃、十束(とつか)ノ刃」


 10本の百騎一閃を1本に束ねた姿がこの十束ノ刃。


 これが今の俺が出せる最高の火力だ。


 「行きますわ。三廻部会長!」


 「よし来い!」


 お互いに声を上げ、衝突し、力と力をぶつけ合う。


 周りの空間はその衝撃で突風が吹き、気流が乱れている様に荒れる。


 そうして暫くの間、お互い1歩も譲らぬ攻防が繰り広げられる。


 そして。


 「やるね」


 力比べが終わり、三廻部会長は一歩下がり、初めて膝をつく。


 その光景に俺は一矢報いたと満足感を覚え、小さく笑みを浮かべた。


 そして、そこで俺の意識は途絶えてしまった。




 

 気づくと俺は救護室のベットの上で目が覚める。


 「起きたか。じゃあ寮に帰るぞ」


 ベットの横の椅子に腰かけていた遼が俺に声をかける。


 「あれからどれくらいたった?」


 「まだ10分くらいしか経ってない。あの空間でのダメージは偽物だからな、倒れたのも神具の使いすぎによる一時的なものだそうだ」


 「そうか」


 俺はいつの間にか治っている左手を見ながら、三廻部会長との戦いを思い出す。


 やはり上には上がいるということか、まあ負けた事は悔しいが清々しい気分ではあった。


 「ところで相棒よ。俺が居ない状態で気絶してたら男だってバレていたかもしれねーぞ。そういうのも気にしながら闘えよ」


 「あ、ああそうか、すまん」


 遼が地面に叩きつけられた所から再び立ち上がって来なかったのにはそういう意味があったのか。


 闘いに集中し過ぎて思わず男である事を隠しているのを忘れかけていた。


 俺は素直に反省し、ゆっくりと立ち上がる。


 そして遼とともに救護室を後にしようと廊下に出る。


 「吉野宮さん少しいいですか?」

 

 と廊下を出てすぐの所に1人の少女が待ち構えていて、俺に声をかけてくる。


 「2人きりで話したいことがあるんです」


 「姉小路さん···」


 姉小路さんは俺との約束を気にしてか、ですわ口調を使っていなかった。

  

 俺はジェスチャーで遼に先にいけと指示を出し、遼もそれを了承する。


 そして姉小路さんと2人きりになった所で改めて口を開く。


 「姉小路さん別に口調は変えなくてもいいんですわよ。同じ喋り方の人が何人もいても別に変な事ではありませ···」


 「だめです!私は吉野宮さんと会長の試合を見てこの言葉遣いを使うに相応しいのは吉野宮さんだけだと悟りました。あの試合はとても素晴らしいものでした!!」


 急に1歩近ずいて来た姉小路さんは俺の手を両手で強く握る。


 「あ、ありがとうございますわ。で、でも口調の変更は無しになったのでは···」


 「そんな事は私が許せません!あれは正当な決闘に基づくものです!例えそれが先生のお言葉でも受け入れることは出来ません」


 くっ、姉小路さん、結構頑固だ。


 「あ、あの、それでですね。それとは別で1つお願いしたいことがありまして···」


 そして突然、もじもじとしながら何か言っている姉小路さんを観察しながら俺は対策を考える。


 まずいな。姉小路さんにはなんの悪気も無いだろうが、このまま姉小路さんの口調が変わったら俺に不利な噂が流れるかもしれない。


 こうなったら。


 「ああー、でしたら、先程は桐原先生に止められましたが、やはり相手による語尾変更も適用しましょう。···姉小路さんの口調は、そうですねー、"〜〜(なになに)にゃ"とかではどうです?もしそれが嫌なら···」


 とそこまで言ったところで姉小路さんを横目に見ると、とても驚いた表情であり、泣き出しそうな2歩手前くらいの様子であった。


 「あ、ああ、やっぱ今のは無しで···」


 必死に自分の言葉を否定する俺。


 しかし。


 「嬉しいです!それはつまり私のお姉様になって下さると言うことですよね!!」

  

 姉小路さんは今度は急に抱きついて来て、飛躍した意味不明な言葉の解釈をする。


 「お、お姉様ってどういう事ですの?」


 「いや、それはつまり"私の子猫ちゃんになれ"的な意味合いですよね。私達の世界では常識ですよ」


 ど、どこの世界の常識なんだよ。


 「い、いやと言うか、"にゃ"なんて普通に嫌でしょ!?嫌なら無理しなくていいんですわよ」


 「いやいや、全然嫌じゃないです。···ああ、こほん。全然嫌じゃないですにゃ、寧ろ嬉しいですにゃ」


 目をきらきらと輝かせてそう言ってくる姉小路さんを見て、俺は何も言えなくなってしまった。


 そして、本来なら女の子に抱きつかれるという役得でラッキーな状況にも関わらず、俺はこれから訪れるかもしれない受難を思ってとても憂鬱な気分にならざるを得なかった。


 それから結局、姉小路さんを説得出来ないまま、その日は別れることとなってしまい、俺は一層不安な気分にさせられてしまう。


 だが後日談として、姉小路さんの口調が変わった事で俺は桐原先生から一瞬だけ白い目で見られる事になったのだが、その事について姉小路さんが"これは自分の意識でやっていること"と堂々と宣言した事により俺に対する疑惑は一時のものとなった。

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