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神具能力テスト+α 9

 「ぐっ」

  

 と前触れなく本庄さんが膝をつく。

  

 「大丈夫ですの?」

 

 「う、うるせぇ」


 俺は心配して本庄さんに声を掛ける。


 よく見ると本庄さんの神具が成長でもしている様に、徐々に体を覆う部分が増えて行っていて、先程は肘や膝までだったのが今は二の腕、太ももの中心位まで上がってきていた。


 そして、その様子から俺は彼女がまだ神具を完全に使いこなせていないと悟り、同時にこのままでは暴走してしまう恐れがあるかもしれないと考える。


 しかし。


 「うおらぁぁ!!」


 本庄さんは早々に勝負を決めようとしているのか再び、三廻部会長に突っ込んでいく。


 「こら、無理は禁物だよ」


 「うるせぇ、アンタを今すぐ倒せば問題ねぇだろ!!」


 猛烈なラッシュを放ち続ける本庄さんだが、その全てをいとも簡単にかわされ苛立ちを募らせて行く。


 さらに、どうやら神具の成長速度が感情とリンクしてしまっているようで戦っている最中もどんどんと身体を覆う部分が増えていってしまい、すでに本庄さんの身体の半分以上が神具に覆われ、それは顔にまで到達していた。


 「うぉおおお!!」

  

 「無理はダメって言ったでしょ!」


 本庄さんが三廻部会長へ殴りかかった瞬間、会長も一瞬だけ本気を出したのか、さっきまでと比べ明らかに早いスピードでそれに対峙し、ステッキで本庄さんの身体を思い切り殴り、地面に叩きつけると本庄さんはそこから数メートルほど地面を擦りながら飛ばされる。


 その衝撃により大量の砂煙が巻き上がり、勝負は決まったと思われた。だが。


 「ぐぅおおおお!!」    


 獣の様な雄叫びが響き、砂煙の中から身体全体を神具で覆ってしまった本庄さんが姿を表す。


 そして一瞬のうちに距離を詰め神具の鉤爪で斬りかかる。


 しかし。


 気づくと本庄さんは地面に叩きつけられていて、その腹の上には三廻部会長の神具の先端が突きつけられていた。


 三廻部会長が本庄さんに対応した動きはあまりにも隙がなく自然であり、一瞬時が飛んだ様に錯覚したが、実際はそうではなかった。


 例えるならそれは柔道でとてつもなく綺麗な1本が決まった時のような、気づくと決着が付いてしまっているあの感覚に近かった。


 「さすがに暴走されると厄介だからごめんね。···スターダスト・スクリーム」


 三廻部会長はそう呟くとゼロ距離でレーザーを放ち、小規模な爆発が巻き起こる。


 そして、爆煙が晴れるとそこには神具が解除された状態の本庄さんが気絶し倒れていた。


 その様子をただ唖然とした様子で眺めていた俺達。


 しかし。学園最強の御子はそんな悠長な時間を許してはくれなかった。

 

 「ほら油断しちゃダメだよ」


 三廻部会長は同じ場所に固まっていた俺と遼を一旦無視し黒木さんの方へと向かう。


 「ぐぅ」


 表情には出にくいが黒木さんは明らかに動揺し、先程身を守った闇の腕を大量に召喚し三廻部会長に向けて攻撃を仕掛けるが、それらは走りながらいとも容易くかわされていく。


 「コズミックシャドー」


 止まることなく突っ込んでくる三廻部会長を目の当たりにした黒木さんは再び闇の手を自分の周りで繭のように覆い、それをどんどんと肥大化させていく。


 そして十分に大きくなったところでその繭から闇の腕を触手の様に数十本生やす。


 「ヘルズアトラクション」


 そして数十本あった腕は三廻部会長の四方八方を囲み、逃げ場の無い状態で攻撃を仕掛けた。


 「遼さん」


 「うん」


 俺たちは声を掛け合うと、黒木さんに便乗する為、三廻部会長の元へと走る。


 それには会長を倒すという手柄を取られたくないと言うのもあった。


 しかし理由はそれだけでは無い。


 恐らく黒木さんのあの攻撃では足りない。


 それが一手なのか十手なのかは分からなかったが、とにかく三廻部会長を倒すためには全員で最善を尽くさなくてはならない。


 案の定、芸術の様な動きで襲いかかる闇の手を避ける三廻部会長。


 そこに一足先にたどり着いた俺が斬りかかる。


 カキン。


 会長と俺の神具がぶつかり合う。


 「忘レ刀」


 俺はそれと同時に忘レ刀で斬像を残し、会長の横側に刀を召喚しながら回り込み、再び斬る。


 だが。


 カンッ!!

 

 会長はステッキの角度を変え、2本目の刀にも対応する。


 「くっ、まだですわ」


 先程の要領で再び斬像を残し、後ろに回り込こんで、今度は刀を上段で構え振り下ろす。


 ガシッ!


 「なっ···!?」


 「これはすごいなぁ」


 三廻部会長は2体の斬像を相手しまま、俺の刀の鍔の辺りに蹴りを放ち斬撃を抑え込む。

 

 俺はさらにもう一度、同じ様に攻撃を仕掛けようかと考えたが、少し遅れて到着した遼が上空で2体の鎧鬼とともに銃を構えているのが目に入った。


 よって俺はここは引くことに決め、忘レ刀で3体目の斬像を召喚し数歩後方に下がる。


 「魔銃三段撃ち(ケルベロスブラスト)


 遼、そして2体の鎧鬼はコンマ数秒の時間差で三廻部会長に向けて無数に枝分かれする黒いエネルギーの銃弾を放つ。


 降り注ぐ銃弾により斬像は消滅してしまったが、流石の会長もこれでは無事では済まないだろうと思われた。


 がしかし。


 突然、三廻部会長の居たあたりから2本のレーザーが放たれ、空中の鎧鬼2体の身体を貫く、そして遼がそれに一瞬気を取られた隙に会長は高くジャンプし、遼の元までたどり着くとステッキを遼の体に当て一回転し、その遠心力を利用し地面に叩きつける。


 更にそれだけでは終わらず、三廻部会長は空中にいる状態で思い切り振り(かぶ)りステッキを黒い球体の中にいる黒木さんに向けて投げる。


 すると三廻部会長の手を離れたステッキは光の槍のようになって一直線に進んでいく。


 「ルインズメテオランス」


 そして会長のステッキは黒木さんの居る黒い球体を貫くと一瞬のうちに瞬間移動し、手元に返ってくる。


 この一連の攻撃により、黒木さんは倒され、遼もほぼ瀕死の状態に追い込まれてしまう。


 「いや危なかったよ。というか普通に何ヶ所かかすったからね」


 三廻部会長はゆっくりと地面に着地し、体に数箇所刻まれた傷を確認しながら笑う。


 しかし俺はある違和感を覚える。あの銃弾の中それだけの怪我で済んでいるのは、明らかにおかしい。


 さらに言えば俺の神具は奇襲が非常に得意だ。それなのにそれらが全て初見で対応されるというのも妙だ。


 俺は思考を巡らせ、三廻部会長の能力についてある仮説にたどり着く。


 がその時。


 「何かに気づいたかな?······うん、それで正解だよ。私の能力はね、未来を見ることが出来るってものなんだ」


 三廻部会長は俺の心を読んだかのようにそう言って無邪気に笑った。

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