神具能力テスト+α 8
「という事で改めてこんにちわ。九條学園生徒会長の三廻部桜だよよろしくね」
模擬戦で全勝した生徒だけが残ったコロッセオ内に入ってきた三廻部会長は俺と遼を横目に見た後、生徒達全員に向けて挨拶をする。
「お前らにはこれから三廻部ともう一度模擬戦をしてもらう。学園最強の御子との試合だ、きっといい機会になるだろ」
続いて桐原先生がこれから行われる事の説明し、それに対して三廻部会長はニコニコした表情で話し始める。
「まあ、皆3回も試合をして疲れているだろうからね。ルールは全員対私1人だよ。皆いいよね?」
三廻部会長は自身満々に、というよりは寧ろ当たり前の事を言っていますよ、というような表情でそう語った。
とその様子が癇に障ったのか茶髪短髪で制服を着崩した、いかにも不良と言った雰囲気の少女が1歩前に出る。
「学園最強の御子って言ったってそれは調子に乗りすぎなんじゃないんすか?」
「···君は1年1組の本庄頼子ちゃんだよね。うん、気持ちは分かるよ、分かるんだけどさ。一応、生徒会長として疲れている子達と1対1をして勝っても大人気ないとかって陰口を言われちゃうんだよ。だからここは私を助けると思ってさ」
掌と掌を合わせ、片目を閉じると三廻部会長は可愛らしく首を傾げる。
しかし。
「···いえ、その心配は無いっすよ。あたしの神具は戦えば戦うだけ強くなって行くっすから。神具展開!獸王崩天殻」
「おっといきなりだねー」
本庄さんは両手両足に肘と膝程まである、爪先と指先に爪の付いた黒っぽいガントレット状の神具を召喚する。
ちらっとしか見ていないため、記憶は曖昧だが先程の3試合戦っていた時は今ほど体を覆う部分が多くなかったため、先程彼女の言った戦うだけ強くなると言うのはそこを表していると考えられた。
「お前ら手を出すんじゃねーぞ」
本庄さんは俺たちそう言い、同時に桐原先生の方を見て、試合を開始の宣言を要求する。
「はあ···では始めろ!」
桐原先生の言葉を受け、いきなり三廻部会長に攻撃を仕掛ける本庄さん。
しかし、三廻部会長は神具を召喚すること無く、バックステップでその攻撃を避け、その後更に2、3発、本庄さんの攻撃を避ける。
「舐めた真似をしてくれるじゃないっすか!」
それに腹を立てたのか本庄さんは思い切りジャンプし、三廻部会長に飛びかかる。
しかし。
「それは違うよ」
三廻部会長は罠にハマるのを待っていたと言わんばかりに僅かに笑う。
「神具展開、転ばぬ先の聖杖」
「!?」
「あと忠告すると自分の神具の能力とかは無闇に人に教えちゃダメだよ。戦いはそういう所から始まってるからね」
自身と同じ位の大きさのステッキを召喚した三廻部会長は完全に油断していた本庄さんを弾き返し、空中にいる彼女に向かってステッキの先端を向けると、先端部分が光を吸収する様な変化を見せ、レーザーを打つ体勢をとる。
「スターダスト〜・スクッ!?」
「神具展開、百騎一閃!」
「神具展開、参丁参段散弾銃!」
その瞬間、会長が隙を生じたと考えた俺と遼は互いに神具を召喚し、俺の刀2本と遼の数本に枝分かれしたレーザーが三廻部会長に襲いかかる。
しかし。
「いいねー。でも」
三廻部会長は素早く体を翻し、遼のレーザーを避けつつ、俺の刀をステッキで確実に弾く。
「まだですわ」
2本の刀が弾かれ地面に刺さった瞬間、間髪入れずにその刀を持った斬像を召喚し、三廻部会長に正面から残像2体で同時に攻撃を仕掛ける。
「機転も効くみたいだね。面白い」
しかしその攻撃も既に読んでいたと言わんばかりに余りにもあっさり避けられ、棒術のようなやや乱暴なステッキ使いで斬像を攻撃され打ち消されてしまう。
だがその瞬間。
「鎧鬼やれ」
遼が召喚していた甲冑を纏った鬼、鎧鬼が斬像によって生じた三廻部会長の死角で銃を構えていて、斬像を倒した瞬間を見計らってレーザーを発射する。
「おお、コンビネーションを取れるようになったんだ。うれしいなぁ」
顔色1つ変えずに三廻部会長はそう言うとレーザーにステッキの先端を向け、そのままステッキの中にレーザーを取り込んでしまう。
そして反射に近い速度で取り込んだ倍ほどのレーザーを打ち返してきて、それは鎧鬼を消し飛ばすとついでに1箇所に固まっていた俺たちに向かって飛来する。
「くっ」
ギリギリ俺と遼は転がりながらそのレーザーを避ける。
だが。
ドゴォン!!!
と先程まで俺たちが居たあたりの場所では爆音と爆煙が巻き起こった。
そして俺と遼、さらに本庄さんが息を飲む中、爆煙が晴れていく。
するとレーザーに巻き込まれた内の3名ほどは逃げ遅れ、そのまま地面に伏していたのだが、もう1人の人物は即座に神具を展開、黒い繭のようなものを形成して身を守っていた。
その後、その少女を包んでいた黒い繭のようなものがゆっくりと解けていき、それがドス黒い闇で構成された腕の様なものであることが分かる。
「神具、モータルホラー」
繭から現れた長いボサボサな黒髪を持った背の低い少女は禍々しい装飾が施された30cm程しかない短めの杖を両手に持ち焦点の合っていないような目でただ真っ直ぐを見つめていた。
「おお、君は黒木未来ちゃんだね、よく反応した!···と言うことは残りは4人か。さ、気持ち切り替えて頑張ろうか」
汗一つかいていない清々しい表情で三廻部会長が笑い、それを見た俺たちは冷や汗を流した。




