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騎士教諭殺し 解決編 7

 遼が逃げただと!それも見張りの人達を全員倒して···、なんじゃそりゃあ。くそ、東雲···いや、南雲さんの件で今後についての相談をしたかったってのに。···ああ、とにかく今は早く遼の元に。


 俺は嫌でも巡ってしまう思考を抑えつつ、先輩が指した方向に向かってひたすら森の中を走る。


 そもそも方向は合っているのか、または遼が途中で行く方向を変えていないかなど、不安が募ったがそれは直ぐに解消した。



 ドゴーン!!!



 と、自分の進んでいる先で爆発と爆音が巻き起こる。


 それらは移動しながら起こっている様で、しばらく進むと、傷付いたり、折れたりしている木々があり、それらからここで神具による攻撃が行われたと推測する事が出来た。


 俺はその痕跡を辿り、しばらく進む。


 すると、今度は先程よりも激しく爆音と爆発が巻き起こり始め、それは今度は移動しつつではなく、一所に留まって行われているようであった。


 まずい、ガチな戦闘は本当にまずい。


 このままでは遼が無罪だとしても、後戻りが出来なくなってしまうかもしれない。


 そう危惧した俺はスピードを上げる。


 そして。


 「遼!」


 俺は叫びながら木々を抜けて少し開けた所へと出る。


 すると。


 「上限解放、|粗悪なる虚空記録《アカシックレコード·コデックス》」


 俺は三廻部会長が神具である杖の形を変化させ、遼と遼の生みだした2体の鬼達に向かって行く姿が確認する。


 それに対して遼と鬼達は両手に持つ散弾銃からのレーザーの雨で応戦するが、三廻部会長は完璧なまでに洗練された動きでそれらを交わしながら進撃を続ける。


 「くっ···」


 遼はそれに対して更に銃をあと8丁ほど追加し、同時にそれを持つ4体の鬼を召喚する。


 そうして更に激しいレーザーを三廻部会長に浴びせる。


 たがしかし。


 本来なら交わすことも不可能そうなその攻撃を三廻部会長は尚も前進しながら避け続ける。


 そして同時に会長もレーザーによる反撃で次々と鬼を仕留めていった。


 そして遂に1人になってしまった遼の目の前まで辿り着き攻撃を仕掛けよう杖を振りかぶる。


 「!!?」


 だが何を思ったか三廻部会長は先程までの余裕の感じとは打って変わって急に焦りの表情を浮べる。


 そして、素早いステップで後方へとジャンプする。


 「見ましたね。これの存在を···でももう遅い」


 遼は右手に散弾銃、そして左手にある機械を持ってバックステップで逃げる三廻部会長の後を追い、そして、左手の物を突き出す。


 それは返納機であった。それも騎士のものでは無い。


 それは俺と騎士が潰した組織が作っていた返納機のレプリカだった。


 遼は躊躇いなくそれを作動させると案の定、三廻部会長の杖は消え失せてしまう。


 「ごめんなさいね」


 続いて遼は右手の散弾銃を三廻部会長の額に突き付ける。



 「遼!!!」


 

 唖然としながら、2人の戦いを見てしまっていた俺は、ハッとして、今度は先程よりも大きな声で叫ぶ。


 「···」


 一瞬だけ俺と目が合い、コンマ数秒ほど硬直した遼だったが、直ぐに三廻部会長の方を向き直し、手に持った散弾銃で会長を殴り飛ばした。


 「ぐはっ!」


 数mほど吹き飛ばされ、木に激突した三廻部会長は苦しそうな声を上げ、そのまま気絶して動かなくなってしまう。


 一瞬の沈黙。


 「りょ、遼···」


 その後、俺は三廻部会長が生きている事を遠目で確認しつつ、恐る恐る、遼に近づいて行く。


 「···まさか、上限解放まで使えるとは流石学園最強の御子って事か」

 

 遼は俺の存在に気付きつつも、こちらを見ることなく呟く。


 「お、おい、遼!なんでお前が返納機を持ってんだよ。しかもそれ犯罪組織が作ってたレプリカじゃねーのか?」


 「···まあそうだな。もしもの為に買っておいたけど、はあ、でもやっぱり粗悪品はダメだわ。もう壊れたっぽい」


 「···」


 遼と微妙に会話が噛み合わない。


 こっちは犯罪組織が作ったレプリカの返納機を使った事を咎めてるのにもか変わらず、遼は性能の話をしている。


 「で何しに来た?」


 「!?は、は?そんなのお前を連れ戻しに来たに決まってんだろ。てか聞いてくれよ。あの事件、東雲さんが真犯人だったんだ。そんで実は南雲大星の妹で活動家の仲間になりたかったからとか言ってさ、で結局、追い詰めはしたんだけど最後に南雲大星が連れて行っちまったんだ。だからよ、一緒に戻って東雲さんを連れ戻す作戦を考えてくれって、ほらお前東雲さんの事狙ってただろ」


 「はあ···いやそれは無理でしょ。···だって俺、あの物置から逃げる時、他の生徒ボコボコにしちゃったし、それにその生徒達に返納機が作動している中でも神具が使えてるの見られちゃったからさ。どちらにせよ、色々調べられちまう。···残念だけど、ちょっとだけ遅かったんだよ。暁良は···」


 「なっ···」


 「ふっ、ふふ、いや悪いのは俺か。···暁良を最後まで信じきれなかった。桐原に記憶を覗かれそうになって、すぐに見限っちゃったんだな。ほんの数分の時間稼ぎなら簡単に出来たのにさ」


 投げやりに言う遼は、悟ったような、全てを諦めたような様子であった。


 「い、いや、本気で謝ればギリギリ許されるって、向こうも冤罪掛けてたんだからさ。で返納機の件は···ほら騎士に頼んでさ」


 「いや、許されないな。少なくとも調べ尽くされはする。お前は忘れているだろうが、既にお前と俺はマークされてるんだよ」


 「マーク?誰に?」


 「この国、そして朝倉御子さ。そして記憶を覗かれれば、俺らの秘密も、俺が奴らの闇を暴こうとしている事もバレてしまう。だからどう転んでも詰みなんだよ」


 「いや全然訳わかんねーよ。闇ってなんだよ」


 「······この国は禍津ノ王の存在を隠蔽し、そいつらに殺された御子達を居なかったことにしたんだ。俺の大切な人もそうして存在を抹消させられたうちの一人だ」


 寂しげに語る遼は少しだけ沈黙し、すぐにまた口を開く。


 「···なあ暁良、一緒に来てそいつらと戦ってくれないか?頼むぜ。だって俺たちって親友なんだろ?」


 遼はこちらに手を差し伸べ、首を傾げる。


 遼の顔は微笑んではいたが、その表情からは何処と無く危うさを感じた。


 そして、分からない言葉が並んでいたが、遼が危険な事をしようとしている事だけは簡単に理解出来た。


 「遼、お前への協力はいとわない。だがお前と一緒に逃げる事は出来ない。お前がこっちへ来るんだ。それと強行手段に出るのは無しだ、それを守れないならお前に協力する事もできない」


 俺はそうキッパリ言うと、遼は心を見透かされ驚いた様な表情に変わる。


 そして。

 

 「···ふふ、正解、正解だよ。暁良。全く暁良はいつでも正解を導き出すよなー、いやほんと、困っちゃうよ。···思い返すと、いつもそうだよな。二条院さんや騎士の時も私はアイツらを平気で切り捨てようと考えていたのに、お前はどちらもすくい上げて強い味方にしてしまった。お前はどんな状況だろうと、結局、何とかしちまうんだよな。多分、身体測定の時も私が手を貸さなくたって何だかんだで解決しちまったんじゃないか?···詰まるところ、私にはお前が必要だったがお前には私は別に必要でもなかったって事だな」


 急に饒舌に語り出す遼。


 そして、それに困惑する俺。


 「い、いや急にどうしちまったんだよ。お前はそんな奴じゃなかっただろ!ほらとにかく帰ろう。ずっと拘束されてて疲れてんだよ」


 俺は遼に近づき腕を握ろうとするが、遼はそれをするりと交わしてしまう。


 「そんな奴じゃなかった···か」


 「だってそうだろ···」


 「いや、違う。お前の知っている私なんてただの設定だよ。お前と上手くやって行くために予め決めておいものに過ぎない。だからお前は私の事を何一つ知らない。···東雲さんの事なんて別に好きじゃないし、ゲームもお前に付き合ってやっただけで本当はやりたくも無かった、肉より魚派だし、特に下ネタなんて反吐が出るほど嫌いだった。母親も兄弟も私には居ないし借金なんてそもそも背負ってない、それに久瑠美遼という名前すら私の本名じゃない」


 まくし立てる様に言う遼に対して俺は唖然として何も口を挟む事が出来なかった。


 それから数秒空けて、遼は再び口を開く。




 「そして暁良、私はそもそも男でもないんだよ」




 頭が真っ白になってしまった。


 い、いや待て、俺は入学式の時に確かに。


 俺の頭にその疑問が浮かび、問いただそうとした瞬間。


 「性転換手術を受けたんだ。返納機と返納日を克服する為にね。···女の体と女の心を持って生まれた私がだ。その覚悟がお前に分かるか?」


 遼は俺の疑問に答えつつ、バックステップで俺から数m距離を取り、手に持っている散弾銃を俺に向けた。

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