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騎士教諭殺し 解決編 6

 やる事は簡単だ。


 朝倉祭の一件で騎士と共に横森さんを倒したあの技を使う。


 騎士は俺から刀を受け取った後、森の中を大回りして、現在は丁度、南雲さんの後方の森の中にいる。


 そして、今、彼女は俺に大技を放って体力は相当削られている上に意識も完全にこっちに向いていた。


 今ならやれる。

 

 俺は騎士の身体を斬像と同じ色のオーラのような物で包む。


 技名を”呪イ刀”。


 力強く踏み出し、南雲さんの背後から迫る騎士。


 しかし。


 「アクアスラッシュⅠ」


 読んでいたのか、一瞬で振り返った南雲さんは騎士に向けて魔法を放つ。


 「くっ···」


 だが、すぐに南雲さんは体力切れにより膝をつく。


 その時の南雲さんの表情は僅かな笑みをこぼしていて勝ちを確信している様子だった。


 しかし、それは騎士と俺のコンビ技を甘く見ている。


 恐らく南雲さんは普通に刀で斬り掛かられるだけだと思っていたのだろう。


 「ぐっ···おら!」


 騎士は水の刃に一瞬押されるが、その後、力を込めてそれを弾き返した。


 そして、南雲さんの元へと辿り着き、刀を峰打ちの状態で構える。


 がしかし。


 「あ、ぐぁ···」


 「パラライズトラップ。張っていて正解でした」


 騎士が南雲さんの真後ろの地面を踏んだ瞬間、その地面に電気の様なものが走り、それに触れた騎士は体の自由を奪われてしまう。

 

 「あと少しでしたが私の方が1枚上手でしたね。それにしても殺害対象の方から現れてくれるなんてラッキーです」


 「あ、がが···」


 「無駄ですよ。貴方の体は動きませんし、上手く喋る事もままならないはずです」


 南雲さんはゆっくり立ち上がると騎士の真正面まで近づく。


 「せめてもの慈悲です。私の魔法はそこまで威力が強くないので即死出来るように至近距離で打ってあげますよ」


 そう言うと、南雲さんは再び本を開き力を振り絞って魔法を放とうとする。


 がしかし。



 「が、あ···ぢ、ち、がずき、まじたわね」



 「!?アクアスラッ···」


 痺れて動けないはずの騎士が意味のある言葉を発し、尚且つ、それがですわ口調だった事を認識した南雲さんはすぐさま魔法を発動しようとする。


 だが、少しだけ遅かった。


 刀を峰打ちから持ち変えた騎士の一撃目でまず、南雲さんの神具である魔導書を真っ二つにし、続く2擊目で刀の頭の部分を彼女の鳩尾に叩き込んだ。


 「う、ぐぅ···な、なぜ」


 苦しそうな声をあげ、両膝をついた南雲さんは騎士の方を見る。


 しかし騎士は南雲さんに攻撃を当てた格好のまま、再び、動きを止めていた。


 「”呪イ刀”は対象に力を分け与えるような使い方も可能ですが、本来はその名の通り、まるで妖刀を持ってしまった人が刀に操られてしまうが如く、対象の人間の体を本人の意思とは関係なく操る技、例え、骨が折れていても瀕死の重症をおっていても···ゲフンゲフン。とにかく体が痺れている位どうと言うことはありませんわ」


 魔導書の消滅とともにデッドエンドの牢屋から解き放たれた俺は南雲さんに近づきながら涼やかに言う。


 がしかし、実際の所、騎士の持っている刀の所に斬像を作って瞬間移動する事もままならないくらいに、俺は迫り来る球体への対処に集中力を費して疲弊してしまっていた。


 まあいい、これで全て解決だ。


 「とにかく1度、拘束させていただきますわ。何故このようなことをしたか、もっと詳しく聞かなくてはいけませんからね」


 「···」


 「···そして、共に沢山考えて、悩んで、罪を償って、そうしたらまた一緒に···」


 俺がそう言って、南雲さんに手を差し伸べようとした瞬間。

 



 「迎えに来てやったぜ。かわいい愚妹を」




 拡声器を通した様な大きな声が響き渡った。


 「くっ···」


 俺はその声を聞いた瞬間、動けない騎士を抱えて素早く距離を取る。


 そして、上空を見上げた。


 「久しぶりだな。(おきな)


 「南雲大星···」


 空には15m程もある龍を模した赤い人型の機体が存在し、それは森に近づくに連れて地面に突風をもたらした。


 「いや、本当は助けに来る気はなかったんだがよ。ほんの数分前にちょっと迎えに行ってやるかって気になったんだわ」


 「くっ···」


 恐らくだが南雲さんが使った自身の運を上げる魔法の効果だろう。まさかこんな風に効いてくるとは。


 俺はかなり分が悪い事を覚悟の上で刀を構える。


 「ふふ、まあ、少しだけ遊んでやってもいいが···」


 大星はそう言いつつ、ふと俺の後方に目を向ける。


 「暁良!大丈夫?」


 「吉野宮さん!!」


 「お二人共!!」


 大星の神具、ブラッド・アラートの存在を発見したリリネと来島先輩が俺の元へと駆けつけてくれていた。


 「···更に敵が増えても面倒だな。ほら(あずま)乗れ」


 「お、お姉様···」


 「いいから」


 大星はブラッド·アラートの手を地面に着けて、南雲さんを乗せ、両手で優しく包むとゆっくりと上昇していく。


 「美波!!」


 連れ去られる友人に対して、リリネが叫ぶが、その言葉に返事が来る事は無かった。


 そして十分に上昇した大星達はそのまま飛び去って行き、数秒後には見えなくなってしまった。





 その状況に俺達は唖然としてしまい、数十秒間沈黙する。


 そんな中。


 「と、とにかく久瑠美が犯人では無かったと早く伝えるんだ」


 ようやく痺れから解放されて来た騎士が沈黙を破り声を上げる。


 「そ、そうですわ。早く···」


 騎士の言葉にハッとした俺は直ぐに別館の方へと向かおうと走り出そうとする。


 だが。


 「た、大変です。来島さん!!」


 時を同じくして別館の方から生徒会の役員の先輩が息を切らしながら走ってくる。


 「ええ、分かってます。南雲大星が現れましたね」


 「あ、はい、まあそれも何ですけど、で、でも私が伝えに来たのはそうじゃなくて」

 

 「と、とにかく少し落ちついて」


 「は、はい」


 生徒会の先輩は1度大きく深呼吸し、呼吸を整えると要件を話し始めた。


 


 「く、久瑠美さんが見張りの者達を全員倒して逃亡を計りました。それで、現在、生徒会長がその後を追っています」


 「なっ···」


 彼女の報告に俺の頭は真っ白になる。


 どういう状況だったのか、など詳しく彼女に問い詰めたい事はあった。


 だがそんな事よりも今、すべき質問は1つだった。


 「遼はどっち側に逃げたんだ!!」


 俺は先輩の両肩を掴み、揺すりながら訊ねる。


 「え、えーっと、別館があそこで、あっち側に逃げたんだから、今ここからだと···」


 「早く!」


 「え、えーっと、あ、あっちかな」


 「どうも!!」


 俺は簡単にお礼を言うと、すぐ様先輩が指さした方向へと走り出した。

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