騎士教諭殺し 解決編 1
俺の"真犯人はこの中に居る"発言を経て、合宿所内でも意見が二分される形になっていた。
まあ俺の言った根拠というのは、真犯人が俺と騎士が付き合っていると誤解し、尚且つ、俺が騎士に証拠の捏造を頼む事を前提とした行動となるわけで、あの張り紙はパパラッチ気取りの一般生徒が単にスクープを早く出したいと焦って、出すタイミングを失敗しただけの物だと考える事も出来る。
それでも、半数が俺の意見を一理あると思ってくれたのはかなり大きい。
しかし、俺は次の1歩を中々踏み出せないでいた。
「で、これからどうするの?」
「そうですわね···」
以前として合宿所のロビーで考え事をしている俺に対して、リリネが問いかける。
「···あ、あのさ?」
「ん?なんですの?」
「本当に暁良と淀川先生は付き合ったりはしていないのよね?」
「何だまだそれを気にしていましたの?先程も言ったよう、そんな事は有り得ませんわ。まあ勿論、素晴らしい先生だとは思っていますけれどね」
俺はできる限りの爽やかな笑顔でリリネに答える。
「そ、そうよね。···ふう」
とそれに対し、リリネは安堵したようにため息を漏らす。
そしてその後、俺は騎士との調査で得た情報を俺の意見に賛同してくれたリリネや東雲さん、生徒会の人達に伝えた。
「レーザーで淀川先生を攻撃した人と張り紙をばら撒いた人が共犯の2人組だとしたら、レーザー攻撃をした犯人が生徒や関係者の中に居ない可能性もあるのではないですか?」
俺から得た情報を加味しつつ東雲さんが訊ねてくる。
がしかし、その問いに俺は静かに首を横に振った。
「それはどうでしょう?私が鈴原神社で会った活動家の方々の言葉を考えても、今回の事件は犯人が活動家の仲間に入るための試験の様な側面を持っているように思えます。そう考えると普通は1人でこなさせるのではないでしょうか?」
「た、確かにそうですね···」
何となく納得して様子の東雲さん。
「ええ、ですから重点的に張り紙を貼った人物の目撃情報を···」
と、俺が言いかける。がしかし。
「いやちょっと待て」
そこに異論を唱えたのは来島先輩であった。
「さっきから張り紙を貼った者が真犯人だと言う体で話が進んでいるが、それはあくまで久瑠美が犯人でなかったらの場合だろう?私は君の意見も一理あると思っているが、それと同じくらいにまだ久瑠美を疑っている。実際の所、先生の部屋に侵入した様に偽装し、携帯には活動家と連絡をとったと思しき証拠を捏造すると言うのは、自由に合宿所を動き回れる生徒や関係者が犯人と言えど難しいのでは無いか?」
「そ、それは···」
く、くそ。まあ普通に考えたら確かにそうなるよな···。
しかし、遼は犯人ではない。色々とここでは言えない事が多いだけで騎士を襲うなんでありえないんだ。
とにかく効率を考えても張り紙を貼った者について重点的に聞き込みをした方がいい。
どうにか丸め込める様な言葉を探す為、俺はほんの数秒押し黙る。
そして、少しの沈黙がその場を包んだ。
と、その時。
「はいはい、とにかくさ、早く聞き込みして回ってみようよ。張り紙した人と久瑠美さんの情報どっちも聞いてみればいいんだしさ」
助け舟を出すように三廻部会長が言う。
「そ、そうですわね。話し合っていても始まらない事もありますわ。では、手分けしてこの貼り紙を貼った人物と事件当時の遼さんの目撃情報などを生徒達に聞き込みをして周りましょう」
確かに、急がば回れと言う奴かもしれない、ここで話し合って効率を求めるよりもさっさと解散して聞き込みをした方が寧ろ効率的だ。
会長の鶴の一声を受け、俺はすぐ様、聞き込む内容をまとめる。
「では、30分後にもう一度ここに集合という事で···」
そうして、俺達は一旦解散し、各々生徒達に聞き込みをして周る事になった。




