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騎士教諭殺し 16

 そうして、数分程で俺と騎士は作戦を建て終え、本館の方へと向かった。


 その作戦というのは非常に簡単なものだ。


 騎士の部屋で遼から騎士に向けてのラブレターが見つかったという事にするのだ。


 そうすれば、遼が騎士の部屋に侵入した理由の説明、そして、生徒から先生へラブレターを渡すというインモラルな行為がバレたくなかったという事から現在も遼が色々と黙秘している事の説明を付ける事が出来る。


 そして、俺、遼、騎士の仲は学園関係者にはバレておらず、傍から見れば、騎士が自分の命を狙っているかもしれない遼を庇う理由は無い。


 そこで、俺と騎士がそういうものが発見されたと一緒に公言すれば、遼の疑いはかなり晴れてくるだろう。


 そんな事を考えつつ、俺と騎士が本館の入口付近までたどり着くと、ロビーにはそこそこの数の人集りが出来ていて、そこの中に、リリネや東雲さん、また三廻部会長や来島先輩の姿もあった。


 よし、丁度いい。


 俺は偽装したラブレターを持ち、その手を高らかに上げながら彼女らに笑顔で近く。


 「おーい、やりましたわっ···」


 「ちょっと、暁良!これはどういうことなの!!?合宿所中にばら撒かれてたわよ!」


 「ひっ!」


 ルンルン気分でロビーに入った瞬間、リリネがある紙を持って俺に近ずいてくる。


 「な、なんですの?···ってこれは!!」


 リリネが俺に突きつけてきたA4ほどの大きさの紙はかなり雑な作りのポスターの様になっていて、そこには、数日前の夜、俺が騎士を校門で待つ護衛の元へと送り届けた時の写真が貼られていて、更に短い言葉で俺と騎士の交際疑惑が綴られていた。


 「なっ···」


 俺はその状況に驚きつつも、ある意味冷静に手に持っていた偽装ラブレターをくしゃくしゃにしてポケットへと入れる。


 この状況でこのラブレターを提出したとしても、俺が親友の遼を守るために、恋人の騎士に証拠の偽装を頼んだと思われかねない。


 「生徒と教師の交際なんて由々しき事態ですよ。どうなのです?」


 リリネに続き、来島先輩も詰め寄ってくる。


 すると、更に更に続いてただ単に面白がっている生徒達も近寄って来て、俺と騎士は質問攻めに合う。


 「み、皆さん落ち着いてくださいですわ」


 くっ、こんなタイミングで···。


 ···。


 ···ん?いや、待てよ。


 このタイミングでって···。


 俺はくしゃくしゃにしたポケットの中のラブレターを覗き込む。


 「ま、待って下さい皆さん。私と淀川先生はその様な関係ではありません。その日も淀川先生が遅くまで残業されていて、活動家に狙われかねない現状では学園内とは言え1人で夜道を歩くのは危険だと考えて、校門まで同行しただけですわ」


 非常に落ち着いた声色で、皆を宥めるように言うと、皆の勢いは収まりはしないものの弱まっていった。


 よし、今だ。


 俺は本題を切り出す。


 「それよりも、これは間違いなく今回の淀川先生が襲われた事件の犯人が遼さんでは無いことを示していますわ」


 「へ?何でそうなるの?」


 仲間のはずのリリネからも冷ための返答を浴び、少し挫けそうになる俺だが、咳払いを1つして再び喋り始める。


 「こほん、まず、こう言ったスキャンダル的なものをばら撒く人の心情としては、だだ単にスクープとして取り上げるにしろ、私に何らかの恨みがあるにしろ、より多くの人に見せたいと考える物だと思いますわ。しかし、今は合宿中、ここには1年生と少数の上級生しかおらず、皆、合宿で疲れ切っている為、噂などは普通よりも広がりにくいと推測でき、こう言ったものをばら撒くには効果的では無いように思えますわ。またこの貼り紙、作りがかなり適当で急いで作った感が否めません。本来ならもう少し凝ったものを学園に帰ってから撒くのが自然だと言えますわ」


 俺はリリネから張り紙を受け取り、指差す。


 「た、確かに···で、でもそれがなんなの」


 何となく納得したような様子でリリネは言い、同時に疑問をぶつけてくる。


 それに対して俺はリリネの方を指さし、待ってましたとばかりに続きを喋る。


 「ごもっともな疑問ですわ。···確証はありませんが、私はこれにはなにか別の意図があるように感じますわ。例えば、そう、遼さんを犯人では無いとして疑わない私に対する妨害。···この写真の撮影者は恐らく私と淀川先生はただならぬ中なのだと推測していたに違いありませんわ。そして、今さっきまでその2人が今回の事件の検証をしていた。恐らく撮影者は私が遼さんの無実を証明する為に恋人の淀川先生に証拠のでっち上げ等を頼むかもしれないと、そう思ったのかも知れません。···ああ勿論、誓ってその様な事はしていませんよ。真面目に検証していただけですわ···まあ兎に角、策士策に溺れるとはこの事です。この撒かれたビラこそ遼さんが犯人では無く、真犯人が存在する事を示していますわ」


 「「···」」


 俺の主張に絶句する一同。


 遼の無実を完全に信じさせられるまでには至らないだろうが、どうやら俺の主張も一理あるとは思ってくれている様だった。


 「ふふふ、そして、この紙が合宿所中にばら撒かれている事から、真犯人はやはり外部の人間ではなくこの合宿に参加している人物である可能性が高い事が分かりますわ。つまり犯人はこの中に居ますわ!!」


 俺は指を高らかに上げ、合宿所の天井を指さした。

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