神具能力テスト+α 6
「行きますわよ。吉野宮さん!!」
姉小路さんはそう言うと正しく稲光の様に一瞬で俺との距離を詰める。
「雷光斬」
そしてそのままの速度で俺に斬りかかった。
カキン!!
「さすがですわね」
「そちらこそ」
キン!キン!カキン!
姉小路さんの斬撃をなんとか受け止め、数回剣をぶつけ合う。
そしてその後、ジリジリと鍔迫り合い繰り広げる。
「では。こちらも行かせてもらいますわ」
数秒間の鍔迫り合いの後、空中に百騎一閃を2本出現させた俺は、僅かに姉小路さんを押し返し、それと同時にバックステップで数歩後ろに下がると空中の刀を姉小路さんに向かって射出した。
「斬リ雨」
そして発射された刀達は普通では有り得ないくらいの爆音と衝撃を発しながら地面へと衝突する。
「さすがに避けられますか」
地面に直径50センチほどのクレーターを作りながら刺さっている刀を見ながら俺は呟く。
「ええ、しかし、複数で1つの神具とは始めてみましたわ」
俺が手に持っている刀と全く同じ形の刀が降ってきたことに少々驚いた様子の姉小路さんだったが、俺の神具の性質を大体感じ取ったのか、すぐに切り替え次の攻撃へ転じる為に剣を構える。
「迅雷波!!」
と姉小路さんが剣を振るうと雷が意志を持っているように降り注ぎながら真っ直ぐに俺に襲いかかってくる。
「ちっ」
それに対し俺は地面に刺さっている状態の2本の刀に意識を飛ばし2体の斬像を呼び出して、それらを雷に対峙させることで身を守る。
そしてそれと同時に再び空中に刀を召喚すると、すぐに姉小路さんに向け発射、飛来する刀の存在に気づいた姉小路さんは剣でそれを撃ち落とそうと斬りかかる。
だが。
剣と刀がぶつかる瞬間に斬像を生み出し、その刀を持たせることで高速で飛来していた刀は一瞬にして動きが止まり、姉小路さんの斬撃は空振りに終わる。
そして直ぐに姉小路さんとの距離を詰めた斬像は空振りした隙をついて思い切り斬りかかる。
「くっ、雷光斬!」
カキン!
絶好のチャンスではあったが一瞬速度を速める技により、対応されてしまう。
そして、何度かの撃ち合いの末、斬像は斬り捨てられ霧のようになって消えてしまった。
だが同時に俺の方も姉小路さんの放った雷を斬像2体の犠牲の末、凌ぐ事に成功していた。
「やりますわね」
「ええ、あなたも」
お互いに相手の攻撃を凌いだことを称え合う俺たち。
それから数秒の沈黙があった後、再び状況が動き始める。
「これはどうです!」
俺は手に持っていた刀を姉小路さんに向けて真っ直ぐに投げ、すぐに刀を両手に出現させブーメランのように回転を加え、右の刀は左に、左の刀は右に大回りして相手に向かっていくように手をクロスさせながら投げる。
そして俺は真っ直ぐに投げた刀について行く形で更にもう1本刀を召喚し、相手との距離を詰めていく。
「こんなものは一気に打ち落とせばいいですわ。雷針撃!!」
姉小路さんは自信有げにそう言うと剣を上空に向かって掲げる。
そして次の瞬間、雷が剣に向かって振り注ぎ、その衝撃で迫っていた3本の刀を弾き飛ばす。
それにより真っ直ぐに投げられた刀は少し離れた地面に転がり落ち、左右から回転しながら迫っていた2本の刀は回転数を高めながらあらぬ方向へと飛んで行く。
しかし。
「斬像」
俺は空中を高速回転している刀に意識を飛ばして刀を上段で構えている状態の斬像を2体出現させる。
「なっ!?」
撃ち落としたと考えていた刀が再び自分に刃を向けた事に驚いく姉小路さん。
「くっ···双雷獣」
それに対応するため自身の周りに2匹の雷で出来た狼のような見た目のものを召喚した姉小路さんは、それらに空中で刀を構えている2体の斬像の相手を任せ、時間差で距離を詰めて来た俺を迎え撃つ。
ガキン!!
と2本の神具同士がぶつかり合う大きな音が響く。
「ふ、甘いですわよ」
「···」
俺は姉小路さんが油断していると見るや、剣をぶつけ合ったところから間髪入れずに手に持っていた百騎一閃を手放し一歩後ろに下がる。
「忘レ刀」
すると俺が先程までいた所には少し前の俺と全く同じ体勢で姉小路さんと鍔迫り合いをしている斬像が出現する。
「!?」
「裏斬リノ刃」
俺は相手に考える時間を与えぬように素早く、もう1本刀を召喚すると先ほど召喚した斬像ごと姉小路さんに強烈な突きを放つ。
そして、その突きによりまず斬像が霧の様になって消え、次に剣先が姉小路さんにあと数センチで届く距離にまで到達する。
「ぐっ、雷光!」
が咄嗟に技を使用され、姉小路さんはバックステップを踏みなんとかそれを避ける。
しかし。
「くす」
狙った様に事が運び笑みをもらす俺。そして。
「譲リ宝刀」
俺は突きを放った刀を再び手放し、バトンを渡す様な要領で目の前にこれから突きを放つ体勢で刀を構えている斬像を召喚する。
そして、次の瞬間には斬像の放った突きが姉小路さんの体を貫いていた。
「くっ、負けましたわ」
普通なら完全に死んでしまうような攻撃を受けた姉小路さんだったが、刀が刺された箇所からは血が吹きでることも無く、一瞬で何も無かったかのように元通りになっていた。
「いい試合でしたわ」
俺は跪いた状態で落ち込んでいる姉小路さんに優しい笑顔で手を差し伸べる。
「よ、吉野宮さん···」
俺の手を取り立ち上がった姉小路さんは頬を僅かに赤らめる。
「さっ、という事で語尾を変更する件ですが···」
「って、ここはその話が無くなる流れではないんですの!?」
「あっ···」
俺は語尾が元のままな事を咎めるように指を刺す。
「ああ、もう。どうぞ好きなようにして下さい」
「ふふふ、ではどうしてやりましょうか」
俺は本当は語尾を変えさせる気など無かった、意地悪く考えている振りをして見せる。
しかし。
「はい、そこまでだ。それ以上はいじめに発展する恐れがある。私はそう言うのは絶対に許さん」
俺と姉小路さんの間に入ってきた桐原先生は2人の頭の上に手を置き交互に睨む。
全く、体罰を与える気だった人がよく言う。
俺はそう思いながらも苦笑いを浮かべる。
「当然そんな事を強要する気なんてありせんわ」
「まあ、当たり前だよな?······ああ、じゃあ皆、取り敢えずお手本を見せてくれた2人に拍手しとけ」
桐原先生はそう言うと率先して俺たちにまばらな拍手を送り、それにつられて皆が拍手を始めた。
「では2人組が出来たやつから模擬戦を開始しろ」
桐原先生のその言葉を受け、生徒たちは次々に神具を召喚し、戦いを始めた。




