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騎士教諭殺し 9

 それから俺は極力戦闘は避け、レクリエーションが終了するまで木の影に隠れて潜伏する。


 そうして無事に最後まで生き残ることに成功すると、集合の合図を受けて再び旅館の玄関に集まった。


 「吉野宮さん無事でしたか」


 「ええ、東雲さんもそれを守り抜いてくれたんですわね」

  

 お面を付けた状態で集合場所に現れた俺と東雲さんはお互いの生存を確認し喜び合う。


 結果として、お面を取られてしまったチームメイトも居たため、隠し味的なものにまでは手が出なかったが、カレーとして最低限の食材のじゃがいも、人参、玉ねぎは確保することが出来た。


 そして、何より。


 「手に入れてやりましたわ。ほら!」


 俺は自慢げに自身のお面と来島先輩から奪い取った高級食材のお面を並べてチームメイトに見せつける。


 「すごいすごい!」

 「流石、吉野宮さん!」

 「わー、楽しみー!」


 俺へと向けられる賛辞の言葉。


 ふむふむ、中学時代はこういう事とは無縁であったが中々どうして悪くない。


 「いやいや、照れますわ。ははは」


 自身の後頭部を撫でながら、満更でもない様子で笑う俺。


 だが、それからもしばらくの間、賞賛が続き段々と恥ずかしさが上回ってしまった俺は何か話を逸らす為のネタを求めて辺りを見渡す。


 「ん?」


 すると、先生方が少しザワザワとしている事に気が付く。


 「一体どうしたのでしょうか?」


 「さあ、もしかして森から帰ってきていない生徒がいるとかですかね?」


 「っ!?って、東雲さん、それは怖すぎですわ」


 東雲さんの返事に苦笑いを浮かべる俺だったが、その心配は杞憂に終わり、直ぐに桐原先生が"レクリエーションお疲れ様"的な挨拶をし始めた。


 そしてその後、チームで手に入れた食材に加えて、ご飯とカレーのルーが配られると、俺達はそのチーム事に班になって分かれ、キャンプ等で使われる屋外の調理場に移動するとカレーを作り始めた。

 

 と、ここで問題が生じる。


 俺は普段から料理などするタイプではなかったのだが、何時も自分が装っている"ですわキャラ"のせいで料理が得意であると周りに思われてしまったのだ。


 周りからの"料理も勿論プロ並みなんでしょ?"的な羨望の眼差しを一身に受けて焦る俺。


 だがそれも、カレールーの裏に書いてあった用量を寸分の狂いもなくきっちりと守る事によって事なきを得ることが出来た。


 本当に企業努力に感謝だ。


 途中、水が足らないのではないかと思ったりはしたが、自分の感覚なんかよりも企業様の示してくれた作り方を信じたのが今回の勝利の要因だと言えよう。


 そうして、班の皆からも概ね好評だったカレーを食べ終わった現在。


 「そう言えば、騎士を見てないな」


 食後にほっと一息つきながら呟く俺。


 思い返すとレクリエーション開始の時に見たきりだな。


 と、そんなふうに思っていると、丁度近くを桐原先生が通る。


 「あ、桐原先生、ナイ、では無く、淀川先生はどうしたんですの?姿が見られないようですが?」


 「···そうだな」


 桐原先生は何故か言葉に詰まりながら、俺の全身を値踏みするように見る。


 「まあ、お前ならいいだろう。淀川なら医務室だ。さっきのレクリエーションの時に怪我をしてな。丁度いい、お前の班のカレーはまだ残っているだろ、夕食に届けてやってくれ」

 

 「ま、まあ、いいですが、怪我って大丈夫なんですの?」


 「ああ、怪我自体は大した事ない、ほんの擦り傷だ」 


 「自体は···」


 俺は桐原先生の言葉に若干引っ掛かりを感じながらも、それを承諾した。





 「失礼しますわ」


 手製のカレーを持って騎士が居ると言われた医務室の前までやって来た俺はノックした後、扉を開けた。


 すると、そこには足に包帯を巻いた騎士と黒服に身を包んだ女性2人の姿があり、護衛と思しきその2人は扉が開く音と共に俺の方をギロッと睨みつける。


 「あ、あの夕食にカレーを届けに来ましたわ」


 苦笑いを浮かべながら、恐る恐る医務室に入ろうとする俺。


 だが。


 「そこで止まれ!」


 護衛の1人がそう声を荒らげると、足早に俺の元へと近づいてくる。


 そして、何かの機械をカレーの上にかざしてそこからスキャンする様に光を照射させる。


 「よし、毒は入っていないな。ご苦労だった」


 とそう言って、やや乱暴に俺の手からカレーを取る。


 「なっ!?」


 うわ、何か感じわる!


 「あの私、淀川先生に少し相談したい事があるのですが···」


 「なんだ?そこで言え」

  

 「いやあの、部外者の方にあまり聞かれたくない内容でして···」


 「ならば日を改めろ」


 「いや、かなり緊急を要する事なんで···」


 お互いに引くこと無く、俺と護衛の女性はしばらくの間、睨み合う。


 すると。


 「ああ大丈夫です。彼女の神具は日本刀ですし、今回の件とは全くの無関係だと思います。それに俺も一応は九條学園の教師です。生徒の相談には出来る限り乗ってあげる義務があります」


 と騎士が口を開く。


 騎士のその言葉により、俺は勝ち誇った様なドヤ顔で護衛の女性を見る。


 そして、カレーを取り返すと、部屋の中の騎士の元へと向かった。


 「15分だ。分かったな!」


 ドアの近くの護衛の女性はそう言うと、部下と思わしき、もう1人の女性を呼び、部屋から退出した。


 「はあ、サンキュー」


 俺は口調をいつも通りに戻しながら、机の上にカレーを置くと自分も適当な椅子を持ってきて座った。


 「ほら、俺の手作りだぞ。味わって食え」


 「では、頂こう」


 騎士は俺に促されるまま、早速、カレーを口に運ぶ。


 「うん、うまい」


 「お前、どんどん素直になるな」

 

 俺はそう言って笑いながら、カレーを食べる騎士を眺める。


 「ああ!?違ぇわ。これはついでだった」


 俺がここに来たのはレクリエーションの時に何が起こったのか聞くためだった。


 俺はコホンと咳払いを1つすると本題に入る。


 「レクリエーションの時、何かあったみたいだけど、どうしたんだ?」


 「···」


 「どうしたんだよ。言えって俺とお前の仲だろ」


 「···はあ、まあいいか」


 騎士は少しだけ躊躇した様子だったが、観念して口を開く。


 「あれは龍型の訓練機でお前を出し抜いて、喜んでいた時だった」


 「いや、レクリエーションに私情持ち込まないでね」


 「こほん、まあそこはいいだろ。···でだ、丁度その時に、森の中から数十発のレーザーが俺に向かって飛んで来たんだ。···まあ護衛の方のおかげで直接被弾する事は無かったが、レーザーを避けた時に擦り傷をおってしまって今に至るという訳さ」


 「···それは流れ弾って事は無いのか?」


 「いや、あれは正確に俺を狙っていたと思う。偶然とは考えにくいだろう」


 「···となると考えられるのは、この森に騎士の命を狙う部外者が侵入しているか、それとも···」


 「ああ、生徒の中に犯人がいるかだな。とにかく、この事は生徒達には一旦秘密にするという事になっている。お前も言うんじゃないぞ」


 「ああ、分かった」

 

 とそうして、騎士から事情を聞き出した俺は、残された10分ほどの時間をカレーに使われている肉が良い肉である事など、日常会話に費やし、時間になると不機嫌そうな護衛の2人に一礼して医務室を後にした。

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