騎士教諭殺し 5
それから少しの休憩を挟み、夕暮れ時になった所で俺達は再び合宿所の玄関の前に集められた。
そして桐原先生からレクリエーションの説明を受けた。
その内容を簡単にまとめるとこんな感じだ。
まず戦力的なバランスを考えた上で生徒達をいくつかのチームに分ける。
そして、誰とチームなのか知らない状態で参加者の1年生全員に袋を手渡す。
その中には幼稚園のお遊戯会で使われるようなお面の付いた帽子のようなものが入っている。
そして、それぞれ森の中へとバラバラに潜伏し、全員が森に入って5分後に参加者は袋の中の帽子を装着し、レクリエーション開始。(5分間の間は戦闘禁止)
そのお面は食材を模したキャラクターが描かれていて、帽子の色はチームカラーを表している。(同じチームで同じ食材は無い)
後はとにかく他のチームの人を倒し、お面を奪う。
そして、レクリエーション終了後にチームでお面を合計し、同じ食材のお面を2つ、または種類の違うお面4つでその食材を手に入れることが出来る。(4つの場合はその内のどれか)
レクリエーションは大体1時間。薄暗い状態で30分、暗くなってから30分行われる。
また騎士が管理している訓練用の機械を初めとするボーナスキャラ的なものも存在するらしく、それはジョーカーの役割のものや高級食材のお面を所持しているらしい。
と、まあ説明はざっとこんな感じだ。
そして現在、木の上の少し太めの枝に座って身を潜めていた俺は支給された地図とGPSが着いた時計の振動によってレクリエーションの開始を知らされる。
「よし、じゃあ早速」
言われていた通り、俺は紙袋の中からお面の着いた帽子を取り出す。
「色は赤、食材は···これは肉か?」
などと独り言を呟きながら、俺はそれを頭に被った。
そして、辺りを一周見渡す。
現在はまだ薄暗い程度であり、お面の種類や帽子の色を判別する事は可能であったが、もう少しして日が完全に暮れたらそれも困難になってしまうだろう。
攻略法としては前半で何とか仲間を見つけて多勢に無勢で押し勝つか、上手く潜伏してスキをつくとかだろう。
つまり、どちらにせよ状況把握能力こそがこのレクリエーションの肝ということになる。
「ふ、ふふ」
だとしたらそれは俺の得意分野だ。
「神具展開、百騎一閃、出ろ斬像」
俺は早速10体ほど斬像を生み出すとそれらを四方八方に放ち、試行錯誤しながら大体円状になる様にそれらを配置する。
斬像達と俺は視界のみ共有することが出来ため、これは所謂、監視カメラ的な役割を果すという訳だ。
「後は4体くらいでいいかな」
基盤が整ったところで俺は更に4体の斬像を召喚すると、偵察としてそれぞれ別の方向に派遣する。
この4体の斬像は釣り針だ。敵に先に捕捉されて倒されてもいいし、逆に倒せたら御の字。
とにかく目的としては仲間を見つける事と敵の位置を把握する事なのだ。
「ふう」
と、一仕事終えた俺は木の幹にもたれ掛かり、一息つく。
そうして、斬像を放ってから数分が経過する。
「···北の方に行った奴がやられたか。···青の人参だったな···よし」
俺は今度は3体の斬像を出現させると、次はできるだけ慎重に斬像が倒された方向へと放つ。
すると直ぐに、周りに気を配って移動していら青の人参ちゃんを発見する事に成功する。
慎重に行動させた事が功を奏して、向こうはこっちの存在に気が付いていない様子で、手に持ったダガー型の神具を常に構えながらゆっくりと移動していた。
悪いけど、人参は頂くぜ。
俺は3体の斬像に回り込む様に指示を出す。
そして、ポジションに着くとその内の1体が刀を人参ちゃんの足元に向かって投げる。
が、流石と言うべきか向こうも、刀が地面に着く前にその存在を察知して、後方に大きくバックステップしてそれを避ける。
しかし。
続けざまに2体目の斬像がバックステップでよろけた人参ちゃんに斬り掛かった。
カァンン!!
と、ダガーと日本刀が強くぶつかり合う音が森に響き渡る。
そしてその後、数回お互いの武器をぶつけ合う。
「ちっ」
と先程、自身の足元に向かって投げられた刀に再び斬像が生じ初め、更に奥の木の上にもう1体同じものがいる事を横目で確認し人参ちゃんは舌を打ち鳴らす。
「烈空刃!」
そして高速で回転し、自身の周りに一瞬だけ竜巻を生じさせ、戦っている斬像を吹き飛ばすと彼女はそのまま逃亡を試みる。
···がしかし、それは俺の作戦通り。
逃げた先は俺が陣取っている巣の方向だった。
俺は人参ちゃんが逃げてくる辺りに配置していた斬像を1箇所に集めて、迎え撃つ準備を整える。
そして、挟み撃ちする事によって人参のお面をゲットすることに成功した。




