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騎士教諭殺し 4

 「ほらほら、踏み込みが甘いよ。どうしたの?」


 訓練が始まり数時間が経った夕方頃、合宿所周りの森の開けたスペースにて俺と遼は九條学園生徒会長である三廻部(みくるべ)桜と模擬戦を行っていた。


 思えば、この組み合わせは神具能力テストにもあったな。


 あの時からあまり時間は経っていないが、それでも色々と経験したおかげでそこそこの成長はした筈だ、筈なのだが。


 俺と遼が2人掛りで攻撃を仕掛けるが、会長はそれら全てをヒラリと受け流し、手に持った杖型の神具、転ばぬ先の聖杖(ゴッド·ノウズ)でそれぞれに1発づつカウンターを決めてくる。


 数時間の基礎訓練の後で疲労はあるが、それは向こうも同じ事。


 俺と遼は会長の攻撃を何とか神具で受け止めるも、その衝撃で後方に数m程、吹き飛ばされる。


 「ぐっ」


 「ちっ」


 俺達は何とか上手く着地を決めるが、よろしくない現状に思わず声を漏らす。


 今回は会長の能力が未来を見る能力であることは予め分かっている筈、なのにこの体たらくだ。


 「ちょっと君達、前に戦った時はもっと良かった気がするけど?」


 「···」

 「···」


 全てを見通している様に言う会長の言葉に、遼と俺はお互いを横目で見る。

  

 大喧嘩という訳では無いが、何となく気まずい今の関係、原因は間違いなくこれだ。


 「はあ、君達さ。ちょっとだけ頭冷やそうか〜···ってね!!」


 そう言い微笑むと、会長は一瞬で加速し、気が付くと遼の目の前に居た。


 そして横から薙ぎ払うように杖を振り、遼の横腹に叩きつけると、そのまま俺に向けて投げ飛ばす。


 「マジか」


 俺の目に映るのは、こちら側へと飛ばされてくる遼とその向こうで杖を俺の方に向け、その先端にエネルギーを貯めている会長の姿。


 「斬雨」


 俺は遼を受け止める準備をしつつ相手を牽制するため、上空に4本の刀を召喚する。


 だが。


 「残念」


 その刀達は召喚された瞬間に、会長の貯めていたエネルギーから枝分かれして放たれた細い4本のレーザーによって撃ち落とされてしまう。


 やはり、未来を読まれているか···。仕方ない今は遼を。


 と、視線を遼の方へと戻す俺。


 だが、そこにあったのは靴底であった。


 どうやら遼は投げ飛ばされている最中に態勢を立て直していたようだった。


 「ぐはっ」


 そして遼の靴が顔面にクリーンヒットし、そのまま後方へと倒れる俺。


 と、同時に俺が倒れたことにより遼もバランスを崩したのか、そのまま地面へと転げ落ちた音が聞こえた。


 



 「ん?大丈夫?」


 「ん、んん···」

 「痛···」  


 意識が飛びかけていた俺と遼だが、会長の声により、何とか意識を保つ事が出来き、後頭部を擦りながら起き上がる。


 「君達、喧嘩とかしてるのかもしれないけど、戦っている時はそんなの関係無しだよ。これが実戦だったら永遠の別れになってたかもしれないんだからね」


 真剣な声色で近づいて来た会長は座っている状態の俺達の前に立つ。


 「吉野宮さんはあの瞬間、久瑠美さんをただ無抵抗に自分に向かって吹き飛ばされてくる存在だと(あなど)っていたね。あの時久瑠美さんの意図に気づいて、しっかりと土台になってあげてれば反撃の一手になったかもしれないよ」


 「ぐっ···」


 確かに、何時もなら意識せず出来るであろう事なのに···。


 素直に反省する俺を見て、数回頷く会長は続けて遼の方に目を向ける。


 「ただ、久瑠美さんもしっかりと声やアイコンタクトで意思表示しないと、ましてや今は連携が乱れているんだからさ。そんな状況でのあの行動は味方に攻撃を仕掛けている様なものだよ」


 「ん、そうだね。ごめん」


 響いているのかは分からないが、遼も会長に対してぺこりと頭を下げる。


 「よし、オッケー!」


 先輩らしく俺と遼それぞれにアドバイスをし、会長は両手をパチンと打ち付ける。


 そして。


 「さ、では、今日の訓練はこれで終了だよ。おつかれー」


 「あっ、ありがとうございますわ」


 会長の言葉を受け、俺と遼は同時に立ち上がると頭を下げ、手合わせしてくれた会長に感謝を述べる。


 そしてその後、疲れから再びその場にぐったりと座り込む。


 「で、次は楽しい楽しいレクリエーションだよ」


 「レ、レクリエーション?」


 俺は首を傾げながら訪ねる。その問いに会長はニヤリと笑った。



 「ふふふ、そう、これも毎年恒例。みんな大好きレクリエーション。"カレー王は私だ!仁義なき食材争奪戦inナイトフォレスト!!"」



 手を上空に突き上げ、高らかに宣言する会長。


 「「···」」


 そして、会長の言っている意味が少しの間理解出来ずに沈黙する俺と遼。


 だが数秒して気が付く、気が付いてしまう。

 

 「って、名前からして実質訓練ですわ!!」


 訓練が終了したと喜んでいた俺の心の叫びは森の中を通り抜け、木霊となって反響した。

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