騎士教諭殺し 2
それから、俺と騎士はまだエントランス等にポツポツといる生徒達を掻い潜り、学生寮を後にする。
そして、周りに誰も居ないことを確認し変装を解いた騎士と共にそのままそこそこの広さがある学園の敷地内を校門に向かって歩く。
「護衛の人には連絡出来たか?」
「ああ、校門の所で待っていてくれるそうだ。ああ、因みに忘れ物を取りに行ったら仕事を思い出して片付けていたと言うことにしているから安心してくれ」
「はあ〜、まあそれはいいがしっかり謝っておけよ。なんなら一緒にゴメンなさいしてやろうか?」
「ふふ、いや遠慮しておく、それでは色々と嘘までついて生徒と密会をしていたと誤解されかねないからな」
「まあ、ある意味で誤解では無いけど」
俺はそう言い、苦笑いを浮べる。
「ああ、でもよ。明後日からの林間学校+強化合宿はどうするんだ?お前は来れないのか?」
そう、予定では、明後日の月曜日から3日間、1年生全員と1部の上級生で毎年恒例らしい合宿が行われる事になっているのだ。
電波もろくに届かない山奥での生活だ、もしかしたらその間に南雲大星達から命を狙われてしまうかもしれない。
「いや、練習メニューの指導や訓練用の機械の操作とかもあるからな、護衛付きだとは思うがそれは行くつもりだよ。···それにこっちも活動家の奴らにやられてばかりでは無いさ」
騎士は少しだけ得意げにカバンからケースを取り出す。
「ん?これは返納機とかか?」
「ああ、これはアンアップルを使用している者にも効果があると期待される新型だ」
そう言い騎士はケースから中身を出すこと無く、それをこちら側に向かって僅かに突き出す。
「ほお、すげぇじゃん。···ん?でも何か曖昧な言い方だったな?」
「ああそれか、実は奴らの使っている薬に対して効果を試した事は無いんだ。ただ返納機の効果を無効化する薬と言うのは禁止されてはいたが前から製法は存在したからな。だから奴らのアンアップルがそれと同じ製法で作られているなら効果は期待できる」
「ふーん」
「因みにこれもお前達には効果がなかった。本当にお前らは一体どんな存在なんだか···」
「ふふふ、まあ、神も美少女と見間違え、思わず神具を授けてしまう程の奇跡の存在って感じか?」
「ふっ、言ってろ」
と、そんな感じに今後の事などを話しながら数分程歩き、校門の近くまでたどり着くと、その位置からでも分かる感じにライトが着いた状態の高そうな車が校門前の道路に停車してあった。
「じゃあ、俺はこの辺で、またな」
「おう、···あー、その、あ、ありがとな送ってくれて、あとこの前の事とかも色々と···」
「···」
少し照れ臭そうに言う騎士を見た俺は半分煽る様にニマリと笑う。
そして。
「おいおい、おいおいおい、なんだよ急に、お前もすっかり可愛くなっちまってよー」
と、騎士の言葉にテンションが上がり、俺は彼の背中を何度も軽めに叩く。
それに対して騎士は後悔したと言わんばかりに若干顔を赤くするが、咳払いを1つして直ぐに立て直す。
「こほん、ああいや、客観的に考えてみても俺はお前に何個も恩があると言える。それもこの前に至ってはお前がいなかったら殺されていた可能性すらあった。流石にきっちりと礼ぐらいは言わなくてはと思った。それだけだ」
「へー」
「いやだからそのウザイ顔を止めろ!」
と、そんな感じで騎士を煽り散らかし、共に笑いあって、一段落が付くと、不意に2人ともが同時に無言になる瞬間が訪れる。
すると、それが俺達にとって、そろそろお開きである事を示す合図となった。
「では、また」
「おう、またな」
騎士と俺は最後にそう言葉を交わし、それぞれ別の方向へと歩いった。




