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神具能力テスト+α 5

 そうして昼食の時間が過ぎ、俺達のクラスである1年2組と1年1組の生徒達は、周りに観客席があるコロッセオのような形状の訓練施設に居た。


 そして、そこに集められた60人ほど少女達はこれから何が行われるのか伝えられていないため憶測で隣の人と何が行われるかについて雑談をかわしていた。


 すると。



 「おい私語はやめろ!」


 

 とそのざわざわとした空間は桐原先生の鶴の一声により、一瞬で静まる。


 そして。


 「これからお前達には殺し合いをしてもらう」


 続いて語られた先生の言葉を受けて生徒達の頭にはクエスチョンマークが浮かんだ。


 「これはボケでしょうか?」


 「そんなことを言う様な人には見えないけど」


 もちろん俺と遼もその例外ではなく、困惑し先生の様子を分析する。


 「これは冗談などでは無いぞ。これからやるのは神具での正真正銘の決闘だ」

 

 俺達の声が聞こえたのか否かは分からないが、桐原先生は偶然にも俺達に返事する様な言葉を返してくる。


 そして先程とは違う意味でざわざわとしている生徒達を知り目に桐原先生は1人の女性を紹介し始める。


 「えー、この方はこの九條学園の現学園長である九條(みやこ)先生だ。···では学園長よろしくお願いします」


 桐原先生の紹介により40代後半ほどに見える優しそうな女性が1歩前に出る。


 「皆さんこんにちわ。私が学園長の九條都です。ええ〜、大半の人にとって今日がこの学園に入学して初めての神具を用いた授業になるかと思います。桐原先生の言葉で緊張してしまった人もいるかも知れませんがどうぞ肩の力を抜いて聞いてください。皆さんにこれから学んで頂くのは戦闘技術ではありません。また神具能力テストと銘打ってはいますが順位付けも今日の本題ではないです。ここで皆さんに学んで貰うのは、マガツモノと戦う御子にとって1番大切な事、···いえ、違いますね。それだけではなく人として1番大切な事です」


 そして学園長は少し溜めた後、再び口を開く。



 「そう、それは命の大切さです」



 桐原先生と真逆の事をいう学園長にそこにいた生徒は皆、混乱し始めてしまう。


 しかし、それに構わず学園長は続きを述べていく。


 「昔よりはマシになりましたが、未だにマガツモノとの戦闘は死と隣り合わせです。そんな中でこの九條学園は10年連続戦死者0人という記録を誇り、国から表彰などもされました。がしかし、それは自慢出来る事などでは無いと私たち教師一同は考えています。なぜならそれは当たり前の事なのですから」

  

 そう言うと学園長は神具を召喚する為に右手を前に出すと、そこに光が集まり始める。


 「神具展開、グレイス・オブ・ガーデン」


 学園長がそう呟くと光が手の中で球体状に収束していき、水晶玉が姿を現す。

 

 さらに学園長はそれを上空に掲げる。


 すると掲げられた水晶玉が強い光を放ち、訓練施設が一瞬にして古代のコロッセオの様に変化してしまう。


 「私の神具、グレイス・オブ・ガーデンにより作り替えられたこの空間では剣で斬られようが銃で撃たれようが決して死にませんし傷も負いません。しかし本物ほどでは無いですが痛みは感じます。···実演してみましょう」 


 そう言うと学園長は桐原先生の方に手を伸ばし、桐原先生から小さいナイフを受け取ると自分の腕を斬りつける。


 しかし斬られた手からは血が吹きでる事は無く、その傷口は中に皮膚の内側の肉がある代わりに光で満たされていた。   


 そしてその傷は一瞬のうちに塞がると直ぐに元通りに戻った。


 その様子を見ていた生徒達からは驚きの声が漏れるが、学園長はすぐにそれを(なだ)め続きを語り始める。


 「皆さんにはこれからこの空間で戦っていただきリアルな死のイメージを感じ取ってもらい、死という物への恐怖を再確認して頂きます。そして実際にマガツモノとの戦闘になった際には今日の経験を活かし最善の行動を取れるようにしましょう」


 「学園長ありがとうございます。···ではお前ら、まずは違う組の奴と2人1組になれ、余ったやつは私が相手してやる、ほら早くしろ!」


 手を叩きながら()かす桐原先生の言葉を受け、生徒達は先生とは組みたくないと慌てて相手を探し始める。


 「俺達は組めないみたいだな」


 「そうだな」


 俺達はクールを装いながらも内心は見知らぬ人と2人組を作らねばならない状況に滅茶苦茶焦る。


 そんな時。


 「吉野宮暁良さん!!私と組みませんこと?」


 「え···ええ!!いいですわ。あ、貴方は?」


 急に話しかけられた俺は驚きつつも願ってもない誘いに飛びつき、その後、疑問を口にする。


 「ふふ、私は姉小路絵梨花(えりか)と申しますわ。まさか吉野宮さん、姉小路家を知らないわけではありませんわよね?」


 見るからにお嬢様といった見た目の金髪縦ロールの少女が俺に向かって自信満々に語る。


 「勿論存じてます。お目にかかれて光栄ですわ」


 俺は作り笑顔を浮かべながら、相手を傷つけないように気を使い当たり前に知っている体を装う。


 「まあ当然ですわね。···ですが私は貴女の事を知りませんでしたわ。その口調に醸し出す雰囲気それに立ち居振る舞い、貴方が只者では無いのはまず間違い無いにも関わらず。貴方一体何者ですの?」


 姉小路さんは俺の方を指差して、僅かながら疑惑の目を向けてくる。


 彼女の様子を見た感じ、彼女は俺の演じている育ちのいい和風のお嬢様系の振る舞いを見て上流階級の家の出である事を確信したのだろう。


 そして、そういった付き合いが多かった彼女は、俺の存在を知らなかった事を疑問に思い調べたのかもしれない。


 当然、俺はそういった高貴な存在では無い上に女性でも無いので調べても出てくるはずがない。それが現在の彼女の不信感に繋がっているのだろう。


 なるほど、ならばこう言い訳するしかあるまい。


 「知らないのは当然ですわ。なぜなら私は比較的普通の家庭に生まれましたから、しかし別に貴女の知るような良いお家に生まれずとも、家族の教育でこういった振る舞いが身についてもおかしくないと思いますわ」


 実際の俺は現在海外に居る母親になかなか大雑把に育ってられたためこれは大嘘なのなだが、もっともらしい言葉を言い連ねて姉小路さんへと突き返す。


 これで納得するだろうと俺は思った、しかし。


 「いいえダメです、それは偽物にほかなりませんわ。それにこの学園で最も高貴な存在は私1人で十分!2人も必要ありませんわ。そして何よりさっきから私と同じ言葉遣いでややこしいんですわ!」


 姉小路さんはそんな無茶なことを言い出す。


 と言うか本題はそこだったのだろう。だが確かにそれは俺もややこしいとは思ってた。


 「そう言われましても困りますわ。一体どうして欲しいのです?」


 「ふふふ、何のために私が貴方に"組もう"と声を掛けたと思いますの?」


 「·····なるほど、そういう事ですわね」


 俺は姉小路さんの意図を悟り、勝負に乗る気で言葉を返す。


 「この戦いに負けた方が今の口調を変えるという事でいかがですか?」


 「なるほど、どちらが真のデスワーに相応しいか真剣勝負で決着をつけるということですわね。ええ、望むところですわ」


 「で、デスワー?···こ、こほん、ま、まあいいですわ。そういうことになりますわね」


 姉小路さんは奇怪な造語に少し驚きながらも乗ってくる。


 そして、そんな俺と姉小路さんの様子を見た周りの生徒達も俺達に注目し始め、何故かデモンストレーションを兼ねて最初に戦うという流れが出来上がってしまう。


 「ああ、あとどうせ口調を変えるなら、相手の指定したものに変えるという方が面白いと思うのですがいかがです?」


 悪ふざけでそんな事を提案してみる俺。だが。


 「え、ええ、ま、まあいいですわ。でもいいんですの?私が勝った際には物凄く恥ずかしいものにしてしまいますが」


 「ええ、いいですわ」


 話に乗ってきたことに少し驚きながらも、俺は笑顔でそれを了承し、続けて独り言にて、


 「俺が勝ったら語尾を"〜で(そうろう)ち〇ぽ"とかにしてやる」


 と不敵な笑みを浮かべながら誰にも聞こえないくらいの声量で呟く。

 

 「いや、それお前へのダメージの方がデカいからやめとけ」


 だが隣に居た遼には俺の独り言がしっかりと聞こえていたようで苦笑いで忠告してくる。


 しかし、俺はそんな遼に返事を返す前に、皆には導かれるままにコロッセオの中心へ移動させられ、姉小路さんと向かい合う形となる。


 「吉野宮に姉小路か、まあいいだろう。ではお前ら手本を見せてやれ」


 俺と姉小路さんの実力が手本にするに値すると判断した桐原先生が俺達の間に立つ。


 「まずは神具を展開しろ」


 続いて桐原先生は俺達にそう告げ、俺と姉小路さんは同時に頷く。


 「神具展開、百騎一閃」


 「神具展開、デュマボルト」

 

 そして俺は非常にシンプルな形の日本刀を姉小路さんは雷を纏った長細い両刃の剣を召喚する。


 「では初め!!」

 

 桐原先生の声がコロッセオに響き渡り、模擬戦が開始された。

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