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朝倉祭2 11

 それから、状況の説明などを一通り終わらせた暁良達が治療なども終えて開放された時には辺りはもうすでに暗くなっていた。


 それに加え、力を使いすぎた事も重なり、暁良は部屋へ着くなり、ベットに倒れ込み泥のように眠ってしまった。


 そうして時間が経ち、深夜の2時。


 「ん、んん···」


 風呂にも入らず、制服のままで寝ていた暁良はやや目覚め悪そうに唸り、体を起こす。


 それから状況を理解するために数秒間、辺りを見渡し、ようやく現状を把握する。


 そして、同時に隣のベットに遼がいないことに気がつく。


 「ふむ···」


 と、よく耳を澄ますとベランダの方から何やら話し声が聞こえて来ている事に気がつく。


 「アイツ誰かと電話してるのか?」


 暁良は少し寝癖が着いた頭を掻きながらゆっくりとベランダの方へと向かう。


 そして、ベランダへの窓を開けて自身も外へと出る。


 「おう、起きたのか暁良」


 「ああ、誰かと電話してたのか?」


 「まあそうだな。丁度終わったところ」


 「そうか···」


 「···ああ、そうそう、そう言えばお前の母さんからメール来てたぞ、ほら」


 思い出した様にそう言った遼は自身の携帯の画面を暁良に向けて見せる。


 そこに暁良の母である希咲から、突然海外に戻らなくては行けなくなったのですぐの飛行機で帰るという旨の内容が綴られていた。


 「マジかよ。いやまあ見舞いに行くとかいう内容じゃなくて良かったけどさ」


 結果オーライではあるが、若干の冷た目な対応に思わず苦笑いを浮べてしまう暁良。


 それからため息をもらし、少しの間、共に外の景色を眺める。


 すると突然、遼が口を開く。


 「ところでお前、38代目に土下座した時、録音してただろ。本当に(したた)かな奴だよな」


 「ああ、あれか。まあ、多分38代目様にもバレてたけどな。ていうか寧ろ、ああ言うのはバレてる事に意味があるとも言えるからいいんだけどさ。でもおかげで切り抜けられただろ」


 「···あの時はすまなかったな」


 「いやいい。···それに38代目様がギリギリの所まで神具を使わなかったのもなんか怪しかったしな、お前のあの行動は何となく正解な気がするよ。多分俺でもそうしたし」


 暁良は今日の38代目の行動を思い出しながら呟く。


 「俺は38代目様は今日が返納日なんだなって思ってたんだけど結局それは間違いだったわけだろ。それに、もし38代目様が最初から神具を使ってれば織笠さん達も一瞬で蹴散られたと思うし、そうすれば同時にベッキー達の殺戮行為も阻止出来たと思うんだよ。何で彼女はそこまで頑なに神具を使わなかったんだろうな?」


 「···使っている所を意地でも見られたくなかったんじゃね?だから倉持さん···だっけ?彼女を殺そうとしたとか?」


 「いや、まさか···もしそうなら俺らも殺られちゃうけど?」


 「···あの時の38代目の目、怖かったよな」


 「···ああ、まあ確かに」


 暁良が38代目に意見を述べた時の彼女の表情と言葉を思い出し、苦笑いを浮べる2人。


 「こほん、いやいや流石にそれは無いだろ。て言うかこの話は怖いので止めよう。···あー、ああ、そうだ。倉持さん!倉持さんは一体どうなっちまうだろうな?」


 恐ろしい事を考えるのは止め、続いて倉持の事についての話題に話を移す暁良。


 「んー、まあ、当たり前だがタダではすまないだろうな。彼女と彼女が操っていた人達は誰一人殺していないとしても、手を組んでいたベッキー達は多くの人を殺したからな」


 「そうか···」


 「ああ」


 「···はあ、何か悲しいな。確か動機は任務で死んだ母親の仇討ちだったそうじゃねーか。何年もの間その恨みを果たす為に生きてきたって事を考えると何ともな。ましてやそれが逆恨みって事だから余計に来るものがあるな」


 「···」


 「ん?どうした?」


 「···いやなんでも。てか、そんな事お前が気にする事じゃないだろ。所詮、相手はただの犯罪者だ」


 「そうか···」


 それから数分間、暁良と遼はお互いに何も喋らず、一等星と二等星だけが輝く空を眺める。



 「はあ、シャワー浴びて寝よ」



 考えてもいい答えなどは得られない、そう考えた暁良は不意にそう言い、ベランダから部屋の中へと入る。


 「お前は寝ないの?」


 「ああ、俺はもうちょっとここに居る」


 「ふっ、このロマンチストめ」


 小さく笑いながらそう言い残した暁良は、部屋の中へと入っていき、着替えを用意してバスルームへと消えていった。


 「はあ···」


 暁良が完全に居なくなったのを確認すると、遼はため息をもらす。


 そして再び携帯を取り出すと、発信履歴を開き電話をかけ直す。


 それから数秒の呼び出し音の末、電話が取られた。




 「ああ久瑠美です。さっきは、いきなり切ってすみません。···ええ、そうですね。アイツです。···はい、ええ、では今日の所は···はい、また何かあったら連絡します。···はい、ではお休みなさい。···"香月さん"」

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