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朝倉祭2 10

 「一体何の事を言っているのでしょうか?私は彼女を殺そうとなどしていませんよ?」


 神具を収納しつつ、ほんの僅かに微笑みながら38代目が言う。

 

 「いや、しかし···」


 と暁良もそれに反論しようと切り出す。


 しかし。


 不意に目に入ってきた38代目の非常に冷ややかな表情により暁良の言葉は遮られ、同時に遼、騎士を含めた3人は恐怖にも似た感情に襲われる。


 そして同時に現状がかなり悪い状況である事を再認識する。


 そう、相手は御子のトップ、38代目朝倉御子なのである。


 その存在は現在日本において、総理大臣と並び評されるほどの影響力を持つ人物であり、38代目の先程の言葉が明らかな嘘だと分かってはいても、そんな事実など簡単に覆されてしまう位の力はゆうに持っていた。


 「···くっ」


 何も打開策が浮かばず、遼は苦虫を噛み潰したような表情を浮べる。


 あの時の38代目の様子は少しおかしかったし、倉持さんを殺させなかった選択は間違っていなかったと自負はある。

 

 だがこの状況下手を打てば、38代目を攻撃した遼も何らかの罪に問われてしまう可能性は十分にある。


 刻々と時間が過ぎていく中で、遼は暁良の方を見る。


 すると暁良は一瞬不敵な笑みを浮べ、ポケットに手を突っ込む。


 そして。



 「申し訳ありませんでした!!」


 

 それから数秒の沈黙を破り、暁良が声を上げる。


 そして、騎士の背中から降りると遼の所まで負傷した足を引き摺りながら歩き、遼の頭を手で抑えて共に土下座をする。


 「つっ!」


 と、それにより暁良の足に更に負荷がかかり、その痛みで声が漏れてしまう。


 しかし、その方が謝罪の誠意が増す為、暁良にとってそれは寧ろ好都合だった。


 そして、暁良はその痛みに顔を歪ませつつ、謝罪の言葉を述べ始める。


 「···こ、この度はこちら側の早とちりにより、38代目様に銃を向けてしまった事、誠に申し訳御座いませんでした!!」


 と、まずは何よりも先に深く謝罪する。


 そして、それから38代目に何か話す機会を与えず、言葉を捲し立てていく。


 「···しかし、それも全て38代目様を人殺しにしたくないという一心の事だったのです。······また私達が他のどの御子達よりも早くこの場に駆け付けているという事から、どうか私達が38代目様の事をどれ程までに、敬愛しているかをご理解して頂ければ幸いに存じます」


 饒舌に次から次へと言葉を紡いでいく暁良。


 そして、遼もここは暁良の作戦に乗り、土下座の姿勢から微動だにしない。


 そうして数秒が経つ。


 結果として、この状況を制したのは暁良であった。


 先手必勝で言葉を捲し立て、自分の主張を全て言い切ってからはひたすら土下座。


 ここまでされても許さないとなれば、今度は38代目の品位を疑う案件になってしまう。


 「···(おもて)を上げなさい」


 "切り抜けた!"と暁良は心の中でニヤリと笑いながら、尚も2人は頭を下げた状態を維持し、数秒後にゆっくりと顔を上げる。


 「貴女達の迅速な働きに感謝します。これからもより一層、励みなさい」


 「「はは、ありがとうごさいます」」


 暁良と遼は再び、深く頭を下げる。


 そして、それから数分が経つ頃には、他の御子達や警察なども次々に駆けつけ、操られていた御子達の治療や活動家に殺された者達の遺体の検証などが進められた。


 そうして一連の事件は、様々な謎と多くの被害を残しつつも、首謀者である倉持さんの逮捕をもって一応の収束を迎えた。

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