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朝倉祭2 7

 「もう追いかけっこは終わりですか?」


 数十秒が経ち、俺の真横に現れた横森さんは俺のこめかみの辺りに銃口を向けつつ言う。


 「ああ、もう限界だな。···ところでさ、冥土の土産に1つ聞いてもいいか?」


 「······まあいいでしょう」


 俺は全てを諦めたように空を見上げ、俺のその様子を見た、横森さんは少し考えた後に了承する。


 「どうも···。でさ、これは単純に疑問で、これが引っかかっていたら死ぬに死ねないんだけど、どうやって織笠さんを唆したんだ?どんな手順でどんな言葉を彼女にかければ、こんな馬鹿な事をする様に仕向けることが出来るんだ?来世の参考までに教えてくれよ」


 俺はニヤリと笑い横森さんを見上げる。


 「なるほど、ふふ、それはですね。······それは···です···ね」


 得意気な表情から徐々に神妙な面持ちに変わる横森さん。


 「勿体ぶらないで教えて下さいよ。ささ」


 「···」



 それから更に十数秒ほどの沈黙。



 「はいはい、もう大丈夫だ」


 「···何?」


 「もう大丈夫なんだよ。だってアンタ、今、どうやって織笠さんを唆したのか覚えていないだろ?だがしかし、唆したという記憶は確かにある。そんな感じで困惑してるんだよな?」


 「なっ···」


 俺の言葉に横森さんは明らかに動揺した様子を見せる。


 どうやら、俺の推理は当たっている様だ。


 そう確信し、俺は更に言葉を続ける。


 「アンタは操られているんだよ。第2の洗脳の能力を持ったものにね」

  

 「!?」


 「ああ、ここで言う第1の洗脳の能力を持った者とは織笠さんの事だな。そして彼女もまた第2の洗脳の能力者によって操られていた。被害者の1人だと思われる」


 「···」


 「2つの洗脳の違いは織笠さんの方は人に蟲を寄生させて、その体と精神の自由を奪い、簡単な命令を実行するだけの人形の様にして操るというものだ。それに対して第2の能力者の洗脳能力は一見しただけでは操られているとは分からない、そいつは精神に干渉し、その者の思想や記憶を書き換える事で人を操っている。織笠さんやアンタがあまりにも馬鹿な考え方でこの様な行動を疑いもなく実行したのは、その考え方が絶対に正しいという風に思想を書き換えられていたからだ」


 と俺はそう言って得意気に笑う。


 まあ、細かい所は予想でしかないがな、相手を翻弄出来れば何でもいい。


 「だが恐らく記憶や思想の書き換えは手作業で行わなくてはならないのだろうな。だから洗脳者本人に説明出来ない事は洗脳された方も説明出来ない。今回で言うなら横森さんが織笠さんを唆したという記憶はでっち上げる事は出来るがどうやって唆したのかというのは洗脳者本人が説明出来ない為、書き換える事も出来ない。つまりあやふやにするしかなかったんだな。まあ最も横森さんが実は洗脳能力を持っていたという事にすればその部分は辻褄が合ったんだけど、それは洗脳能力者を洗脳するというこの事件の真相に相手を近づけさせる事になりかねないから控えたんだろう」


 「な、いや、だけど···」


 横森さんは明らかに動揺した様子を見せる、恐らく、論理的によく考えた時の答えと、洗脳によりねじ曲げられた直感による答えの違いに戸惑っているのだろう。

 

 「恐らく第2の洗脳能力者は1人に対してしかその能力を発揮できない。最初に真犯人は織笠さんを操り、織笠さんの持つ洗脳能力により、多くの御子を間接的に操った。そして、俺と横森さんが織笠さんと彼女に操られた御子を倒した所でそいつは洗脳対象を横森さんに移した。そうして今に至るって感じかな」


 と俺はここまで話し終えた所で、横森さんの方を再び確認する。


 俺の計画通り彼女は大いに動揺してくれていた。


 チャンスはここだ。


 俺は自身の対面の木々の葉達の間に隠していた刀に意識を集中して、それを自身の方向へと射出する。


 「ぐっ!」


 ガシャン!!とその刀は俺のこめかみに突きつけられていた横森さんのスナイパーライフルを破壊し、俺がもたれかかっていた木に突き刺さる。


 そして、俺はそれと同時に痛む足に力を込めて立ち上がり前方に向かって走って逃げる。


 「やってくれたわね!」


 横森さんはそう叫び、破壊されたスナイパーライフルを1度、しまい直ぐに再生したスナイパーライフルを召喚して逃げる俺に向ける。


 やはり話だけでは動揺は誘えても彼女の洗脳を解くまでは至らない。


 それにまだ神具を再生する体力は残っていたか···。


 「はあ···」


 やはり1人では厳しかった···。


 横森さんはそんなことを考えながら逃げる俺の背中に銃口を向けて、狙いを定め、発砲する。



 「ふふ、そう"1人では"···な」


 

 その瞬間、横森さんの方を見てニヤリと笑う俺。


 そして、俺の逃げ込もうとしていた対面の草むらから1人の人物が飛び出して俺の元まで来ると手に持った刀で横森さんの銃弾を斬り裂いた。


 「全く居て欲しい時に居て欲しい所に居やがるぜ、俺の騎士様はよー」


 斬像と同じ色の半透明の青いオーラを纏った騎士は数分前に示し合わせていたベストなタイミングで俺の前に現れる。


 「なっ、貴方は男のはず、なぜ神具を!?」


 「へへ、よく見ろよ。俺が貸してやってたんだ。斬像はもう出せないが、こうやって少し力を貸すくらいなら何とか出来る。ほら行け騎士!みねうちだぞ」


 俺は地面に倒れ込んだままの状態で横森さんの方を指差す。


 「ああ、分かっている!」


 「!!?」


 ドスッ!!と騎士は動揺しまくっている横森さんにみねうちを見事に命中させ、彼女はその場に倒れ込む。



 「はあはあ」

 「はあはあ」

 


 と、横森さんが倒れた後も数秒間、呼吸音だけが響く、緊張の時間が続く。


 そして。

  

 「あー、助かったー。サンキュー騎士」


 俺はそのまま地面に完全に倒れ込む。


 「ああ、大変だったみたいだな」

  

 「そうだな···」

 

 「···」


 「って、いや、終わりじゃねーわ!!38代目様が!!!」


 突然叫ぶ俺とそれに驚く騎士。


 「だ、だが、そんな身体では、それに38代目は今現在での最強の御子だぞ、例え不意打ちでも···」


 「うるせえ、早く背負え、相手は洗脳能力者なんだぞ!!何があるか分かんねぇだろ」


 ん?···あれ、それに確か·····。!!?。


 「それに今日、38代目様は返納日で神具が使えねぇんだ!!!早くしろ!!!!」


 俺は先程よりも大きな声で叫び、騎士を急かせ、俺を背負わせるとダッシュで38代目様達が逃げたと思われる方向へと向かわせた。

次から主人公がいないシーンなので少しの間、三人称視点に変わります。

あとコメント等お待ちしてますorz

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