朝倉祭2 5
「邪魔をしないでください!!」
「織笠さん!何故こんな事をするのですか!」
俺に向かって怒鳴りながら、自身の周りにいる結界を貼っている御子以外の御子達に俺を攻撃するように指示を出す織笠。
それに対して俺は次々に襲い来る3人の御子達と戦いつつ、織笠に問いかけた。
「38代目様になんの恨みがあるのですか!?」
「···」
「?」
「ふっ、ふふ」
俺の問いに織笠は少しの間黙った後、込み上げて来たように笑い出す。
「何が可笑しいんですの?」
俺は3人の御子を織笠の方向へと吹き飛ばした後、訊ねる。
すると織笠は片手を横に広げ、御子達に一旦止まるように指示を出す。
そして。
「いやいや、本当に可笑しくてですね」
と少しの間、くすくすと笑い続けた後、指で笑いから来る涙を拭い取り続きを話し始める。
「38代目に恨みなんて1mm足りともありませんよ?」
「は?」
織笠の言葉に俺は耳を疑い思わず聞き返す。
だが、それはどうやら俺の聞き間違えでは無いようであった。
「私が恨みがあるのはそこではありませんよ。···私がムカついてるのは二条院や姉小路みたいな奴ですよ。アイツらときたら前から私の事を散々見下した様な目で見てきやがって!私の能力の真の力も知らないくせによ!!···くそ、くそ、くそ!!!」
織笠は後半に連れボルテージを上げ、地面を蹴り、怒りをぶつける。
「はあ、はあ」
と、それから織笠は呼吸を整え、一旦落ち着きを取り戻すと、取り乱した事を恥た様子で続ける。
「コホン、ああー、だから私はただ証明したいんです。私が本気を出せば二条院や姉小路なんか足元にも及ばないくらいに強い御子で、普段はこの能力の性質的に普段は本気を出せきないだけだってね。···でもそれで二条院達程度の奴を倒しても誤差の範囲みたいに思われて私の力はちゃんと伝わらないでしょう?で、思ったんです、誰もが最強と認めている御子の頂点である朝倉御子を倒すことが出来れば、皆、私の強さを認めるしかない···ってね」
「なっ···」
俺は絶句する。
それが大規模な計画を立て、ベッキー達テロリストと手を組んでまでして実行に移したこの事件の真相。
···馬鹿すぎる。
あまりにも馬鹿だ。
がしかし、当の本人は至って真面目な様子であり、俺が絶句している事にしびれを切らしたのか口を開く。
「さあ、お喋りはこのくらいに。貴女も私の神具、"パラサイト"によって操り人形にして差し上げましょう。手駒が減らされたぶん貴女にはしっかり働いてもらわないと困りますからね」
織笠はそう言うと薄暗い丸い球体上の物が不規則に刀身の平たい部分に付いた剣を俺に向ける。
「考え直しなさい。今謝ればほんの少しは罪が軽くなるかもしれませんよ」
「いやですよ。私が38代目朝倉御子を殺して39代目となるんですから」
「って、は?なれるわけねーだろ!!···コホン、いや、どちらにせよ貴女の行く末は牢屋の中ですわよ。百騎一閃、十束ノ刃」
色々と馬鹿らしくなった俺は百騎一閃を10本重ねた状態である十束ノ刃状態の刀を出現させ、それを居合の状態で構える。
「割れなさい!パラサイト」
一方、織笠が自身の神具にエネルギーを込めると剣の刀身に着いていた球体が数個割れて、そこから液体と御子達を操っている正体であろう黒い管状の生物が数体姿を表し、刀身を這い回る。
「この剣で少しでも斬られた瞬間に蟲達が反応してその者の体内に侵入、身体と心の自由を奪って人間をまるでゾンビの様にかわってしまう」
得意げに言った織笠は余裕綽々と3人の御子に指示を出し、俺を攻撃させる。
だが。
「百騎一閃、二十一重」
その間、俺は百騎一閃に次々に刀を重ねていっていて、その数は20にまで達していた。
そして、御子達が俺に斬りかかろうとした瞬間。
その一瞬の間に俺は3人の御子に斬撃を放ちながら、彼女らの後方まで移動していて、斬撃を受けた少女達は時間差で倒れた。
「なっ···」
「···」
それから、ほんの少しの間、織笠と見つめあった状態になるが、突然彼女はハッとした様に今度は自身の後ろに立っていた神社の御子を盾にすると俺との間に持ってきて剣をその首元にあてがう。
「こ、この子の命が欲しかったら···」
「ああ、俺アニメとか見てても人質取られて不利になるみたいなシーン大っ嫌いなんだわ」
そう織笠の言葉を遮るように言った俺は迷わずに敵に向かって行って、少し動揺していた織笠を峰打ちで斬り捨てた。
「ふう···」
織笠が倒れるとほぼ同時に神社の御子も倒れ、この神社を覆った結界も天井の方からゆっくりと消えていく。
「この様子だとあと少し掛かるか。まあ元凶は倒したしいいか」
やっと終わった。力もほぼ使い切っちまった。
今日の夜は何時ものように打ち上げだな。
と俺はそんな楽しい予定を考えつつ、再び空を見上げる。
その時。
バァン!バァン!!
一瞬で2発の銃声。身体に伝わる2回の衝撃。
俺はなんだかよく分からないまま、銃声が聞こえた真後ろを振り返る。
「よ、横森さん···」
「···」
そこにはニヤリとした笑みを浮かべ、俺の方にスナイパーライフルを向けた横森さんの姿があった。
状況を掴めないまま、刀を構えようとするが出来ない。
とここまで来て、俺はようやく先程の銃撃により両腕を撃たれ、手に全く力が入らず思い通りに動かなくなっている事が分かった。
「横森さん···なんで」
俺は両膝を着きながら、彼女の周りを見渡す。
すると、そこには気絶している状態の操られていた御子達と常に彼女を守っていたシールドが地面に転がっているだけであった。
「ああ、38代目様には先に逃げてもらいましたよ」
「···」
「···いやー、折角、織笠さんを焚き付けて38代目様を襲わせて、私がそれを守った英雄って事になろうとしたのに良いとこ持っていこうとしちゃうんですもん。やめてくださいよ吉野宮さん」
「あ、貴女が全て仕組んだのですか?」
「はい、実はそうなんです。私だけ操られてもいないのに結界から排除されていなかったの、おかしいと思いませんでしたか?」
そう言うと横森さんは再びニヤリと笑って見せた。




