朝倉祭2 3
「大丈夫ですの?」
「う···うう」
俺の問いかけに倉持さんは唸りながらゆっくりと目を開ける。
「あなたは吉野宮···さん?」
「ええそうですわ。···一体何があったのですか?···って聞いても分かりませんわよね」
「ええ···。あっ、ああ、いや、でも···」
「ん?何かありますの?」
「はい、確か織笠さんが···」
織笠?それは確か倉持さんをいじめいた奴の名前だったな。
「織笠さんがどうしましたの?彼女がこの事件の主犯という事何ですか?」
「いや、そうかは分かりませんが、貴女にその···クッキーを」
倉持さんはモジモジとしながら申し訳なさそうに言う。
「···成程、あのクッキーの中にさっきの虫を忍ばせていたんですわね」
「ええ多分、先程の虫を相手の体内に寄生させてゾンビの様にし人の身体を操るのが織笠さんの神具能力でしたから···」
「···なるほど」
つまり、いじめていた倉持さんに無理やり言うことを聞かせて、虫入りのクッキーを配り、その後倉持さんもその虫で操り人形にしたって訳か。
更に、倉持さんを使ったクッキー作戦では無理そうな神社の巫女さんなどに対しては、恐らくだがベッキー達が力を貸したのだろう。
「ふふ···」
目的こそ未だに分からないが、それ以外は結構見えてきた。
「よし、では織笠さんを探しましょう。それが手っ取り早いですわ。倉持さんは···動けそうですか?良ければ手伝って欲しいのですが」
「ええ、お手伝いします」
どうやら俺が投げ飛ばした時の怪我は大した事ないようで倉持さんは笑顔で俺が差し伸べた手を掴み返してくる。
それから俺は握った手を引き、倉持さんを立ち上がらせると先程、爆発音の様な音が響いた林の方へと向かった。
それから間もなくして、急ぎ足で林を進んでいた俺達は少し離れた位置に数名の人影を確認する。
それは遠目に見て2人の人物を大勢の人間が追いかけているように見えた。
「ちっ!」
俺はスピードを上げながら木の枝へと飛び移り、さら木から木へと渡りながら追いかけていく。
そうしてようやく前方の者達の姿をしっかりと確認する事が出来きた。
追っているのが織笠と神社の巫女さんを初めとする操られた神具使い達であり、追われているのが横森さんと38代目、朝倉御子様だ。
「やばいっすな、こりゃ」
横森さんは空中に浮く盾とスナイパーライフルを駆使しながら38代目様を守りながら逃げていたが、多勢に無勢で徐々に追い詰められて行っている様であった。
また、守られている38代目様は今日の儀式用の動きにくそうな服装で逃げていて、返納日なのか理由は分からないが神具は発動していない様に見えた。
その様子から俺はこの計画が38代目様の命を狙ったものであると思い至る。
そして同時に、本当に今日が38代目様の返納日なのだとするなら、この計画がかなり練られたものだと感じた。
「やりなさい!」
と俺がそんなことを考えていると、織笠が操っている御子達に指示を出す。
すると少女達はスピードを上げて横森さん達に襲い掛かり始める。
「38代目様!私の後ろに」
身体を翻して操られている御子達と向き合う形になった横森さんはスナイパーライフルを構える。
「そこ!!」
そして銃弾を発射して、襲い掛かって来る半分を撃ち落とし、残りの半分を盾とスナイパーライフルの銃身を使って受け取る。
「くっ、何なんですか。貴女達は···」
「···」
「みんな操られているという事ですか」
操られた御子達の攻撃から38代目様を守りながら呟く横森さん。
「数で押し潰しなさい!」
「くっ···」
織笠は自身の周りの御子達にも命令を出し、横森さんに追撃を仕掛ける。
だが。
「そうはさせるかよ!斬雨!!」
と、走り出した御子達の前に俺の放った数本の刀が降り注ぎ、それにより行く手を塞がれ、少女達は立ち止まる。
「!!?貴女は確か吉野宮···さん···」
「ええ、貴女達の相手は私がしますわ」
驚いた様子の織笠に対し、ニヤリと笑いかけた俺は、先程、放った刀にそれぞれ斬像を生じさせ臨戦態勢をとった。




